2018年8月29日水曜日

謀略情報を流しながら侵略を続ける米国

 櫻井ジャーナルが、シリアにおける米国を中心とする謀略活動を概括する記事を出しました。同ブログが、その都度根拠となる情報を示しながら紹介してきたものを集大成したものです。
 いまや西側の情報(網)はCIAに牛耳られているので、全てCIAの主張に沿ったニュースしか流れませんが、事実は大いに異なっています。
 
映画春秋」(1946)掲載の伊丹万作氏の『戦争責任者の問題』中の言葉:
「『騙されていた』と言って平気でいられる国民なら、恐らく今後も何度でも騙されるだろう
を引いて、同記事は、「日本を含む西側の有力メディアの愚劣さは大戦中の新聞と大差はなく、今も騙されていたと言って平気でいられる人が少なくない」と指摘しています
 
 飽くことなくそれを繰り返し実行している米国に比べれば、まだしもいくらかはマシなのでしょうが。
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見え見えの嘘を口実にして侵略を続ける米英仏政府
櫻井ジャーナル 2018年8月28日
(1)
 アメリカはアル・カイダ系ジハード傭兵のタハリール・アル・シャーム(アル・ヌスラ)を使ってシリア西部のイドリブを占領してきた。そのイドリブをシリア政府軍とロシア軍が奪還しようとしている。現在の状況で戦闘が始まれば、短時間でジハード傭兵が敗北することは明白。それを阻止するため、アメリカ、イギリス、フランスは直接的な軍事介入を行うと恫喝、その軍事介入を正当化するために化学兵器の使用を口実にすると、事実上、宣言している。
 この地域にはトルコ系の武装集団も存在しているのだが、トルコ政府はアメリカ政府との対立が激化、ロシア側へ軸を移動させている。それでもアメリカとの関係を断絶したわけではなく、NATOからも離脱していない。イドリブで戦闘が始まると、トルコはアメリカとの関係を完全に断ち切るのか、ロシア側へ着くのか、決断を迫られる。
 
 本ブログでは繰り返し書いてきたが、シリア政府軍が化学兵器を使ったとする話はいずれも嘘だと言うことが明らかにされている。そもそも、政府軍が化学兵器を使う状況にはない。
 嘘であるために証拠を提示することができず、ただ西側の有力メディアを使って宣伝するだけである。化学兵器にかぎらず、ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアへの軍事侵攻、ウクライナでのクーデター、いずれも偽情報がそうした有力メディアによって流されていた。イラクの大量破壊兵器話はアメリカ政府やイギリス政府の責任者たちも嘘を認めている。これだけ嘘をつき続けている勢力の宣伝を信じるということ自体、犯罪的だ。
 
 第2次世界大戦で日本が降伏してから1年近くを経た1946年8月、映画監督の伊丹万作は映画春秋でこんなことを書いている。
 戦争が本格化すると「日本人全体が夢中になって互に騙したり騙されたりしていた」。
 「『騙されていた』と言う一語の持つ便利な効果に搦れて、一切の責任から解放された気でいる多くの人々の安易きわまる態度を見る時、私は日本国民の将来に対して暗澹たる不安を感ぜざるを得ない。」
 「『騙されていた』と言って平気でいられる国民なら、恐らく今後も何度でも騙されるだろう。いや、現在でも既に別の嘘によって騙され始めているに違いないのである。」
(伊丹万作『戦争責任者の問題』映画春秋、1946年8月)
 日本を含む西側の有力メディアの愚劣さは大戦中の新聞と大差はなく、今も「騙されていた」と言って平気でいられる人が少なくない。
(2)
 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ政府が軍事侵攻を正当化する口実として化学兵器を言い始めたのは2012年8月。シリアに対する直接的な直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言したのだ。
 その月には​アメリカ軍の情報機関DIAが反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだと指摘されていた)であり、バラク・オバマ大統領が主張する穏健派は存在しないとホワイトハウスへ報告​している。
 2012年12月になると、ヒラリー・クリントン国務長官がシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語る。そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、イギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールに、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦をオバマ大統領が許可したという記述があるとする記事が載った。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された)
 そして2013年3月にアレッポで爆発があり、26名が死亡したのだが、そのときに化学兵器が使われたという話が流れる。シリア政府は侵略軍であるジハード傭兵が使用したとして国際的な調査を要請するが、イギリス、フランス、イスラエル、そしてアメリカは政府軍が使ったという宣伝を展開する
 
 しかし、​攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということをイスラエルのハーレツ紙が指摘、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。
 その間、アメリカのチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長は上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示した。議会の好戦的な要求をこのふたりが抑えていたのだが、ヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任拒否されている。オバマ大統領が主張する穏健派は存在しないとする報告を2012年8月に出したDIAの局長、マイケル・フリンは2014年8月に退役を強いられていた
 2015年9月にオバマ政権はシリアに対する本格的な軍事侵攻の態勢を整えたわけだが、その直後にロシア軍がシリア政府の要請で介入、ジハード傭兵の支配地域は急速に縮小していった。そして今、シリア政府軍とロシア軍はイドリブを奪還しようとしている。ここが終わればユーフラテス川の北側。ロシアとの軍事衝突を避けたいならアメリカは占領部隊を引き揚げるべきなのだが、イスラエルやサウジアラビアはそうしたことを望んでいない。
(3)
 アメリカをはじめとする侵略勢力は2013年8月にも化学兵器を使った偽旗作戦を実行した。ダマスカスの近く、ゴータで実際に使われたのだが、攻撃の直後にロシアのビタリー・チュルキン国連大使は反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾したと国連で説明、その際に関連する文書や衛星写真が示されたと​ジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる​。
 それだけでなく、メディアも化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事を掲載、すぐに現地を調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにしている
 例えば、攻撃のあった午前1時15分から3時頃(現地時間)には寝ている人が多かったはずだが、犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずであるにもかかわらず明確になっていないのはなぜか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのかといった疑問を発している。
 
 この犠牲者たちは直前に誘拐された子どもではないかとも言われている。ゴータへの攻撃が行われる10日ほど前、反政府軍がラタキアを襲撃し、200名とも500名とも言われる住人が殺され、150名以上が拉致されたと言われているのだ。最近、シリアの北西地域で40名以上の子どもが拉致されたと言われている。2013年の時と同じことが行われるのではないかと懸念されている
 2013年12月には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュも8月の攻撃に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。また、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。
 
 また、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。
 これも繰り返し書いてきたが、2012年5月にシリア北部のホムスで住民が虐殺された際、現地を調査したローマ教皇庁のフランス人司教は反政府軍のサラフィ主義者や外国人傭兵が住民を虐殺したと報告、それは教皇庁の通信社がその報告を伝えた。その司教は「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と書いている。
 
 中東における破壊と殺戮を引き起こしたのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、トルコ、カタールといった国々の政府だが、真実を語ってこなかった西側有力メディアの責任は重い。その見え見えの嘘に騙されてきた、あるいは騙されたふりをしてきた人びとも同罪だ。(了)