2018年8月29日水曜日

何から何まで前代未聞 自民党総裁選の不気味さと異様さ <全>

 日刊ゲンダイが「何から何まで前代未聞 自民党総裁選の不気味さと異様さ」を特集しました。電子版には <1>  <4> に分けて27日付で一挙に掲載されました。
 但し <2> と <4> は残念ながら後段が非表示になっているため <2> については一部のみの掲示になっています。幸いに <4> については「阿修羅」に全文が載っていましたのでそれを転載します。
 
 異様な総裁選の概要が述べられています。
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 巻頭特集  
何から何まで前代未聞 自民党総裁選の不気味さと異様さ <1>
日刊ゲンダイ 2018年8月27日
 
「正直、公正」を争点に据えられた異常、それを撤回させた横暴、引き下がったヘタレ
「あと3年、自民党総裁、首相として日本の舵取りを担う決意だ」――。安倍首相は26日、訪問先の鹿児島県垂水市で記者のぶら下がり取材に応じ、9月の党総裁選(7日告示、20日投開票)への立候補を正式に表明した。総裁選は、石破茂元幹事長との一騎打ちとなる見込み。すでに党内では安倍陣営による石破の言論封じ込めや、支持がはっきりしない国会議員らに人事をチラつかせて支持を迫る前代未聞の選挙戦の様相を呈している。
 
 今回の総裁選は2012年来、6年ぶりだが、早くも安倍VS石破のバトルは始まっている。石破が出馬会見で掲げた「正直で公正な政治」というキャッチフレーズに対し、党内から「個人攻撃はヤメロ」という批判の声が広がっているのだ。
 石破としては、いまだに世論の不信感が強い「森友・加計問題」を意識し、一種の「アネクドート」(ロシアの政治的なジョーク、風刺)で安倍の政治姿勢を批判したのだろう。これに対して、石破支持を決めた参院竹下派から「個人的なことでの攻撃には非常に嫌悪感を覚える」「首相に対する個人攻撃は控えるべきだ」とケチがついたのだから驚きだ。
 そもそも、小学校の学級委員選挙のようなキャッチフレーズが総裁選の“争点”に据えられたこと自体、異常と言わざるを得ない上、別に石破は安倍を名指しして“口撃”したワケじゃない。それなのになぜ、個人攻撃につながるのか。
 
 政治評論家の小林吉弥氏はこう言う。
「石破さんは公党が目指すべき政治の在り方として『正直・公正』と、当たり前のことを言っただけ。個人攻撃という批判は的外れです。批判の理由は恐らく、総裁選で石破さんが『正直・公正』を口にするほど、国民のモリカケ不信感がくすぶり続け、来年の統一地方選、参院選にも影響が出かねないと考えているから。特に参院側がピリピリしているのもそのためだと思います」
 石破も石破で「個人攻撃じゃない」と突っぱねればいいのに、「(キャッチフレーズを)変えることがあるかも」なんてアッサリと白旗を揚げるそぶりを見せているからだらしない。おとなしく引き下がれば「ヘタレ」呼ばわりされて政治生命もオシマイになりかねない。
 
プーチン、習近平、エルドアン…「掟破り」の独裁者と安倍の共通項
 自民党総裁はもともと2期6年だったのに、昨年3月、安倍の意向を受け3期9年に変更された。この“掟破り”は、世界の名だたる「独裁者」の発想と酷似している。
 ロシアのプーチン大統領は「連続3選」を禁じる憲法の規定に従い、2期終了後の08年、「首相」に転身。自身に忠実なメドベージェフ現首相を大統領に据え、12年に大統領に返り咲いた。任期切れの24年には再度の「首相」転身か、3選を可能とするよう憲法を改正すると囁かれている。
 中国も今年3月の全国人民代表大会で承認された憲法改正で、「2期まで」とされた国家主席の任期規定を撤廃。習近平国家主席が永続的にトップに居座れるようになった。トルコでは昨年4月、大統領の権限拡大のための憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、賛成51%の僅差で承認された。現職のエルドアン大統領は司法にまで影響力を持ち、強固な権力を握るに至ったのだ。
「プーチン大統領に習国家主席、エルドアン大統領は任期延長や権限拡大を実現し、強権を振るっています。安倍さんはそんな彼らを羨望のまなざしで見ているのでしょう。もともと党則になかった総裁3選を可能にしたわけですから、総裁4選や『任期撤廃』だってルールを変えれば出来てしまう。最終目標は、トランプ大統領の子分で終わるのではなく、列強のリーダーの一角に名を連ねること。それは戦後レジームからの脱却にもなり得ます。安倍さんはそんな願望を持ち続けているのでしょう」(元経産官僚の古賀茂明氏)
 
 巻頭特集  
何から何まで前代未聞 自民党総裁選の不気味さと異様さ <2>
日刊ゲンダイ 2018年8月27日
 
現首相のくせに圧勝にシャカリキになるのはなぜなのか
「相手候補を壊滅させるくらいの圧勝しかない」。現時点で細田派(94人)や麻生派(59人)、岸田派(48人)、二階派(44人)などの主要派閥の支持を得ている安倍は国会議員票の7~8割を押さえたとされ、周辺議員の間では、こんな強気の発言がバンバン飛び交っているという。
(以下は有料記事のため非公開)
 
 巻頭特集 
何から何まで前代未聞 自民党総裁選の不気味さと異様さ <3>
日刊ゲンダイ 2018年8月27日
 
石破はどれだけ取れば、生き残れるのか、干されるのか。干されて離党が最善の道
 国会議員票で安倍が7~8割を押さえたため、石破の頼みの綱は地方票だ。党員の中にはモリカケ問題などでの安倍の不誠実な対応に違和感を抱いている人も少なくない。国会議員のように「雪崩を打って安倍」とはならない可能性が高い。
「今度の総裁選は、国会議員票405票、地方票405票、合計810票で争われます。首相は国会議員票で300票以上取るのは当然のこと、地方票でも3分の2以上の270~300票獲得が目標です。裏を返せば、石破さんが地方票で4割近く(150票前後)取れば、安倍首相は真っ青になるでしょう」(自民党関係者)
 
 安倍が地方議員を官邸や公邸に招いて接待攻勢をかけたり、地方組織に石破の集会を開かないようドーカツをかける中、それでも石破が地方票で4割に達すれば、「次」の芽も残る。だが、安倍が地方票でも7~8割取る圧勝になれば、石破は干されるどころか、政治生命まで潰されてしまいかねない。
 政治評論家の森田実氏はこう言う。
「石破さんは『正直』『公正』という政治家としての生き方の“本質”を問題提起して立ち上がった。戦いに敗れて干されるぐらいなら、自民党を飛び出し、野党のリーダーになって、国会を立て直す道を選ぶべきではないですか。日本の政治全体を考え、断固として行動すべきです。かつて加藤紘一元幹事長が、当時の森喜朗首相に対する野党の不信任案への賛成を断念し、結局、それを機に事実上失脚しました。石破さんには、あの二の舞いにならないで欲しい」
 石破は決断できるのか。
 
安倍が「やる」と言っていることは全部口だけ
 安倍は出馬表明で、見事なまでに空疎な言葉を並べた。
「日本は大きな歴史の転換点を迎える。今こそ日本のあすを切り開く時だ」「平成のその先の時代に向けて、新たな国づくりを進める先頭に立つ決意だ」「歴史の大きな転換点を迎える中にあって、どのような国づくりをしていくかが争点だ」などと仰々しいセリフを連発。鹿児島という場所柄、維新の英傑気取りだったが、中身はスカスカ。「国づくり」の具体策は何ひとつ言っていない
 
 これまでも「秋の臨時国会で憲法改正案提出を目指す」「私の手で拉致問題を解決する」と豪語してきたが、威勢のいいのは口先だけ。いずれも夢想の域を出ない。
「臨時国会の改憲案提出を連立を組む公明党が認めるわけはないし、拉致解決も常に“やるやる詐欺”で安倍首相は北朝鮮に全く相手にされていません。この時期に『改憲』と『拉致』を強調するのは、自分の支持基盤である右派の党員へのアピールに過ぎない。決意だけが空回りし、具体性に欠けた言葉は、政権継続のみが自己目的化していることの表れ。あと3年、ひたすら権力の座にしがみつきたいだけなのです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 安倍が「やる」と言っていることは全てが絵空事。権力亡者の素顔を隠すための煙幕である
 
何から何まで前代未聞 自民党総裁選の不気味さと異様さ <4>
日刊ゲンダイ 2018年8月27日
後段 阿修羅文字起こし より転載)
 
全国民が唖然としたアベ様自民党の異様さと今後の政局 
 安倍政権の支持率は4割だ。しかも不支持率の方が高い。それなのに、事実上の首相を決める自民党総裁選で、自民党国会議員の7、8割が早々に安倍支持に流れる光景は、世論と乖離し過ぎて異様だ。「アベ様に歯向かう者は許さない」とばかりに出馬を断念させたり、政策論争さえ封印しようとする自民党には、全国民が唖然としている。たとえ安倍が3選したとしても、世論の支持は下がることはあれ、戻ることはないだろう。
 来年は12年に一度やってくる統一地方選と参院選が重なる選挙イヤー。だから参院竹下派は安倍ではなく石破支持を決めたのだ。つまり、来年の選挙で国民が安倍政権にお灸を据えるだろうことを見越した対応である。
 
「国会議員の大半が安倍支持なのに、実は同じくその大半が、『安倍首相のままで来年の参院選はもつのか』という不安を抱いている。自民党はおかしな政党です。霞が関は公文書を改ざんし、障害者雇用の水増しまで出てきた。それでも安倍政権は何もなかったかのように、詭弁の政治を続けるのでしょうか。国民の怒りは参院選に向かうことになり、自民党は痛い目に遭うでしょう」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
 青木幹雄元参院議員会長、小泉純一郎元首相、古賀誠元幹事長、山崎拓元副総裁らOBが、安倍3選後の政局に何らかの仕掛けを考えているという話もある。安倍は参院選を乗り越えられるのか。
 本人が望んでも、永久政権どころか3年すらもたないんじゃないか。
 
恐らく前代未聞の腐臭を放つ組閣名簿の下馬評 
 総裁選はまだ告示もされていないのに、早くも自民党内は「人事話」で盛り上がっているというからどうかしている。安倍3選を見越して囁かれる閣僚人事案からは、露骨な論功行賞と“お友達”優遇がにじみ出ている。
「いち早く安倍3選支持を明確にした二階幹事長と、無派閥議員を取りまとめる菅官房長官は留任が濃厚です。財務省の決裁文書改ざんで批判の矢面に立った麻生財務相も留任か、世論の手前、閣内に残すのが難しければ、党副総裁との観測が流れている。一方、支持表明が遅れた岸田派は、現在の閣僚4ポストのうち複数が召し上げられるとみられています」(自民党関係者)
 
 さらに〈官房長官・下村博文、経産大臣・甘利明、総務大臣・小渕優子〉といった仰天の閣僚名簿案まで流れているのだ。利害関係者から50万円を受け取り、大臣室でのツーショット写真まで明るみに出た甘利に、文科相時代に“政治とカネ”でヤリ玉に挙がった下村と、スキャンダルで表舞台を去った人物の名前が挙がるのは、安倍がお友達の“復帰”を熱望しているからだ。甘利は早速27日朝、首相官邸を訪れ、政策提言書を提出する猛アピールだ。
「3選直後は、レームダック化を避けるため、総裁選での論功行賞に配慮したおとなしめの改造人事を行うかもしれません。ただ、安倍さんは最終的に『任期撤廃』まで狙っている可能性がある。恫喝と懐柔を使い分け、人事で求心力を高め、党内基盤が固まったところで、“お友達”登用に打って出ることも考えられる。結局、これまでの5年8カ月と変わらず、好き勝手な人事で1強体制を強固にしようとするのだと思います」(古賀茂明氏=前出)
 全てがご都合主義の閣僚人事。安倍自民の視線の先に、国民は不在だ。
 
野党はこのよにもバカげた総裁選を利用しなければ大バカだ 
 ポストと自己保身のため、一斉にアベ様に忠誠を誓う自民党議員。やる前から結果が見えている世にもバカげた総裁選に、心ある有権者はアキれ、お灸を据えたくてウズウズし始めている。
 野党にとっては一大チャンス到来なのに、反安倍票や自民党批判票の受け皿をいまだつくり切れていないのは情けない限りである。
 立憲民主党は現状の野党第1党の地位の維持にきゅうきゅうとしているように見えるし、国民民主党は国民の誰も関心を示していない党代表選でシャカリキ。立憲と国民の間には、昨秋の衆院選で分裂した際のしこりが依然残ってもいる。共産党とは共闘できないという、選挙を考えれば非現実的な主張を続ける野党議員もいまだ少なくない。
 これでは自公は高笑いである。
「自民党総裁選の投票日の10日後が、沖縄県知事選の投票日です。オール野党で戦う態勢をつくって、辺野古新基地建設に反対した翁長知事の後継者を全力で支援して、勝ちにいくべきです。安倍首相が3選したとしても、沖縄で自公候補が負ければ、政権にとっては大打撃となります」(角谷浩一氏=前出)
 
 そして来年の参院選が「天王山」だ。2007年の参院選で当時の民主党が勝利し、衆参でねじれを起こしたことが、09年の政権交代につながった。野党がその気になれば、同じことが再現できる。
「来年の参院選で自公が過半数を割るようなことがあれば、07年同様、安倍首相は退陣に追い込まれる可能性がある。野党が連携して候補者調整すれば、大勝できるのです。来年の参院選は政治の転換点になるのではないか」(森田実氏=前出)
 この一大チャンスを利用できなければ野党は大バカだ。政権を取りにいく気があるのかどうか、野党の本気度が問われている。