12月は日本が国連安保理の議長国を務めますが、15日(日本時間16日未明)安保理(閣僚会合)で異常な情景が展開されました。
そこには北朝鮮の国連大使が出席していて、ティラーソン米国務長官が「北朝鮮は、核実験とミサイルの開発を直ちに止めるべきである」と非難し、それが対話開始の条件になるとしました。
彼は3日前にワシントンで講演し「北朝鮮が望むなら『いつでも、前提条件なしで』対話を始める用意がある、核やミサイルの開発断念の用意をして席についた場合にのみ、対話に応じるというのは非現実的だ」と述べたばかりでした。
耳を疑うばかりの変わり身で、このこと自体が大きな問題でしたが、もう一つ大いに違和感を持つ展開がありました。
それは議長を務めていた河野外相が、米国務長官と同じ口調で北朝鮮を非難したことでした。
会議の場では議長は中立の立場を守り、少しでも会議が実のあるものになるようにしなくてはならないと我々は学校で教えられましたが、15日のそれはまるで北朝鮮を吊し上げるための会議でした。
北朝鮮は、いま北朝鮮に加えられている制裁を解除することが前提だと、当然に思える主張をしていました。
元外交官の天木直人氏は、河野氏がこうした会合を設定したのは議長国としての地位の乱用であり外交上の誤りだとし、こんな日本が安保理常任理事国入りを目指そうとしても賛同を得られる筈がない、と批判しました。
また国連安保理で、エルサレムの地位を一方的に変更する決定や行動は無効であるとするエジプト作成の決議案が16日に提出されたことについて、「(窮地を逃れるには)日本は棄権するしかないが、たとえ棄権しても世界からは批判され、今度こそ日本はテロの標的になる」と述べ、議長国でありながら、こんな決議案が提出される前に関係国と協議してうまく処理できなかったのかと、その無能ぶりを批判しました。
安倍政権は外交面でも幼稚であるということです。
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国連安保理議長の地位を乱用する日本の外交失格
天木直人のブログ 2017-12-16
およそ議長に期待される役割は、その場の議論を調整して会議をまとめる方向に持って行くものと相場が決まっている。
ましてや国益がぶつかる国際会議ではなおさらだ。
その好例が国連安保理会議の議長職である。
常任・非常任をとわず、一カ月ごとに順番で公平に理事国が議長職を持ちまわりすることになっているはそのためだ。
そして、日本はこの12月の一カ月間、最後の議長役を務める番が来た。
ところがきのう15日のニューヨーク発共同がこう書いている。
「日本はこの2年間、安保理の決定プロセスに関与してきたが、メンバー国を外れる来年以降は(安保理会議への関与が)難しくなる。そこで最後の12月に議長国として議題にイニシアチブを取る事が出来る環境を利用して、11日には人権状況をめぐる会合、15日に閣僚会合と、立て続けに北朝鮮会合を盛り込んだ」と。
そしてきょう12月16日の毎日新聞もニューヨーク発國枝すみれ記者の記事としてこう書いている。
「2年間の安保理非常任理事国の任期が12月で切れる日本は、今月が月替わりの議長国である権限を活用し、北朝鮮問題の閣僚会合を主導した。河野外相は会合で、加盟国が北朝鮮に最大限の圧力をかける必要性を強調するものとみられる」と。
利用(共同)といい、活用(毎日)といい、その呼び方は聞こえはいいが、その実は、議長国としての地位の乱用だ。
ましてや、話し合による平和の実現を目指すべき安保理事会の議長国が、誰よりも、追従すべき米国よりも、北朝鮮への圧力に躍起になっている。
これは二重の意味で外交失格だ。
こんな日本が安保理常任理事国入りを目指そうとしているのである。
賛同を得られるはずがない(了)
日本に踏み絵を迫ったエジプトのエルサレム首都撤回決議案
天木直人のブログ 2017-12-18
ニューヨーク発時事が教えてくれた。
国連安保理で16日、エルサレムの地位を一方的に変更する決定や行動は無効であるとして、エジプト作成の決議案が提出されたというのだ。
しかも18日にも採決されるという。
これは日本にとって衝撃的な動きだ。
日本は12月いっぱいは安保理メンバーだ。
この決議案に対する賛否を明らかにしなければいけない。
米国が拒否権を発動することは明らかだ。
しかし、米国以外の主要国はすべてトランプ大統領の決定に反対の立場を表明している。
立場を明らかにしていないのは日本だけだ。
どうしても日本の賛否に世界の注目が向かう。
もし日本が米国に同調して賛成したら、対米従属の極みとして世界の笑いものになる。
もし日本が反対したら、米国だけが反対することになり、米国は世界から孤立し、トランプ外交はますます追い込まれる。
だから日本は棄権するのだろう。
しかし、たとえ棄権しても、日本は世界から批判され、今度こそ日本はテロの標的になる。
それにしても、日本は12月いっぱいまで国連安保理の議長国のはずだ。
なぜみずからを苦しめることになるこのような決議案をエジプトが提出することを防ぎ止められなかったのだろう。
こんな決議案が提出される前に、議長国として事前に関係国と協議して、うまく処理することは可能だったはずだ。
日本は議長国としての権限すら、うまく使えなかったということだ。
それとも提出を阻止しようとしたがうまく行かなかったとでもいうのだろうか・
どっちにころんでも、安倍中東外交の無能さ、ここに極まれりである(了)