安倍首相は石破茂氏との「一騎打ち」になる9月の総裁選に向けて「論戦拒否の戦術」に出ようとしています。首相から側近に「なるべく討論する機会をつくらないように」との指示が下りているようだということです。
総裁に当選すればそのまま首相になるという自民党総裁選で、何の公開討論もないままに投票日を迎えるなどということはあってはならないことですが、討論会で石破氏から論理的にガンガン正論で突っ込まれると太刀打ちできなくなるから、敢えて『逃げ恥』作戦を取るのだと、日刊ゲンダイは見ています。
『逃げ恥』はTBS系ドラマの「逃げるは恥だが役に立つ」から来ている言葉で、文字通り「恥ではあっても勝つためには役に立つ」からそうするのでしょう。
安倍氏はかつて「美しい日本」などという意味不明のスローガンを得意になって唱えていましたが、まさに「美しさ」とは対極にある態度です。普通の人であればとてもできないことですが、彼にあってはいまや何をしようとも、何があろうとも驚くには当たらないという実態になっています。
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総裁選で論戦拒否…安倍首相が打って出た「逃げ恥」作戦
日刊ゲンダイ 2018年8月18日
来月の自民党総裁選を巡って、にわかに信じがたい話が永田町を飛び交っている。安倍首相と石破茂元幹事長による事実上の「一騎打ち」と目されるが、安倍首相は論戦拒否の戦術に出ようとしているというのだ。
「石破さんは総裁選に向けて、憲法改正や経済政策、国会運営などについて、安倍首相に政策論争を持ちかけようという戦略です。しかし、安倍首相からマスコミ対策を担当する側近に『なるべく討論する機会をつくらないように』との指示が下りているようなのです」(自民党関係者)
石破氏は16日、派閥会合で総裁選について「いくつかのテーマに分け、候補者同士の討論を絶対にお願いしたい」と公開討論に意欲を見せたが、安倍首相は出馬表明すらしていない。もちろん、石破氏の呼びかけに応じる姿勢も見せていない。
「安倍首相は、お国入りした11日に地元で出馬表明するかもしれないとみられていました。現時点では、夏休み明けの表明という話もありますが、まさか告示日(予定)の来月7日まで出馬表明しないのではないか、という見方まで出ています。出馬を決めると、テレビ局などから石破さんとツーショットでの出演をオファーされる可能性があり、それを避けるために表明を遅らせているのでは。記者の間でも、何でこんなに出馬表明の時期を引っ張っているのか疑問視する声も出ているようです」(前出の自民党関係者)
自民党総裁選は事実上、首相を決める選挙だ。目指す国家像や経済・外交など、それぞれの政策を正々堂々と戦わせる場面を党員はもちろんのこと国民も望んでいるはずだ。「逃げるは恥」作戦は「役に立つ」ことはない。
5人が出馬し、安倍首相と石破氏との決選投票までもつれ込んだ前々回2012年(前回15年は無投票)の総裁選では、候補者は約2週間の選挙期間中、政策を戦わせ続けていた。その間のスケジュールはナント、テレビの討論番組出演8回、党主催の討論会1回、インターネットの公開討論会1回、全国遊説16カ所。今回の総裁選で討論の回数が減少したり、安倍首相がダンマリなら、当然、批判は免れない。
安倍首相が討論を徹底して嫌がるのはなぜなのか。政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「石破さんから論理的にガンガン正論で突っ込まれると反論できなくなるからでしょう。安倍首相は自分の主張を一方的に語るのは得意ですが、議論をしている相手の話を聞いて反論するのは苦手。国会でも自分の言いたいことを押し通していますからね。討論しても、丁々発止の“ラリー”ができないので嫌なのでしょう」
そもそも、「安倍首相は15年と同じように無投票3選を望んでいた」(永田町関係者)という。だから岸田政調会長を出馬断念させ、石破氏の出馬も気に食わない。どうせ自分が勝つのだから「討論」なんて必要ない、ということでもあるのだろう。討論から逃げたら「地方票」は確実に減る。