2020年10月11日日曜日

11- 学術会議「任命拒否」問題 論点は? ゼロから解説

 全国新聞ネットに「ゼロから解説、学術会議「任命拒否」問題 論点は?」とする記事が載りましたので紹介します。
 追記) 最初のところで「国費から毎年約10億円が支出」となっていますが、このうち人件費は6億円余りでその大半は専属の国会公務員50人の給与等です。学術会議会員の日当分は4000万円余、1人当たり20万円ほどなので予算がなくなれば手弁当で動くしかないといわれています。政府は金が掛かっているから口も出すと言いたいようですが、そもそもが税金なのであり、別に首相のポケットマネーというわけではありません。
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ゼロから解説、学術会議「任命拒否」問題 論点は? 安倍政権時から介入も
                     共同通信 全国新聞ネット 2020/10/10
 菅義偉首相が、日本学術会議を巡り、政府に批判的とされる新会員候補6人の任命を拒んだことが波紋を広げている。学者らは「学問の自由への人事介入だ」と激しく反発。政府は拒否した理由も語らない。安倍政権時代から、官邸側が同会議の会員選考に干渉してきた実態も徐々に分かってきた。「強権政治」の表れなのか。論点をまとめた。(共同通信=松本鉄兵)

■日本学術会議
 Q 学術会議とはどんな組織か。
 A 敗戦後の1949年、科学を行政や産業、国民生活に反映させることを目的に設立された。科学者が太平洋戦争に協力したり、動員されたりした反省を出発点にしている。
 国の特別機関ではあるものの、政府からは独立し、政治とは一定の距離を保ってきた。政府の諮問に答えるだけでなく、中立的立場から政府、社会に助言してきた。
 研究費などを通じた政府の締め付けが年々強まり、かつてのような影響力は衰えているものの、科学者の代表機関としての存在感は大きい。2017年には、軍事応用が可能な基礎研究に助成する防衛省の制度を「政府介入が著しい」と痛烈に批判し、注目を集めた。
 Q 会員数は。
  210人の会員と、約2千人の連携会員がいる。「人文・社会科学」「生命科学」「理学・工学」の3部会からなる。会員になることは名誉とされ、特別職の国家公務員として手当が支払われる。国費から毎年約10億円が支出されている。
 Q どのように会員を選ぶのか。
 A 日本学術会議法は、優れた研究や業績がある科学者の中から同会議が候補者を選考し、首相に推薦。首相が任命すると規定している。任期は6年で、3年ごとに半数(105人)を任命する。定年は70歳。
 現会長は、15年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章・東京大教授だ。
■任命拒否
 Q 今回任命を拒否されたのはどんな人たちなのか。
  松宮孝明・立命館大教授(刑事法)や、小沢隆一・東京慈恵医大教授(憲法)ら6人だ。連携会員として貢献してきた人たちで、会員になるのは順当とみられていた。人文・社会科学分野に集中しているのが特徴だ。松宮氏は17年、共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法について「戦後最悪の治安立法となる」と指摘。小沢氏も15年、国会で安全保障関連法を廃案にするよう訴えていた。
 菅首相は10月1日、同会議が提出した105人の推薦名簿のうち、6人を除く99人を新たな会員として任命した。
 Q 安倍前政権の施策に反対したことなどが影響したのか。
  菅首相は「一切関係ない」と否定している。
 Q ではなぜ任命しなかったのか。
  菅首相は「個別の人事に関することはコメントを控えたい」と述べ、理由を明かしていない。政府に異を唱える人物を排除したとの疑念がくすぶっている。
■浮かび上がった前政権時からの介入
 Q 過去に任命を拒否した例はあるか。
  学術会議は前例がないと説明している。政府は1983年、形だけの推薦制であり「推薦していただいた者は拒否しない」と国会で明確に答弁している。選考方法が、学術団体を通じた推薦から、現行の同会議の会員による推薦に変わった2004年以降もルールは守られてきたと言う。
 ところが実際は、官邸が安倍前政権時から継続的に、正式任命前の選考過程に深く関与していたことが分かってきた。
 Q どういうことか。
  同会議が2018年、定年退職した会員の補充として後任を推薦しようとした際、官邸が同意せず、補充できなかった。16年にも官邸が選考段階で難色を示し、欠員が生じた。
 定期交代があった17年には、官邸が105人の定員を上回る候補者のリストを示すよう求めた。同会議の当時の会長は5人程度多めにリストアップしたという。同会議は、今回も同様の要請を受けたが、応じなかった。
■1983年答弁との矛盾
 Q 「推薦者は拒否しない」との1983年の国会答弁と矛盾しないか。
  そう感じても不思議ではない。
 野党の追及を受けた政府は10月6日、「推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない」とする2018年11月作成の内部文書を出してきた。「首相は人事を通じ、一定の監督権を行使できる」とも記されていた。この文書は非公表だった。
 Q 大事な変更を秘密にしていたのか。 
  政府は、公表しなかった理由について、過去の国会答弁の解釈を変更しておらず、齟齬(そご)がないためと説明している。
 首相には「元々拒否権があった」との立場を取っている訳だ。ただ文書と答弁との整合性は今後、問われるべきだろう。
 首相は報道各社のインタビューで「任命する責任は首相にある。推薦された方をそのまま任命する前例を踏襲していいのかを考えた」と語っている。
 Q 政府内で、学術会議を行政改革の対象として検証する案が出ているのか。
 A 河野太郎行革担当相が示し、菅首相も9日、追認する考えを示したのだ。反発を強める同会議への「圧力」とも受け取れる。
■高まる抗議の声
 Q どんな影響が考えられるか。
  学問に欠かせない自由な議論を避ける風潮が生まれかねないかが心配だ。
 Q 抗議の声が上がっているようだ。
  学術会議は、首相に対して、6人の任命を拒否した理由の説明と速やかな任命を求める要望書を提出した。教育系で国内最大規模の日本教育学会は「会議の独立性を脅かし、憲法の保障する『学問の自由』を侵害する重大な事態だ」とする緊急声明を出した。他にもさまざまな学会や大学が強い危機感を表明している。
 Q 野党の対応は。

 A 共産党の穀田恵二国対委員長は「強権政治の発動だ」と批判。立憲民主党の原口一博副代表も「学問の発展によって恩恵を受ける人たちへの挑戦だ」と述べ、政府を追及している。