日刊ゲンダイの連載記事:「徹底比較 安倍晋三と石破茂 (5)」を紹介します。
対談者の鈴木哲夫氏、野上忠興氏のプロフィールについては、連載1回目
を参照ください。
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徹底比較 安倍晋三と石破茂
安倍は安保否定論の教師にブチ切れ 石破は15歳で単身上京
日刊ゲンダイ 2018年8月30日
鈴木 知事の息子ということで中学校でイジメを受けた石破は、「このまま鳥取にいて嫌がらせが続けば、この子はおかしくなる」という母の決断によって、15歳で単身上京し、慶応義塾高校に入学します。そこでは誰も「石破」という名字を読めなかった。鳥取では、石破と言えば「ああ、知事の息子か」となるのに、「せきは」とか「いしやぶり」とか呼ばれる。それが何よりうれしかったそうです。同級生には中川一郎元農相の息子、1級下には石原慎太郎の長男・伸晃ら、いわゆる権力者の一族が山ほどいて、特別扱いされることもない。のびのびと学校生活を楽しんだそうです。
野上 安倍の高校時代のエピソードといえば、「安保が戦争を誘発」と唱える社会科教師にブチ切れた一件が印象的です。「待ってください!」と立ち上がった安倍は、「安保条約の第2条にある経済条項が日本の繁栄の基礎を築いた」とまくしたてた。その教師は議論に乗ってこなかったそうですが、クラスメートの一人は「その時の安倍君の満足そうな顔はよく覚えている。とにかく自己主張の強いヤツだった」と述懐していました。もっとも、安倍は著書「美しい国へ」の中で、<本当を言うと、そのとき私は、条文がどんなことになっているのか、ほとんど知らなかった><祖父からこれは日本の発展にとって大きな意味があると聞かされていたので突っかかってみたまでだった>と種明かししています。安保について勉強していたわけではないが、敬愛する祖父の業績を否定されて激高し、受け売りで反論をしてしまう。そういう気質は今も変わっていないように見えますが。
鈴木 石破は高校時代は庭球部でテニスに打ち込み、ほとんど女性と口をきく機会もなかったそうです。慶応高校生ならモテそうなものですが、女性と縁がないまま、あっという間に3年間が過ぎて、慶応大学法学部法律学科に進学。大学では真面目に勉強していたようです。特に刑法は性に合ったらしく、学期末試験の時に「石破のヤマかけ講座」を開設するまでになります。
野上 対照的なのが安倍で、成蹊大学法学部政治学科に進むも、本人や母・洋子も認めていることですが、勉強熱心ではなかった。実際、大学時代の恩師が「勉強していなかった。ましてや経済、財政、金融などは最初から受けつけなかった」と振り返っていました。真っ赤なアルファロメオで通学し、雀荘通いとアーチェリー部の活動にいそしむ毎日。アーチェリーを選んだのは、「スキーやテニスだと腕の立つ連中が入ってくるが、アーチェリーならスタートが一緒でハンディがない」と考えたそうなんです。学友が言う「要領のよさ」が、ここにも顔を出していますね。ちなみに学友は「美人が多かった学習院アーチェリー部との合コンが楽しくて仕方なかったようだ」とも明かしていました。
鈴木 石破の場合は一途というか、慶大の同級生で「石破のヤマかけ講座」に来ていた女性が、今の奥さんです。 (つづく・敬称略)