2018年8月30日木曜日

「石破ビジョン」が好評 地位協定見直し・東京と平壌に連絡事務所をなど

■自民党が新聞・TVの総裁選報道に“圧力文書”を配布
 自民党の総裁選管理委員会が28日、新聞・通信各社に対し、総裁選での「公平・公正な報道」を求める文書を配布しました。そもそも総裁選に公職選挙法は適用されないのにあえて「公平・公正」を要請するとはおかしな話で、その目的が安倍首相の対抗馬である石破茂単独のメディア露出を潰すことにあるのは明らかです。
 安倍首相は石破氏との論戦を避けるために出馬表明をギリギリまで遅らせた挙句、選挙期間中も海外に逃亡する作戦を立てておきながら、メディアには石破茂氏の一方的な露出をさせないようにするというのは虫のいい話です。それは党の選管委というよりは安倍氏側選挙参謀の要求に過ぎません。
 安倍首相は2014年の総選挙の際、在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに〈公平中立、公正な報道〉を要求する文書を送りつけ、テレビ局は結局それに従いました
 それに味をしめて今回もこうしてメディアに圧力をかけ、石破氏の露出を抑えるだけでなく政権に批判的な報道を封じようとしている訳です。こんなことにメディアがまた屈するなら、憲法改正の国民投票迎えるであろうことは容易に想像できます。
 
 安倍首相は出馬表明で「骨太の議論をしていきたい」と発言しましたが、一体どういう意味なのでしょうか。彼の「政策ビラ」に載っている「5つの決意」は、決意というよりは単に楽観的な見通しを語ったものに過ぎません。この5年あまり、我々は毎年空虚なスローガンを聞かされ、次の年になるとそれはあっさりとキャンセルされてまた別のものが呈示されるということの繰り返しでした。いい加減に止めて欲しいものです。
 
 それに対して石破氏が27日に発表した「日本創生戦略―石破ビジョン」はネットでも中継され、その予想外に高い評価に安倍応援団が慌てているということです。
 石破氏の「政治・行政の信頼回復100日プラン」は、安倍内閣によって地に落ちた「官邸の信頼」をどう回復するかを具体的に述べています。
 またLGBTへの差別解消のために「法律をつくることは必要」とし、日米地位協定の改定については、「日米はお互いに対等でなければならない」としました。拉致問題、核ミサイル問題は「圧力だけですべて解決する問題ではない」と安倍政権の姿勢を批判し、東京と平壌に連絡事務所を設けることで「北朝鮮の主張を公的に検証する仕組みをつくる」と提言し、安倍氏の怠慢を衝いています。
 これらはいずれも安倍氏では一歩も前進させられない事柄です。さらには目前に断末魔が迫っているのに、いまも「アベノミクス」で頭の中を占められている安倍氏が、石破氏の「アベノミクス」批判に対して太刀打ちできる筈もありません。
 
 いずれにしても石破氏は考え方が緻密で、誰かとは違ってしっかりした正直な人物であることは明らかです。ただ憲法9条2項を削除するという徹底した改悪論者である点はなんとも困る所ですが ・・・ 
 LITERAと日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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石破茂の政策がアンチ安倍でキレキレ! 
改憲より日米地位協定見直し、LGBT差別解消、東京と平壌に連絡事務所を
LITERA 2018年8月28日
 ようやく自民党総裁選への正式な出馬表明をおこなった安倍首相だが、そこで述べた「骨太の議論をしていきたい」という発言に注目が集まっている。
 対抗馬の石破茂・元幹事長との論戦を避けるために出馬表明を引っ張り、公開討論や街頭演説の回数を減らすなどの“逃げ工作”をはかる人間が、「骨太の議論をしたい」などと言い出す……。それだけでも噴飯ものだが、しかも安倍首相は、党員・党友などに宛てて決意文と政策ビラを送っていたのだという。
 
 石破氏は昨日、政策発表会見を開いて「石破ビジョン」を公表し、ネットでも中継されるなど広く国民に対しても説明をおこなった。
 にもかかわらず、本来は国民に方針を示す必要・責任がより強くある現職総理は、国民より前に党内に政策を発表する──国民軽視もここに極まれりだろう。
 しかも、その「政策ビラ」に書かれている「5つの決意」の中身もすごい。何の成果も出していないのに「地球儀を俯瞰する外交の更なる展開」を謳ったり、多くの国民の賛同を得られていない「憲法改正」を打ち出して「新たな時代を切り開く」と勝手に決意するという政策のほかにも、「戦後最大のGDP600兆円を実現」「希望出生率18の実現」「訪日観光客4000万人を実現」などと書いているのだ。
 そもそもGDPについては安倍政権による“かさ上げ”疑惑がある上、「名目GDPが50兆円増加」と言いながら個人消費は一向に伸びず、実質賃金も低迷。結局、大企業しかアベノミクスの恩恵を受けていないのに、GDP600兆円を目指して何になるのか。さらに、待機児童や女性の雇用環境改善もおざなりにしている上、産まない・産めない女性の人権をも無視した杉田水脈議員の「生産性」発言や加藤寛治議員の「3人以上子どもを産め」発言の責任をとらせないでいて希望出生率を上げようとは、安倍政権が「女は産む機械」としか見ていない何よりもの証拠だ。また、訪日観光客を増やそうというのなら、まずは訪日観光客トップ2である韓国や中国に対する自民党議員のヘイト発言や敵愾心を煽る言動を諫めるべきだろう。
 
 このように、威勢のいい言葉や数字を並べるばかりで中身がスカスカな安倍首相の政策。他方、石破氏が発表した「石破ビジョン」は、そうした安倍首相の政策は何を隠しているのかを暴く、強烈なダメ出しになっていた
 たとえば、石破氏は格差是正などに重点を置いた経済財政運営や「真の地方創生」の実現に向けた政策を公表したが、なかでも目を引いたのは「政治・行政の信頼回復100日プラン」なるものだ。
 森友・加計問題で失った政治・行政への信頼を取り戻す──。しかも、石破氏は昨日の会見で、こう断言したのだ。
政治・行政の信頼回復は、まず官邸の信頼回復であります」
 そして石破氏は、内閣人事局の運営方針の見直しを提言。「官邸主導の政策推進プロセスの透明化」のほか、利害に関わる者と官邸の接触に明確なルールを設けるとし、「いつ、どこで、誰が、誰に会ったかという記録は明確でなければならない」「(面会記録の)保管は義務化」と打ち出したのである。
 
 本来ならば安倍首相こそが明言すべきルールだが、安倍首相の政策ビラには森友・加計問題による国民の政治・行政不信への言及は一切なし。完全に「終わったこと」にしてしまっている。つまり、何の反省もしていないのだ。このままでは政治の私物化が繰り返されることは目に見えているだろう。
 
「憲法改正より日米地位協定見直し」「東京と平壌に連絡事務所を」
 また、石破氏は会見のなかで、LGBTへの差別解消のための法案についても、「法律をつくることは必要」「差別をなくすということ、権利の侵害を除去するとともに活躍の場をさらに広げていくために、実効性のある法律であってほしい」と発言をおこなった。
 先の通常国会では、野党4党が「LGBT差別解消法案」を提出したが、その一方で自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」は「差別解消法案」ではなく「理解増進法案」を検討。しかしそれさえも党内の反発によって国会提出にはいたっていない。そんななかでの石破氏の発言は大きな意味をもつだろう。逆に言えば、杉田発言を受けて性的少数者に対する提言を盛り込むこともなく、挙げ句、総選挙のための山口県連との会合では安倍首相と杉田議員が同席していたというほど。「生産性」発言の何が問題か、いまだに安倍首相はまったく理解していないのである。
 
 さらに石破氏の政策で驚かされたのは、日米地位協定の改定に踏み込んだことだろう。
 石破氏は憲法改正について「スケジュール観ありきとは考えていない」「国民の深い理解を得ることが重要」としたが、一方、外交・安全保障政策に話題が及ぶと、アメリカ国内の自衛隊常設訓練場の創設を目指すと発言。そのためには日米地位協定の策定が必要だとし、こう述べたのだ。
(日米は)お互いに対等でなければならない
「在日米軍とのあいだには日本は家主、米軍はゲストという関係は十分構築可能なもの」
 憲法改正より日米地位協定の見直しを──。無論、石破氏の安全保障の考え方は自衛隊の役割を拡大させる危険なものではあるが、在日米軍に特権的な地位を与える現在の不平等な地位協定の改定を打ち出したことは、対米従属で思考停止、沖縄に負担を強いてばかりの安倍首相とはまったく対照的だ。
 
 このほかにも、石破氏は北朝鮮に絡んで「拉致問題、核ミサイル問題は圧力だけですべて解決する問題ではない」と切り込み、東京と平壌に連絡事務所を設けることで「北朝鮮の主張を公的に検証する仕組みをつくる」と提言。「拉致問題の全面的解決がなければ何も進展しないというものからは脱却しなければならない」と、安倍首相の怠慢を見事に暴いたのだ。
 石破氏の政策ビジョンは手放しで賛同できるものではないが、それでも、その中身は安倍首相の「不都合な真実」を暴露するものであることは間違いない。しかも、石破氏は昨日の会見でアベノミクスを検証した資料を配付。そこではGDPかさ上げ問題など安倍首相の嘘・まやかしにも踏み込んでいる。
 少なくとも石破氏は、どんな記者からの質問にも意味の通じる日本語でていねいに返答しており、ここが安倍首相と大きく違う点であることは一目瞭然。果たして、安倍首相の政策に真っ向勝負を挑む石破氏との公開討論会で、安倍首相はどんな醜態を晒すことになるのか。楽しみなところだ。(編集部)
 
 
安倍応援団は大慌て 政策「石破ビジョン」予想外の高評価
日刊ゲンダイ 2018年8月30日
「これはヤバイ」――と安倍応援団が慌てている。石破茂氏が発表した政策「日本創生戦略―石破ビジョン」に対する評価が予想外に高いからだ。専門家が「アベノミクス」と比較したら、「石破ビジョン」に軍配が上がる可能性が高い。なんとしても政策論争は避けようと、安倍応援団は策をめぐらしているという。
 石破茂氏が27日に発表した総裁選の公約「石破ビジョン」は、<地方創生の実現><人を幸福にする福祉社会の実現>など5項目からなるもの。
 経済政策の柱は、<中小企業と地方の成長力の引き上げ>と<社会保障制度改革>の2つだ。会見では「大企業だけでなく、中小企業や地方経済の潜在力を可能な限り伸ばし、経済成長の中心とする」「国民が信頼できる社会保障制度を確立し、安定的な消費を喚起する」と訴えた。
 
■アベノミクスの失敗も解説
 さらに、「アベノミクスの不都合な政策目標?」と題した資料も配り、数値を示して安倍首相の看板政策である「成長戦略」や「地方創生」が目標未達の「失敗」に終わったと解説。例えば、潜在成長率が1%前後で低迷しているのは「成長戦略の失敗」と丁寧に説明
 アベノミクスについては「異次元緩和というカンフル剤が効果を上げたが、いつまでも続くわけではない」と、出口戦略の必要性を強調。「都合のいい数字ばかり強調するのは良いことではない」と、安倍首相が「493兆円から551兆円に増えた」と胸を張るGDPについても、増加分のうち32兆円は統計の見直しによるカサ上げが要因だと喝破してみせた。
 
「石破ビジョン」について、経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「まだ、具体的な手法が分からないので評価は難しい。でも、日本経済に対する基本認識と目指す方向は正しいと思います。アベノミクスは、大都会と大企業と富裕層を潤せば、トリクルダウンが起きて、地方も中小企業も貧困層も豊かになると訴えていましたが、まったくの間違いでした。石破ビジョンのように、地方と中小企業を直接、豊かにする考えは間違っていない。社会保障を充実させることで国民の将来不安を解消し、消費を活発にする考えも悪くない。アベノミクスに対する評価は、まさにその通りです」
 
 アベノミクスが失敗に終わっていることもあって、安倍応援団は「石破ビジョン」への評価が高まることに危機感を持っているという。自民党関係者がこう言う。
「まず、石破ビジョンに注目が集まらないように政策論争の機会を少しでも減らすつもりのようです。さらに、NHKを筆頭とする安倍シンパのメディアに、『石破ビジョンは実現性が低い』『安倍内閣の閣僚だったのにアベノミクスを批判するのはおかしい』などと、巧妙にケチをつけてもらう方針のようです。さらに、石破ビジョンをパクって違いをなくしてしまうことも考えているようです。すでに、安倍陣営がまとめたビラには<強靱な地方を創り上げる><全ての世代が安心できる社会保障改革>などと、石破ビジョンをパクったような政策が並んでいます」
 大手メディアは、逃げ続ける安倍首相に「政策論争をすべきだ」と、プレッシャーをかけるべきだ。