2017年12月8日金曜日

スパコンのベンチャー企業社長の逮捕はどこまで影響が及ぶのか

 齊藤元章氏は、当ブログ 10月29日 スパコン日本一をベンチャー企業が達成
⇒ https://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2017/10/blog-post_58.html  でも紹介しましたが、彼が経営ンちゃー企業は斬新な液冷式のスパコン「僥倖」を開発し、今年のスパコン性能コンテストで世界4位を獲得し、1KWH当たりの処理スピードでは世界1位を達成しました。
 その斎藤社長が5日、NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構助成金4億3000万円を詐取した疑いで逮捕されました。
 逮捕されたのは2012年度の助成金についてのものですが、同社(ぺジーコンピューティング)はこれまでNEDOから8年間で35億円余りの助成金を得ているので、東京地検特捜部は、ほかにも不正な受給がないか調べています。今回の捜査には国税局も入っているので今後脱税問題も浮上するかもしれません。

 齊藤氏は経済財政諮問会議の「2030年展望と改革タスクフォース」委員でもあり国家戦略にも関与しています。彼は5つの事業を手がけていて、これまでに税金から受給した総額は100億円かそれ以上とも噂されています。官邸の関与を疑う声も上がっているということです。
 官邸といえば、安倍・菅の両氏と懇意にしている元TBS記者山口敬之氏が生活の拠点としている永田町のザ・キャピトルホテル東急の賃貸フロアの一室(平均賃料月額130万円〉は、この齊藤氏が提供しているといわれています。
 二人は山口氏がTBSにいるころからの知り合いで、山口氏が去年5月に会社を辞める時に、斎藤氏は自社の顧問のようなポジションを用意しました。政界に顔が利く山口氏の力を利用する意図があったものと思われます。
 思わぬところから官邸との絡みが見えてきたわけですが、今後どんな風に捜査が進展するのか注目されます。

 追記)山口氏は、伊藤詩織さんに対する準強姦容疑で民事裁判を起こされており、その第
   1回目の口頭弁論が先日行われましたが、山口氏側は本人も代理人(弁護士)も出席
   せず、代理人は連絡も取れない状況だということです。これは異常なことで最早弁解
   の余地もないということを被告自らが認めたものとしか考えられません。
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逮捕されたスパコン社長と自民党大物政治家の「疑惑の接点」
あの記者の名前も浮上
伊藤 博敏 現代ビジネス 2017年12月7日
山口敬之氏との関係
「天才であるのは間違いない。でも、ホラ吹きであるのも確か。結局、どちらが優先するかということで、私は天才を認めたが、検察は『ホラ吹き』であるのを許さなかったということでしょう」
東京地検特捜部は、5日、「スーパーコンピューター(スパコン)の小型化、省エネ化の旗手」といわれたペジーコンピューティング(東京都大田区)の斎藤元章容疑者(49)が、助成金を不正に受け取ったとして逮捕された。斎藤容疑者と長時間にわたって対談したことのある人工知能(AI)の研究者は、事件をこう結論づけた。

ベンチャー界隈の事情に詳しい人ほど、「斎藤逮捕」に同情的だ。斎藤容疑者は、国立研究開発法人「新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)」の2012年度の研究開発費補助金の対象とされた事業で、14年2月、費用を水増しした虚偽報告書を提出、約4億3000万円をだまし取ったという。
水増し請求は間違いなかろう。申請書類だけに証拠も残っている。だが、研究成果はウソではない。ペジー社が開発した省電力スパコンの「暁光」は、毎秒約1京9000兆回(京は兆の1万倍)の計算速度を記録し、11月に発表されたスパコンランキングで計算速度部門第4位だったという。
他にも省エネ性能の「グリーン500」でも首位となり、日経地球環境技術賞を受賞するなど期待の星で、マスコミへの露出が多く最も知られたスパコン開発者だった。12月11日放送のNHK人気番組「プロフェッショナル仕事の流儀」で登場を予定しており、NHKは急遽、差し替えたという。

一方で、斎藤容疑者が著作や対談で語るスパコンの夢は、荒唐無稽と受け取られることが多かった。例えば、次のような衝撃的な未来である。
<人は生きるために働く必要のない「不労」の社会を手に入れます。やがて人体のメカニズムが革新的に解明されることで、人類は「不死」も手にすることになるでしょう

「不老不死」は、錬金術師や魔術師の世界。ついていくのは難しいが、新潟大医学部を卒業した医師で、渡米したシリコンバレーで数々の企業を立ち上げ、帰国後は、「2番ではダメ、日本を1番にする」と、スパコン業界をリードする斎藤容疑者には、彼を信じるコアなファンがいて、支える業界関係者が少なからず存在した。
しかし、「壮大な夢」に取り組むのにもおカネが要る。「2年後に世界初の次世代型スパコンを完成させたい。そのためには300億円が必要だ」と、訴えていた。
その“夢”を手助けしていたのが、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏だった。

「政界とのつながり」はでてくるのか
2人の関係は、思いがけないところから表面化する。山口氏を準強姦容疑でジャーナリストの伊藤詩織さんが訴えていた事件。『週刊新潮』が今年5月、2週連続でこの問題を報じたが、その過程で、都内高級ホテルの家賃130万円の部屋をオフィスにする山口氏の優雅な生活が明らかとなる。
追撃した新潮記事では、部屋は斎藤容疑者が借りているもので、「山口さんはTBSにいる頃から斎藤社長と知り合いで、去年(16年)5月に会社を辞める時に、顧問のようなポジションを用意されたと聞いています」という業界関係者の言葉を紹介している。

この準強姦事件について、私は詩織さんのインタビューを行ったうえ、本サイトで「『親・安倍』記者への告発が、単なる準強姦の問題では終わらない理由」(17年6月8日配信)と題して記事にした。「単なる事件ではない」というのは、「安倍首相に最も近いジャーナリスト」である山口氏に忖度した捜査が行われた形跡があったからだ。
この時、私は、山口氏に詳細な質問メールを送り、回答をもらった。結局、「容疑者でも被疑者でもない」として事件を否定。また、ペジー社との関係や顧問就任の事実関係、同社の家賃負担などについては、「私の個人情報に関わる質問に答えるつもりはありません」とのことだった。
だが、今回、摘発された事件によって、「個人情報」と、切り離すことはできなくなった。

捜査が続けば
山口氏の政界人脈の深さは、よく知られたところである。特に、安倍晋三首相、麻生太郎財務相といった政権中枢に太いパイプを持っていた

また、山口氏と斎藤氏は、志を同じくする財団法人でもつながっていた。渋谷区恵比寿にある一般財団法人「日本シンギュラリティ財団」である。シンギュラリティとは、人工知能が人間の限界点を越してしまう現象で、2045年にはそこに到達するといわれているが、この財団はシンギュラリティにいち早く到達することを目的に、各種事業を行うことになっている。
16年3月、代表理事である山口氏の自宅に設立され、斎藤氏も理事に就いた。山口氏がTBSを退社するのは同年5月だから、在職中に絆が生まれ、その後のフリージャーナリストとしての生活に備えていたことになる。

ペジー社と斎藤氏への捜査は、告発をもとにした税務調査から始まっており、その過程で“余禄”のように不正受給が発覚、「放置はできない」となったのだろう。違法を見つければ処理するのが捜査当局の習性である。

しかし、検察も忖度する役所であるのは、森友学園事件で証明された。おそらく、「斎藤逮捕」は、その不正受給が山口氏に波及するかどうかを現場に確認のうえ、「波及しない」ということで捜査着手したのだろう。12月5日の逮捕は、20日の勾留期限を考えれば、年末に起訴して年内終結の可能性が高い

ただ、“本丸”の脱税捜査はまた別である。「天才」は、夢を大きく広げたが、そこに資金を投入するだけでなく、別用途に使っていないか。その際、手っ取り早い資金獲得の方法として「政界工作」はなかったか。
そこには、同志の山口氏が絡む可能性がある。そこで、山口氏には、「個人の問題を超えたので」と、斎藤氏との関係に絞って質問書を送ったが、今回、返事はなかった。

だが、捜査は終結したわけではない。シンギュラリティの早期実現を目指した2人は、政界にどんな働きかけを行い、それは実ったのか実らなかったのか。解明はこれからだ。