2018年8月17日金曜日

企業業績の悪化がアベノミクス相場のトドメに

 SMBC日興証券が東証1部1470社を対象にした調査に基づいて15日公表した今期(2019年3月期)の業績予想は、純利益予想前期比21%減3年ぶりのマイナスなる見込みです。
 第1四半期(46月)の純利益は前年同期比で10%以上も増えたのですが、年度末にはそのすべてを吐き出した上に減益になるということです。しかもこの予測には、タイミング的に最近のトルコ・ショックの影響は含まれていないので、実際にはより悪化する可能性が濃厚です。
 
 これを引き起こした要因は(トルコ・ショックを含めて)トランプ氏の横暴にありますが、ひたすら大企業・輸出企業の利益を優先(円安誘導)し、国費と国民の資産を投入して砂上の楼閣的な株高を演出してきたアベノミクス相場が、これによって崩れるのは安倍政権の責任といえます。
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3年ぶり減益予想 企業業績の悪化がアベノミクスのトドメに
日刊ゲンダイ 2018年8月16日
 アベノミクスは完全に終わるかもしれない――。15日、そんな囁きが市場で多く聞かれた。
 きっかけは、SMBC日興証券が15日公表した今期(2019年3月期)の業績予想だ。東証1部(3月期決算企業)の1470社を対象にした調査で、純利益予想は前期比21%減。3年ぶりのマイナスとなる見込みで、「まさか、これほどヒドイとは……」「秋以降の相場はメタメタかも」といった声が相次いだ。
 足元の業績が好調なだけに、「想定外の結果」だったという。
「第1四半期(4~6月)の純利益は前年同期比で10%以上も増えています。最終的には、この貯金をすべてはき出しても足りず、減益になるということです。経営者は夏以降の極端な景気悪化を予想していることになります」(株式評論家の倉多慎之助氏)
 
■安倍政権の弱腰が原因とも
 業種別では、自動車(輸送用機器)が176%減、銀行が82%減、建設が49%減だ。
「企業トップは、トランプ米大統領が検討している輸入車への追加関税を警戒しています。保守的な計画を立てざるを得ない状況でしょう」(株式アナリストの黒岩泰氏)
 輸入車の関税が現状の25%から25%にハネ上がったら、トヨタ自動車は4600億円(年間)の負担増になるといわれる。1台当たりにすると平均66万円だ。
 
「安倍政権はトランプ大統領の言いなりで、追加関税に対して強気な発言をしない。そのシワ寄せが、企業の弱気な業績予想につながっているのです。3年ぶりの減益予想は、市場の流れを大きく変えるマイナス要因です。9月の総裁選で安倍首相が3選を果たしても、株価下落は避けられないでしょう。アベノミクス相場は終わります」(市場関係者)
 
 今回の業績予想には、発生したばかりの“トルコ・ショック”は考慮されていない。
「トルコのリラ安だけでなく、きのうは中国の人民元も対ドルで1年4カ月ぶりの安値をつけています。こうなるとリスク回避の円買い(円高)を警戒する必要があります」(倉多慎之助氏)
 追加関税にトルコ・ショック円高  と悪材料のテンコ盛りだ。企業業績の悪化が、アベノミクスにトドメを刺す。
 
 
トルコ・ショックの本番はこれから…9月に起きる金融危機
日刊ゲンダイ 2018年8月15日
 トルコ・ショックはいつまで続くのか。市場関係者が怯えている。
 13日、日経平均はトルコの通貨リラ急落を受け、大幅安となった。終値は前週末比440円安の2万1857円と、約1カ月ぶりに2万2000円の大台を割り込んだ。
「この時期の日本は市場参加者が少なく、株価が大きく上下に振れやすいのです。トルコ・ショックの後遺症は長引くかもしれません」(市場関係者)
 
 トルコリラは、13日に対米ドルで一時7リラ近辺まで急落。前日に比べ、一気に2割の下落となった。
 これに金融市場が慌てた。外資系金融機関のトルコ向け債権は約2233億ドル(約24兆5630億円)に上る。うち7割がEU系。最も多いのがスペインで、フランス、イタリア、ドイツと続く
「トルコそのものではなく、こうした国の銀行が経営破綻するリスクが急浮上したのです。世界的な金融危機の恐れが高まり、リスクオフの流れが強まった。リスク資産である株は売られたのです」(ちばぎん証券アナリストの安藤富士男氏)
 
 リラ安の根は深い。2年前、トルコのエルドアン政権へのクーデター未遂事件にかかわったとされる米国人牧師が逮捕、拘束された。トランプ米大統領は牧師の解放を要求しているが、エルドアン大統領にその気はさらさらないといわれる。怒ったトランプは鉄鋼の輸入制限を強化するなど経済制裁を発動した。
「トランプ大統領は11月の中間選挙を控え、攻撃の手を緩めようとはしないでしょう。一方のエルドアン大統領も6月の大統領選に勝ったばかりだし、いまは引き下がれない。長期戦の可能性もあります」(第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏)
 
 エルドアンは10日付のニューヨーク・タイムズ(電子版)に論文を寄稿。「トルコは他の友好国、同盟国を模索する」とし、暗にアメリカとの対立姿勢を鮮明にした。
「2001年の米同時多発テロや08年のリーマン・ショックは9月でした。9月は暴落が起きやすい月といえます。身構えておくべきでしょう」(金融関係者)
 トルコ発の金融危機を覚悟すべきかもしれない。