名古屋高裁(当時:青山邦夫裁判長)は2008年4月、自衛隊イラク派遣差し止めなどを求める集団訴訟の控訴審判決のなかで、「航空自衛隊のイラク派遣は憲法9条に違反」とする判断を同種訴訟の中で初めて示しました。
それはイラクのバクダッドは「人を殺傷し物を破壊する行為が現に行われている」戦闘地域であり、そこで「補給活動という戦闘行為」を行うのは、「武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、憲法9条に違反する活動」である、としたのでした。
東海地方などの143人が2日、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法は憲法9条違反として、国に損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴しました。原告には、名古屋市出身のノーベル物理学賞受賞者の益川敏英・京都産業大教授が加わりました。
また、上記の元名古屋高裁裁判長で現在は弁護士となっている青山邦夫氏が弁護団に参加しました。
弁護団は、米イージス艦への給油、駆け付け警護を任務に含めた南スーダン派遣など、安保関連法を根拠とした自衛隊の活動も違憲とし、「安保法制自体が違憲というにとどまらず、制定後に何が行われたかを明らかにしたい」としています。
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名古屋 「安保法制は違憲」ノーベル賞の益川氏ら提訴
毎日新聞 2018年8月2日
東海地方など143人、1人当たり10万円の損害賠償求める
集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法は憲法9条違反として、東海地方などの143人が2日、国に1人当たり10万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。原告には、名古屋市出身でノーベル物理学賞受賞者の益川敏英・京都産業大教授が加わった。
また、2008年に名古屋高裁の裁判長として、イラクでの航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動を違憲とする判決を出した青山邦夫弁護士が弁護団に参加した。
訴状では、安保関連法は戦争やテロの危険をもたらすとして「平和的生存権を侵害している」と主張した。米イージス艦への給油、駆け付け警護を任務に含めた南スーダン派遣など、安保関連法を根拠とした自衛隊の活動も違憲と訴えた。弁護団は「安保法制自体が違憲というにとどまらず、制定後に何が行われたかを明らかにしたい」と説明している。
提訴後に記者会見した青山弁護士は「イラク派兵違憲訴訟の判決後は『裁判官は釈明せず』と10年間語らずに来たが、この10年で憲法9条を巡る状況が変わり、発言しなければならないと考えるようになった」と語った。原告共同代表で元裁判官の下沢悦夫さん(76)は「安保関連法は平和憲法の理念に著しく反し、認めるわけにいかない」と強調した。
同様の集団訴訟はこれまでに全国21の地裁・地裁支部に起こされている。【野村阿悠子】