2018年8月31日金曜日

“左遷”の森友スクープ記者 NHKを退職へ

 今年5月、NHK大阪放送局の敏腕記者(副部長)が、番組チェックなどを行う「考査室」へ突如左遷させられました。考査室は、定年間際の社員が行くようなところで第一線の記者が行くような部署ではありません。
 同記者は、それまで『財務省が森友学園側に口裏合わせ求めた疑い』4月4日)など森友問題に関する数々のスクープを連発していたので、この異動は森友問題を報道させないための“官邸忖度人事”としか考えられません。
 「安倍サマの ・・・ と揶揄されるNHKが、如何に官邸に迎合しようとしているかの例で、これでは権力を監視する公共放送の役割は果たせません。
 
 その記者・相澤冬樹氏は、もうNHKでは記者職に戻れないからと、9月から「大阪日日新聞」に転職するということです。元公共放送・NHKの堕落を象徴する出来事です。
 
 8月30日付及び5月17日付の日刊ゲンダイの記事と、相澤氏の「退職の挨拶」を紹介します。
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“左遷”の森友スクープ記者「記者続けたい」とNHKを退職へ
日刊ゲンダイ 2018年8月30日
 NHKで森友問題に関するスクープを連発していたA記者が、考査部門に“左遷”されたことを、日刊ゲンダイが今年5月に報じたが、そのA記者が8月末でNHKを辞めることが分かった。
 
 A記者は、NHK大阪放送局考査部の相澤冬樹副部長(55)。本人のフェイスブックによれば、8月31日にNHKを退職し、9月1日からは、新日本海新聞社の傘下の「大阪日日新聞」で記者として働くそうだ。フェイスブックには、<この仕事(記者)を愛し、誇りを持ち、これからも記者を続けたい、その一心で今回の転職を決めました>とある。
 
 相澤氏に確認すると、NHKを退社することを認めたうえで、こう言った。
「フェイスブックに書いたように、記者をやりたいという思いが強く、NHKでは二度と記者に戻れないと状況的に考えて退職を決意しました。これまで外部の取材には応対してきませんでしたが、辞めることはもう確定していますし、個人的なことなのでお伝えしても問題ないかと思います」
 
 NHKは、先日の安倍首相の鹿児島での出馬表明の生中継といい、ますます「アベ様のNHK」と化している。森友関連のスクープも、もう出てこないのだろうか……。
 
 
【退職と転職のごあいさつ】 (「半歩前へ」より転載)
 
 皆さま。残暑厳しき折、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、私、31年余り勤めたNHKを、今月31日をもって退職することにいたしました。9月1日から新日本海新聞社に入社し、傘下の大阪日日新聞で引き続き記者として働きます
 
 思い起こすのは初任地、山口での日々。夜回りに行くたび「あんたはええ記者になる。ええ刑事にもなれる」と言ってくれたけれど、ネタは決してしゃべらなかった山口県警某刑事。
 飲みに行くたび「お前は勘が悪い。記者に向いとらん。すぐ辞めろ」とからかった山口地検某検事。
 それから山口→神戸→東京社会部→徳島→大阪→東京BSニュース→再び大阪と、報道の世界を渡り歩く中で、様々な方に出会い、取材し、お話しし、飲みに行き、時には叱責され、鍛えて頂きました。
 そしてNHK関係者にも、先輩・同期・後輩記者、映像取材(カメラマン)、音声・照明さん、映像編集、ディレクター、アナウンサー、リポーター、車両さん、タクシーの運転手さん、
 技術さん、営業、編成、総務、経理、事業、広報の方、スタッフの方々、そして最後に所属した考査部の皆さん、あげだすときりがないけれど、様々な職種の仲間たちに支えて頂きました。
 取材先の方々や仲間たちに育てられて、今の私があります。皆さん、お世話になりました。感謝の気持ちでいっぱいです。
 
 31年間の記者人生でも、大阪で司法取材を担当したこの2年間は最も充実した日々でした。
 中でも森友学園事件にめぐり会ったことは望外の喜びで、「自分はこのネタをやるため記者になったのだ」と確信して取材していました
 そして今年5月、記者を外れる異動内示を受けました。
 「最後にいい夢、見させてもらった」という思いもあるので、そのまま一線を退く道もあるのでしょう。
 でも、私はまだ夢を見ていたい。この仕事を愛し、誇りを持ち、これからも記者を続けたい、その一心で今回の転職を決めました。
 これは人生の賭けだと思います。でも私は、この賭けに勝てそうな気がしています。
 どこまで行けるかわかりませんが、前に進みます。
 
 これまでご縁のあったすべての皆さまと、これからご縁ができるであろうすべての皆さまに、今後も私に関わり、叱咤し、ご指導くださいますよう、お願い申し上げ、退職と転職のごあいさつとさせて頂きます。
 本当にありがとうございました。     相澤冬樹 拝
 
 
森友問題スクープ記者を“左遷” NHK「官邸忖度人事」の衝撃
日刊ゲンダイ 2018年5月17日
「皆様のNHK」どころか、これでは“安倍様のNHK”だ。森友学園問題に関するスクープを連発していたNHK大阪放送局の記者が突如“左遷”されるというのだ。安倍政権の急所である森友問題を報道させないための“忖度人事”ではと、NHK内部に衝撃が走っている。
 森友問題を最初に指摘した木村真豊中市議が15日、フェイスブックに〈大阪NHKの担当記者さんが、近く記者職から外されるということです!〉〈NHKが「忖度」したということなのか〉と投稿し、物議を醸している。
 
 これを受け、日刊ゲンダイが調べたところ、木村氏が言及したA記者は現在、大阪放送局の報道部の副部長だが、来月8日付で記者職を離れ、番組チェックなどを行う「考査室」へ異動する内々示が出されたという。
「考査室は、定年間際の社員が行くような部署で、悪くいえば“窓際”。A記者は昨年、森友問題が発覚した後、いち早く籠池前理事長のインタビューを行い『籠池に最も近い記者』とメディア関係者の間で一目置かれていました。今年4月4日の『財務省が森友学園側に口裏合わせ求めた疑い』をスクープしたのもA記者。文書改ざん問題など、検察の捜査が進んでいて、真相究明はまさにこれからというタイミングだけに、A記者も上層部に記者職を継続したいと伝えていた。なのに“考査室”ですからね」(NHK関係者)
 
 スクープ記者がいなくなれば、安倍首相を追い詰めるような森友問題の報道はNHKからガタ減りするだろう。やはり“忖度人事”なのか。
 A記者に話を聞こうとしたが、「私の立場ではお答えすることはできません」と口をつぐんだ。NHKに問い合わせると、「職員の人事に関して、原則、お答えすることはありません」(広報局)と返答した。
 
 前出の木村市議はこう言う。
「スクープ記者を外すようではNHKは終わりです。視聴者を見て番組を作っているとはいえず、今後、受信料を払いたくないという国民も出てくるのではないでしょうか」
 NHKの森友報道をめぐっては、先日、共産党議員の国会事務所に〈森友報道をトップニュースで伝えるな〉と、上層部が部下に指示したとのNHK内部からとみられるタレコミもあった。いったい誰のための公共放送なのか。