22日に掲載した五十嵐仁氏の記事※で、安倍首相が9条改憲を狙う真の理由は、「後顧の憂いなく自衛隊員を戦場=死地に送り出せるようにするためである」と述べましたが、孫崎享氏も全く同じ指摘をしていますので紹介します。
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孫崎享 日本外交と政治の正体
安倍政権の改憲で自衛隊は米国のために死ぬことになる
孫崎享 日刊ゲンダイ 2017年12月22日
安倍首相は憲法9条の改正に前向きだ。その理由は「7割の憲法学者が、自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきではないか」と説明している。
この発言の根拠は、2015年7月に朝日新聞が憲法学者を対象に行ったアンケート調査結果のようだ。調査では同時に122人の回答者のうち、104人が集団的自衛権の行使を容認する安保法案を「憲法違反」とも回答していた。
安倍首相の特徴は、自分にとって都合の良い論理は利用し、逆に不利な論理は無視する。おそらく憲法学者のアンケート結果についても同じだ。
「7割の憲法学者が、自衛隊に憲法違反の疑いを持っている」というせりふは、それなりに説得力があるようにみえる。しかし、注意しなければならないのは、安倍政権が憲法に明記しようとしている自衛隊は「現行の自衛隊」ではない。米国の戦略のために「死者を出す可能性がある自衛隊」である。
多くの人は、改憲後の自衛隊の役割は「外国からの武力攻撃を受けた時」に戦う武装組織と思っているが、そうではない。
自民党の改憲草案は「国際社会の平和と安全を確保する」とある。つまり、米軍の戦略のために戦い、戦死者を出すのをいとわない自衛隊となるのだ。
元内閣法制局長官の阪田雅裕氏が月刊誌「世界」(岩波書店)の18年1月号で「憲法改正の論点」を書いていた。
〈今の自衛隊の機能を書き込むのに次の案がある〉
〈(憲法九条の二項が残されるとして)前二項は、国が外国からの武力攻撃をうけた時に、これを排除するための必要最小限の武力の行使を妨げるものではなく、そのために必要な戦力を前項の戦力とみなしてはならない〉
〈今となっては政府与党がこのような第三項の追加を受け入れることはないであろう〉
安倍首相は今後も改憲のために嘘と詭弁を使うだろう。国民は注視する必要がある。