2018年8月27日月曜日

27- 電話会談で朝鮮戦争の終結宣言に反対した安倍首相

 安倍首相は22日のトランプ大統領との電話会談で、北朝鮮が固執している朝鮮戦争の終結宣言を、非核化の進展がない現時点で受け入れるべきではないと発言したということです。
 朝鮮戦争の終結宣言は韓国の文在寅大統領が最も強く望んでいることでもあり、実質的に戦争が終結した後に極めて長年月が経過しているという不自然な事態になっています。
 
 日本は朝鮮戦争の当事者ではありませんが、日本(の基地)は朝鮮戦争の恰好の前線基地で、恰好の資材補給基地でもあったわけで、決して無関係ではありませんでした。
 また北朝鮮で非核化の進展がないのにはそれなりの理由があり、決して北朝鮮が一方的に不誠実だからということではありません。それなのに安倍首相はなぜ終結宣言を妨害しようとするのでしょうか。
 今回のことに限らず安倍首相は6月の米朝首脳会談以降も一貫して北朝鮮を非難し、制裁の維持を強調して来ました。
 
 その一方で、23日の大分市のホテルでの安倍首相の総裁選3選を応援する集会に寄せたビデオメッセージでは、「次は私が金委員長と向き合う番」だと、それなりに恰好をつけた発言もしています。
 
 上述した一連の発言は当然日朝会談の実現を阻害するものなので、それを拉致被害者を抱える国のリーダーが行うというのは理が通りません。
 しかし「拉致問題の安倍」のポーズは取り続けるものの、実際には出来るだけ「日朝首脳会談」はしたくないのだと考えればすべての疑問が氷解します。
 安倍政権は6月に、北との交渉役に内閣情報調査室のトップで“官邸のアイヒマン”と呼ばれる北村滋氏を充てました。北朝鮮が忌避する人物を敢えて窓口に選んだのは、日朝会談をスムーズに進めたくなかったからだと見られています。
 
 会談を避ける理由も明らかでそうすればボロが出るからです。彼が、自分が不利になることは何としても避けようと振る舞うのは、今回の総裁選でも明らかです。
 しかし自分の利益のためには拉致被害者を無視するということは許されません。いまこそ拉致被害者家族の期待に応えるべきです。
 
 そんな折、北朝鮮は同国の法律に違反したとして拘束していた日本人観光客(杉本倫孝氏)を、人道的見地から国外追放処分にしたと報じました。真意は不明ですが、日朝関係が最悪になる事態を避けたものと思われます。
 
 天木直人氏のブログ、東京新聞の記事:「北朝鮮、終戦宣言実現に固執」、読売新聞の記事:「北、拘束の日本人を追放処分  」を紹介します。
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電話会談で朝鮮戦争の終結宣言に反対した安倍首相の仰天
天木直人のブログ  2018-08-26
 はたして安倍首相は電話会談で北朝鮮問題についてトランプ大統領とどんな話をしていたのか。
 それをメディアは調べて国民に教えるべきだと書いたばかりだ。
 そうしたら、きょうの読売新聞が次のように書いていたのを見つけた。
 「・・・米政府関係筋によると、トランプ氏は22日の安倍首相との電話会談で米朝交渉の現状を説明し、北朝鮮が固執している朝鮮戦争の終結宣言について意見を聞いた。安倍首相は非核化の進展がない現時点で、受け入れるべきではないとの考えを伝えたという・・・トランプ氏は安倍首相の意見も参考にし、ポンぺオ氏が訪朝すれば、交渉が北朝鮮ペースになりかねないと判断したとみられる・・・」
 
 本当にトランプ大統領は安倍首相に助言を求めたのだろうか。
 本当に安倍首相はこんなことをトランプ大統領に言ったのだろうか。
 本当なら、トランプ大統領は大統領失格だ。
 安倍首相には韓国や北朝鮮との関係改善は無理だ。
 
 後段のくだりは、読売新聞が安倍首相に都合よく勝手に推測して書いた事に違いないが、もしトランプ大統領が安倍首相の意見に耳を傾けてポンぺオ国務長官の訪朝を取り止めたとすれば、トランプ外交は安倍外交以下である。
 歴史に残る稚拙な外交ということになる(了)
 
 
北朝鮮、終戦宣言実現に固執
東京新聞 2018年8月26日
 【北京=城内康伸】北朝鮮は朝鮮戦争の終戦宣言の早期実現に固執し、米国が応じない限り、核計画の申告など非核化に向けたさらなる措置には踏み出さない考えだ。北朝鮮は核を放棄する前提として、米国との信頼醸成が最優先と位置付けている。
 北朝鮮関係筋は「われわれは長い時間かけて、核武力を完成させた。米国が非核化を求めるのなら、信頼関係の構築が不可欠だ」と強調する。
 
 関係筋は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領が六月に署名した共同声明に「朝米は新たな関係の確立に全力を挙げる」と明記されていると指摘。「しかし、米国では声明に反する動きがやまない」と主張する。
 北朝鮮には、信頼関係を築くため、核・ミサイル実験の凍結やミサイルエンジン試験場の解体など「善意の措置」を取ってきたとの自負がある。李容浩(リヨンホ)外相は四日、シンガポールで行った演説で「われわれが取った措置に米国は応えるどころか、制裁維持を求める声を強め、終戦宣言を先送りする態度を示している」と批判。「われわれが一方的に先に動くことはない」とクギを刺した。
(後  略)
 
北、拘束の日本人を追放処分…朝鮮中央通信
読売新聞 2018年08月27日
 【ソウル=岡部雄二郎】北朝鮮国営の朝鮮中央通信は26日、北朝鮮当局が、同国の法律に違反したとして拘束していた日本人観光客を人道的見地から国外追放処分にしたと報じた。
 朝鮮中央通信によると、国外追放されたのはスギモト・トモユキ氏で、観光目的で最近北朝鮮に入り、拘束された。詳しい拘束理由は明らかにしていない。
 北朝鮮では今月、39歳の映像クリエイターの日本人男性が、西部・南浦(ナムポ)で拘束されたことが明らかになり、日本政府が水面下で解放を求めていた。国外追放されたのはこの男性とみられる。