2020年10月7日水曜日

菅首相は会見から徹底逃亡…“閉鎖型インタビュー”の異常(日刊ゲンダイ)

  6日付の朝日新聞の記事によれば、日本学術会議の交代会員の任命に当たり、前回2017年の時に、安倍官邸から定員枠よりも多い候補を示すように言われ、会議が110人の候補者を示し、官邸からは意見は出されたものの最終的に会議が希望する105人に決まったという経過があったということです。安倍官邸がその時点から学術会議の人事に介入する道を探っていたことが分かります。会議側が最初から官邸の要望を受け付けないというやり方はあったかと思いますが、その程度であれば、まずは応じて対応するという穏当な道は一概に否定できないものに思われます。

 今回の6人の任命拒否は、日本学術会議法改定当時、国会で確認されてきた一連の経過を無視したもので、決してそれと同列には扱えません。菅官邸はこの問題への対応として、3人の記者によるグループインタビューという珍妙なものを考案しました。別室で音声だけを聞かされたフリー記者によれば、そこでは記者たちから15の質問が出され、菅首相は原稿を読み上げるかのような口調で答えたということです。周到に準備された回答を行ったということです。
 学術会議人事介入の問題について質問したのは北海道新聞だけで、回答に納得できないのでもう一度糾したところ全く同じ回答が繰り返されたということです。菅首相は、学術会議への人事介入が「学問の自由(への侵害の問題)と全く無関係」だと言い切り「どう考えてもそうでないでしょうか」とダメを押しました。人事の介入こそが学問の自由への侵害であることを知らないとは、「学問の自由」を分かっていない証拠です。
 6人の任命を拒否した理由を明らかにしないことにはこの件は解決しないのですが、官邸に取って具合の悪い人たちを除外したのである以上、その説明はできないでしょう。それを説明する会見を避け続けるならば、逆に任命拒否を撤回しない限りいまの窮地から脱出できる道はありません。
 日刊ゲンダイが「菅首相は会見から徹底逃亡…~ 」とする記事を出しました。
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菅首相は会見から徹底逃亡…“閉鎖型インタビュー”の異常
                           日刊ゲンダイ 2020/10/06
 日本学術会議の任命問題で、猛批判にさらされている菅首相。先週末、番記者と開催した「パンケーキ懇談会」に続き、5日はメディアを代表3社に絞った異例の“閉鎖型インタビュー”を行った。記者が自由に質問する記者会見からは徹底的に逃げるつもりらしい。
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 官邸は5日午前、突然、内閣記者会(官邸記者クラブ)所属のメディアに「菅総理大臣へのグループインタビュー」を同日夕に開催すると通知。記者クラブに常駐する大手19社は優先的に出席が認められ、常駐以外に割り当てられた10席は、日刊ゲンダイを含む複数社による抽選となった。日刊ゲンダイはあみだくじによる抽選に外れたが、この「グループインタビュー」の中身がヒドかった。インタビューとは名ばかり、別室で音声を聞かされただけだった。
 官邸報道室によると、実際にインタビューしたのは読売、日経、北海道新聞の3社だけ。29社の記者たちは、官邸で行われたインタビューの音声を、別の会見室で聞くことしかできなかった。しかも、インタビュー時間はたったの30分間。写真撮影を許可されたのもインタビューした3社のみ。動画撮影はクラブ加盟の2社だけに許された。前代未聞、極めて閉鎖的なインタビューだったのだ。
 会見室に入ったフリーランスライターの畠山理仁氏が、現場の様子をこう話す。
「私たちが入れられた会見室では、ただただ質疑応答の音声が流されるだけでした。着席した記者は皆、ひたすら黙ってメモを取り、録音するのみ。菅首相は口ごもることなく計15問の質問に回答。予定時間より2分短い28分程度でインタビューは終了しました。流された音声を聞いている限りでは、菅首相は事前に用意された想定問答を読み上げているような印象を受けました。北海道新聞の記者が学術会議の問題について、2度にわたって質問していましたが、菅首相は判で押したような回答を繰り返していました」

官邸報道室は次の会見予定「分からない」
 インタビューでは、菅首相は学術会議の問題について「年間10億円の予算を使って活動している」「会員の立場は公務員」などと強調し、任命拒否を正当化。拒否の理由自体を説明することはなかった。
 しかし、3社しか質問できず、多くの記者は音声しか聞けないのは、どう考えても異常だ。なぜ、通常の記者会見を開かないのか。堂々と全記者から質問を受ければいいではないか。官邸報道室に、今後の会見予定について聞いたが、「分からない」と話すだけだった。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)は言う。
「今回のような対応は過去に聞いたことがありません。安倍政権ですらそのようなことはしなかった。こんな異常な対応をするのは、会見で多くの記者と対峙できないからでしょう。総裁選で明らかになりましたが、菅首相は淡々と原稿を読むタイプ。質問を畳みかけられて、言質を取られることを恐れているに違いありません。そもそも、日本学術会議の推薦者を内閣は拒否できないというのが、過去の国会答弁で明らかになっている。拒否した理由を説明できないから、会見も開けないというわけです」
 メディアはオフレコ懇談会やグループインタビューに応じている場合じゃない。一致団結して記者会見を求めるべきだ。