ティラーソン米国務長官は12日、ワシントンで講演した際に、質疑に応じる中で
「北朝鮮が望むなら『いつでも、前提条件なしで』対話を始める用意がある、核やミサイルの開発断念の用意をして席についた場合にのみ、対話に応じるというのは非現実的だ」と述べましたが、安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官は翌13日の講演で、
「北朝鮮への圧力を最大まで強め、核開発を放棄させるという方針に何ら変わりはない」、「北朝鮮が弾道ミサイルの発射などをやめ、非核化の意思を示さなければ、対話に応じることはない」と強調しました。
しかしそれは対話というよりも、端から北朝鮮に全面降伏を強いるもので、ティラーソン氏が述べたように「非現実的」な対応であり、腕力(暴力)で事態を解決しようとするものです。
しかもアメリカの要求は「アメリカは核やミサイルは持っても良いが北朝鮮は許されない」という理不尽なもの(たとえ国連決議の外套を着ていても同じ)なので、これでは米朝会談が始まることはなく「対話」は全くの絵空事となります。
安倍氏は政権の座につくと拉致問題の解決には北朝鮮に圧力を掛けるしかないとばかりに、定期便船・万景峰号の寄稿を禁止し、北朝鮮への送金を禁止し、各種の物品を禁輸にしましたが、肝心の拉致問題は一歩も前進しませんでした。
こうした経験から安倍首相は「北朝鮮が圧力に屈しない国」であることを十分に承知している筈ですが、何故かいまも盛んに「対話のための対話では意味がない」と述べ、北朝鮮が悲鳴を上げ折れてくるまで圧力を強化していくことを主張しています。
これでは海外から、「安倍首相は戦争をしたがっている」と見られても仕方がありません。
しんぶん赤旗とNHKの3つのニュースを紹介します。
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北朝鮮と「前提条件なしで対話」 米国務長官表明 “大統領も認識共有”
しんぶん赤旗 2017年12月14日
ティラーソン米国務長官は12日、核・弾道ミサイルの開発を続ける北朝鮮が望むなら「いつでも、前提条件なしで、対話を始める用意がある」と表明しました。ワシントンで講演し、質疑に応じる中で答えました。
トランプ政権はこれまで対話の前提として、核実験やミサイル発射を停止することで北朝鮮が先に非核化に向けた意思を示す必要があるとの立場をとってきており、無条件での対話を呼びかける政策転換を意図した発言とみられます。
ティラーソン長官は、北朝鮮がこれまで核・ミサイル開発に莫大(ばくだい)な投資をしてきており、「開発断念の用意をして席についた場合にのみ、対話に応じるというのは非現実的だ」と指摘。トランプ大統領もこの点で「非常に現実的だ」とし、認識を共有していると主張しました。
ただ、トランプ氏自身は、対話を模索するティラーソン氏を「時間の無駄」と公然と批判するなど、繰り返し矛盾する姿勢も示してきています。
ティラーソン氏は、「少なくとも(交渉の)席につき、互いに顔を合わすことはできるのではないか」「とにかく多くの問題をテーブルに乗せよう」とも述べ、非核化が交渉の入り口になる必要はないとの考えを示唆。一方、「静かな期間が必要だ」とも述べ、新たな実験が行われれば、生産的な議論は困難になると強調しました。
米高官 北朝鮮への対応方針に変わりないと強調
NHK NEWS WEB 2017年12月14日
アメリカのトランプ政権で安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官は、北朝鮮の核・ミサイル開発問題でティラーソン国務長官が前提条件なしで対話に入ることも可能だという考えを示したことについて、北朝鮮への圧力を最大まで強め、核開発を放棄させるという方針に何ら変わりはないと強調しました。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮について、ティラーソン長官は講演で、北朝鮮の核保有は認めないと改めて強調するとともに、「最初の会談は、前提条件なしで行う用意がある」とも述べ、北朝鮮がまず非核化の意思を示さなければ対話に応じないとする従来の方針を転換したという受け止めも出ています。
これについて、マクマスター大統領補佐官は13日にワシントン市内で行った講演の場で、「ティラーソン長官が述べたのは結局のところ前提条件などないということだ。われわれは、北朝鮮への圧力を和らげる考えはないし、彼らの要求を受け入れ、対価を与えるつもりもない」と述べました。
そして、「交渉は単なる話し合いであってはならない。交渉すること自体が目的ではない」と述べ、北朝鮮への圧力を最大まで強め、核開発を放棄させるというトランプ政権の方針に何ら変わりはないと強調しました。
またホワイトハウスの当局者はNHKの取材に対し、「朝鮮半島の非核化という目的に向けての対話の可能性の扉は開かれている。しかし、北朝鮮はまず挑発行為を自制し非核化に向けた真剣な行動をとるべきだ」として、北朝鮮が弾道ミサイルの発射などをやめ、非核化の意思を示さなければ、対話に応じることはないと説明しています。
国務省報道官「政策は変わらず」と釈明
アメリカ国務省のナウアート報道官の13日の記者会見では、前日のティラーソン長官の発言が北朝鮮政策の変更ではないかとの質問が相次ぎました。
ナウアート報道官は「ティラーソン国務長官は、新たな政策を作ろうとしたわけではない。政策はこれまでとなんら変わらない」と繰り返し、釈明に追われました。また、ナウアート報道官は「国務省とホワイトハウスは一枚岩だ」とも述べ、政権内で連携や意思疎通が不十分だという指摘の打ち消しに努めました。
そして、北朝鮮との対話については、「ティラーソン長官も話しているように、対話に入るためには静かな時期が必要だ」として、北朝鮮が核実験や弾道ミサイルの発射を一定の期間、自制することが必要だとの考えを示しましたが、一定の期間がどれくらいなのかについては具体的な言及を避けました。
国連事務総長「必要あれば北朝鮮訪問の用意ある」
NHK NEWS WEB 2017年12月14日
日本を訪れている国連のグテーレス事務総長が記者会見を行い、緊張が続く北朝鮮情勢をめぐって、事態の打開に向けすべての関係国が速やかに取り組むよう呼びかけるとともに、仲介の必要があればみずから北朝鮮を訪れる用意がある考えを示しました。
国連のグテーレス事務総長は、14日、都内の日本記者クラブで会見し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮をめぐって、「朝鮮半島の非核化を進めていく。重要なのはすべての当事者が急を要する状況だと理解して臨むことだ」と述べ、事態の打開に向けてすべての関係国が速やかに取り組むよう呼びかけました。
(後 略)
首相 圧力強化に理解求める 韓国野党代表らに
NHK NEWS WEB 2017年12月14日
安倍総理大臣は、韓国の最大野党の代表らと総理大臣官邸で会談し、核や弾道ミサイルの開発を続ける北朝鮮への対応について、「対話のための対話では意味がない」と述べ、圧力を強化していくことに理解と協力を求めました。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮をめぐり、アメリカでは、ティラーソン国務長官が前提条件なしで北朝鮮と対話に入ることも可能だという考えを示す一方、安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官は北朝鮮への圧力を最大まで強め核開発を放棄させるという方針に何ら変わりはないとしています。
こうした中、安倍総理大臣は14日午後、総理大臣官邸で、日本を訪れている韓国の最大野党「自由韓国党」のホン・ジュンピョ(洪準杓)代表と会談した際、「北朝鮮は核・ミサイルの開発を執念を持って続けている。対話のための対話では意味がない」と述べました。
そのうえで安倍総理大臣は「国連安保理の決議を世界が重視し、日韓が協力して圧力を高めていくことが重要だ」と述べ、北朝鮮に核や弾道ミサイルの開発を放棄させるために圧力を強化していくことに理解と協力を求めました。