2020年10月30日金曜日

【学術会議】山極前会長「2年前も人事に難色 理由示さず 恐ろしい」

  日本学術会議会員候補6人が任命されなかったことを巡って、山極壽一前会長が初めて取材に応じました。

 山極氏によれば18年にも、定年によって会員の補充が必要になった時に、学術会議側が検討していた候補の名前を伝えたところ、官邸から難色が示されました。この時も理由が示されなかったので、山極前会長「理由を教えて欲しい、官邸に伺うからと事務局を通じて杉田官房副長官に何度も伝えたものの回答は来る必要はない。理由も言うつもりはないとそれ一辺倒」だったので、最終的には欠員とせざるを得なかったということです。
 今回の任命拒否についても直前の9月28日の晩に内示があり大変驚いた。すぐに菅首相に宛てて理由を尋ねたものの、まったく回答が得られなかった」とのことです理由が示されなければ議論も出来ないわけで 恐ろしい対応というしかありません。
 また18年に官邸が作った「内閣総理大臣に、会議の推薦通りに任命すべき義務があるとまでは言えない 見解書も「これまで説明は受けておらず、文書の存在すら知らされていなかった」ということです。
 山極前会長は「国が人事にまで介入してくると、大学をはじめとする学術界全体の自立性が大きく損なわれかねない」と強い危機感を示しました。
 立法時(あるいは改定時)に立法府で十分に詰めた法律の解釈を、後の政府が勝手に変えていい筈がありません。野党から総批判されると今度は「解釈変更ではない」と開き直るわけです。これでは論理的な議論は出来ません。安倍内閣から菅内閣に変わって少しはマシになるかと思われたのですが、デタラメさと横暴さは全く変わっていません。

 29日参議院本会議で立民党立憲民主党の福山幹事長が、任命拒否について、かつて中曽根首相が「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と答弁したことなどを踏まえ、「それを否定できる明確な根拠を聞かせてほしい」と糾したのに対して、菅首相は「憲法第15条第1項『公務員の選定は、国民固有の権利』が根拠だ(要旨)」と答弁しました。
 そんなデタラメ答弁で納得する人は誰もいません。一体どういう論理でそうなるのでしょうか。満足に論理的思考が出来ない人間が権勢欲だけで横暴を極めるのでは、もはや何の光明もありません。NHKの2つの記事を紹介します。
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【学術会議】山極前会長「2年前も難色 理由示さず恐ろしい」
                     NHK NEWS WEB 2020年10月29日
日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかったことを巡って、推薦の責任者だった山極壽一前会長が初めて取材に応じました。今回の件の2年前にも人事をめぐって官邸から難色が示され、理由について「言うつもりはない」といった回答しかなかったことを明らかにするなどし、「理由を示さないことが恐ろしく、学術界の自立性が大きく損なわれかねない」と強い危機感を示しました。
日本学術会議が推薦した会員候補6人が任命されなかったことを受けて、推薦の責任者で、先月まで日本学術会議の会長を務めた山極壽一さんが初めてこの件についてインタビュー取材に応じました。
この中では、今回の件よりも2年前、定年によって会員の補充が必要になった時に、学術会議側が検討していた候補の名前を伝えたところ、官邸から難色が示され、この時も理由が示されなかったということで、当時の経緯を詳細に語りました。

山極前会長は、「学術会議で議論をし直す場合は理由が必要なので、『理由を教えて下さい、そのために官邸に出向きます』と、杉田官房副長官に事務局を通じて何度も申し上げたが、来る必要はない。理由も言うつもりはない』とそれ一辺倒なので非常に困りました」と語り、最終的には欠員とせざるを得なかった状況を語りました。
そして、今回の6人が任命されなかったことについては、任期がはじまる今月1日の直前に知らされたということで、「9月28日の晩に内閣府から内示があり、6人が任命されないことを知り大変驚いた。推薦したなかに官邸が渋っている人たちがいるとうわさはあったが、文書や電話での正式な連絡は一度もなかったすぐに菅総理大臣に宛てて理由を尋ねたものの、まったく回答が得られなかった。理由があれば議論できるが、理由を示さないことが恐ろしいところだ。まずは理由を説明していただきたい」と話しました。

また、会員の任命をめぐって、今月開かれた野党の会合で、政府はおととしまとめた文書を提出し、その中で「内閣総理大臣に、会議の推薦通りに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられる」などとする見解を示していて、この文書について山極前会長は「これまで説明は受けておらず、文書の存在すら知らされていなかった」と話しています。
その上で山極前会長は「さまざまなところで任命権者が理由なく人事を認めないことがまかり通るようにならないか心配している。国が人事にまで介入してくると、大学をはじめとする学術界全体の自立性が大きく損なわれかねない」と強い危機感を示していました。

坂井官房副長官「答えは差し控える」
日本学術会議の山極壽一前会長が、NHKの取材に対し、2年前の会員候補の人事で官邸から難色が示され、理由が示されなかったなどと話していることについて、坂井官房副長官は、記者会見で、「人事に関することなので、お答えは差し控えさせていただきたい」と述べました。


学術会議任命「法に沿って行ったもの」菅首相 参院本会議
                     NHK NEWS WEB 2020年10月29日
国会では、参議院でも菅総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が始まり、菅総理大臣は、「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことについて、法律に沿って行ったものであり、解釈を変更したものではないという考えを重ねて示しました。
29日は、参議院本会議で、立憲民主党と自民党が質問しました。
立憲民主党の福山幹事長は、「日本学術会議」の会員候補6人が任命されなかったことについて、かつて中曽根元総理大臣が、国会で「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と答弁したことなどを踏まえ、「元総理大臣のことばを凌駕(りょうがする明確な根拠を聞かせてほしい。解釈を変更したのか」とただしました。
菅総理大臣は「元総理大臣の発言、答弁との関係だが、憲法第15条第1項は、『公務員の選定は、国民固有の権利』と規定しており、この規定に基づき、日本学術会議法では、会員を総理大臣が任命することとされている。今回の任命も、日本学術会議法に沿って行ったもので、法の解釈変更ではない旨は、国会において内閣法制局からも答弁しているとおりだ」と述べました。 (後 略)

立民 福山幹事長「説明にならない答弁」
立憲民主党の福山幹事長は、記者団に対し「日本学術会議の答弁は、いよいよ迷走し始めたという感じだ。全く説明にならない答弁を繰り返している。また、新型コロナウイルスに関する、いろいろな支援策の延長についても具体的に聞いたが、明確な答えは全くなく、現場の悲鳴にも似た声が、官邸には全く届いていないのではないか。非常に残念に思った」と述べました。