2018年8月25日土曜日

中国は安倍首相を試している

 第二次安倍内閣は登場するや否や中国脅威論を掲げ、行く先々で各国にそれを訴えて回りました。しかし当然のことながら殆ど賛同は得られず、代わりに日中間の関係は最悪の状態に陥りました。
 それが5年余りを経てようやく回復の兆しを見せていますが、問題は米朝関係が完全な対決状態になりつつあるときに、日本が中国との友好関係を強める方向に向かうことが出来るのかということです。
 
 そもそも安倍内閣によって日中間の冬の時代を招いた間に、米中は強力な経済協力関係を築いて発展させてきました。
 それがトランプ氏の方針で米中間が冬の時代に入ろうとしているからと言って、日本もそれに従わなければならないという理屈はありません。
 善隣友好こそが国是であるべきで、対米従属姿勢は、国内の従属派以外の誰からも評価されません。
 天木直人氏は、「中国は安倍首相を試している」という言い方をしています。
 もしも板挟みになって苦しいというのであれば、安倍首相は潔ぎよく身を引くべきでしょう。(^○^)
 
 天木直人氏と孫崎享氏の記事を紹介します。
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中国との対決姿勢に舵を切ったトランプと安倍首相の苦悩
天木直人のブログ 2018年8月25日
 どうやらトランプ大統領は中国との対決姿勢の方向に舵を切ったようだ。
 その事を、きのうの日刊ゲンダイで孫崎享氏が教えてくれている
 すなわち、今、米国の中国専門家たちは、トランプ政権が中国攻撃に方針を変えたという見方でほぼ一致しているというのだ。
 たしかに、貿易戦争の長期化から始まって、アジアでの共同軍事演習からの中国軍の排除、宇宙軍創設、台湾の蔡英文総統へのあからさまな支援、など、強硬策のオンパレードだ。
 
 そんな中で、いまこそ安倍首相は米中の仲介役を果たすべきだという声がメディアに見られる。
 そんな事、できるはずがないだろう。
 その事もまた孫崎氏は教えてくれている。
 中国と対峙するトランプ政権の戦略は具体性に欠けていると言わざるを得ないと。
 というのも、中国はすでに経済力、軍事力がある。
 米国内では、中国の大国化を抑える具体策が今のトランプ政権にあるのか、懐疑的な見方が少なくないと。
 
 米国に具体策がないのにどうして安倍首相に仲介役を果たせるというのか。
 それどころか米中対立が長期化すればするほど安倍首相は苦しくなるだろう。
 ここにきて日中関係が急速に改善しているかのごとくだ。
 ついに安倍首相の10月訪中が現実的になり、おそらく習近平主席の訪中も実現する。
 しかし、これは米中対立の結果、中国が日本に歩み寄って来たのではない。
 ましてや安倍外交の成果などではない。
 
 中国が安倍首相を試しているのだ。
 その証拠に習近平の中国は、歴史認識や尖閣問題や一帯一路で一歩も譲らない。
 きょうの報道では、ついに東シナ海のガス田開発について、日中合意に反して単独試掘を始めた。
 中国は安倍首相を試しているのだ。
 米中対立は長期化すると。
 日本はどちらを取るつもりかと。
 日本企業の事を考えたら答えは明らかではないかと。
 安倍首相はこれからますます米中対立に苦しめられることになる(了)
 
 
 日本外交と政治の正体  
兆候あらわ トランプ政権は中国との対決姿勢に舵を切った
孫崎享 日刊ゲンダイ 2018年8月25日
 米国のトランプ大統領は国内外に絶えず「敵」をつくり、あおり、関心を高め、選挙民の支持を狙う政治スタイルである。
 北朝鮮に対しても約1年半にわたって敵視していたが、米朝首脳会談を機に両国の関係は不安定ながらも、一応の緊張緩和状態にある。
 ならば、トランプが狙う次の「敵」は誰なのか。思い浮かぶのはロシアだが、大統領選挙でロシアの情報機関と連携したのではないか、との批判があるため、ロシアには触れたくないだろう。
 トランプは「アメリカ・ファースト」や「米国を再度、偉大な国に」とのキャンペーンを展開してきただけに、最も「敵」として有力な候補になるのが中国だ。
 
 トランプは大統領選挙では中国批判を展開したものの、大統領就任以降は中国批判を避け、かつ昨年4月、習近平国家主席をフロリダにあるトランプの別荘マールアラーゴに招待。米中融和の雰囲気が高まった。
 ところが今、米国の中国専門家は、トランプ政権が中国攻撃に方針を変えたという見方でほぼ一致している。最近の米国の動きを挙げると、この兆候はいろいろなところに表れてきている。
▽中国の経済大国化に対し、中国製品に関税上乗せ(特に先端産業製品に的を絞って)。
▽中国の軍事大国化に対し、国防総省内に「宇宙軍」を創設。
▽アジアに対する影響力拡大。アジア各国に対し、エネルギー、インフラ、デジタル商業などへの投資策を提言。
▽中国敵視政策によって国内保守層の支持獲得を狙う。
▽大統領選挙で、共産国のロシアと協力したと攻撃されているため、共産国としては中国がより大きい脅威だとして関心を中国に向けたい。
 
 台湾の蔡英文総統は中南米を訪問した際、経由地となった米国のヒューストンやロサンゼルスで演説し、歓迎ムードが漂う中で存在感を発揮したという。
 トランプ政権は中国と対峙する方向性を打ち出しているが、戦略は具体性に欠けていると言わざるを得ない。というのも、中国はすでに経済力、軍事力があるからだ。米国内では、中国の大国化を抑える具体策があるのか、懐疑的な見方も少なくない。 
 
 孫崎享 外交評論家
  1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。