遺伝子組み換え作物の種子の世界シェア90%等の実績を持つモンサント社は、ベトナム戦争でアメリカが大量に散布し、その後がんの発生や奇形児出産等の大悲劇をもたらした「枯葉剤」の製造元です。
モンサント社は1年生農産品の種子の販売で有名ですが、除草剤「ラウンドアップ」とその除草剤に耐性をもつ遺伝子組み換え種苗も開発し、除草剤とセットで販売しています。
遺伝子組換え作物を拒否している団体Natural Societyは、モンサント社の遺伝子組換え作物やラウンドアップなどが人間の健康と環境の両方を脅かすとし、モンサント社を2011年最悪の企業に認定しています。
除草剤「ラウンドアップ」の使用ががん発症につながったとして、利用者がモンサント社を提訴した件で、米カリフォルニア州の裁判所は10日、モンサントに2億8900万ドル(約320億円)の支払いを命じる評決を下しました。
ラウンドアップの発がん性を巡る司法判断が示されたのは今回が初めてです。
ラウンドアップを巡る訴訟は数千件に上るので、この判決は今後の判例となります(末尾のBloombergの記事参照)
これに関連して植草氏は、安倍政権がハゲタカ資本に言われるがままに、彼らにとって邪魔な「主要農作物種子法(種子法)」を突如廃止したことを厳しく批判しています。
安倍政権の、米国資本の利益最優先、国民の健康などは二の次、という姿勢は一貫しています。
植草一秀氏のブログ「発がん性で320億円賠償責任のラウンドアップ」を紹介します。
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発がん性で320億円賠償責任のラウンドアップ
植草一秀の「知られざる真実」 2018年8月17日
日本のメディアが大きく報道しない重大な情報がある。
8月10日、米国サンフランシスコ州の裁判所が、アグリビジネス(農業関連企業)の最大手企業の一つである米モンサント社が訴えられた裁判で、モンサント社に2億8900万ドル(約320億円)の支払いを命じる判断を示した。
訴えは、モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」の使用ががん発症につながったとして損害賠償を請求したものである。
訴えたのは、同州にある学校の管理をしていたドウェイン・ジョンソン氏で、校庭の除草と整備のために、モンサント社が開発した除草剤ラウンドアップを数年にわたって使用し、それが原因でがんの一種である悪性リンパ腫を発症したと訴えていた。
裁判で陪審員は、ラウンドアップの主成分である「グリホサート」に発がん性が考えられるにもかかわらず、モンサントはその危険を十分に伝えていなかったとして、全員一致で原告の訴えを認めた。
本ブログ、メルマガの読者はモンサント社もラウンドアップもグリホサートもよくご存じのことだと思うが、日本全体ではあまり知られていないと考えられる。
モンサント社は1901年に米国ミズーリ州で創業された企業で、1960-1970年代にベトナム戦争で米国軍が使用した枯葉剤を製造した企業である。
枯葉剤がどのような悲劇を生み出したかはよく知られている事実である。
そのモンサント社が開発・製造しているのが除草剤「ラウンドアップ」である。
そのモンサント社自体については、本年6月にドイツのバイエル社による買収・吸収が完了して、独立企業としての社名が消滅した。
モンサント社は世界最大級のアグリビジネス企業として、その名がとどろいているが、有害性が懸念される除草剤、除草剤に耐性を持つ遺伝子組み換え種子製造販売の代表的企業である。
安倍内閣は、主要農作物種子法(種子法)を突如廃止した。
政府は「種子法は戦後食糧増産のために、コメ、麦、大豆等主要な穀物の種子を種子法で安定して供給できるように制定された法律で、コメも消費が落ち込んで生産が過剰になった現在ではその役割は終えた」と説明したが、真っ赤なウソである。
世界の種子市場の7割弱、世界の農薬市場の8割弱が、モンサント、ダウ・デュポン、シンジェンタなどの遺伝子組み換え多国籍企業6社によって支配されている。
ハゲタカ資本にとって、日本の種子法は邪魔な存在である。
国が管理して安価で優れた種子を安定供給したのでは、民間の種子ビジネスが成り立たない。そこで、安倍内閣に命令して種子法を廃止させたのだ。
そのなかでも、モンサントは強力な除草剤とこれに耐性を持つ遺伝子組み換え種子のセット販売ビジネスを世界規模で拡大させている代表企業である。
しかし、遺伝子組み換え食物と強力な除草剤の安全性に強い疑問が持たれているのだ。
モンサントはこれまでラウンドアップの安全性をアピールしてきたが、これに対して世界中の専門家から疑義が示されている。
今回の裁判所決定は、こうした疑義に対する重要な判断の一つになる。
WHOの外部研究機関IARC(国際ガン研究機関)は2015年にグリホサートを2Aの発ガン性物質に分類した。
2Aとは「実験動物での発ガン性確認」、「人間ではデータ不十分」というもので、ヒトに対しては「おそらく発ガン性がある」という分類。
また、米国の国立ガン研究所、国立環境健康科学研究所、環境保護庁、国立職業安全健康研究所の共同プロジェクトであるAgricultural Health Study(AHS)は、ラウンドアップと急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)との関連性に関する研究を発表した。
政府や地方自治体が禁止する国も増えている。
また、店頭販売を行わないことを決めた流通業者が海外では数多く存在する。
しかし、日本ではホームセンターでも、商店街のドラッグストアでも、100円ショップでも販売されている。
背景には安倍内閣の姿勢がある。厚生労働省は2017年12月にラウンドアップの主成分であるグリホサートについて最大400倍の大幅緩和を認める通達を出している。
さらに、ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤の主成分2・4-Dの大幅規制緩和の検討を始めている。
海外の重大ニュースを大きく報道しない日本のマスメディアが誰の何の力で動かされているのかは明白である。
(以下は有料ブログのため非公開)
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米モンサントに2.89億ドルの賠償命令、除草剤の発がん性問題で評決
Bloomberg YAHOO ニュース 2018年8月13日
種子開発最大手、米モンサントの除草剤「ラウンドアップ」の使用ががん発症につながったとして、利用者が同社を提訴した件で、米カリフォルニア州の裁判所は10日、モンサントに2億8900万ドル(約320億円)の支払いを命じる評決を下した。ラウンドアップの発がん性を巡る司法判断が示されたのは今回が初めて。
モンサントを相手取り訴えを起こしたのは、学校でグラウンドの管理人を務めていたリー・ジョンソン氏。サンフランシスコの州裁判所で陪審員は3日間にわたり評議を行った。ラウンドアップを巡る訴訟は数千件に上り、今回の評決が今後の判例となる。
ジョンソン氏は損害賠償として4億1200万ドルを求めていた。陪審員はモンサントがラウンドアップのリスク喚起を怠ったなどとして、ジョンソンさんへの損害賠償として3900万ドル、同社に対する懲罰的賠償として2億5000万ドルを支払うよう裁定した。モンサントは上訴する意向を明らかにしている。