2020年10月21日水曜日

露呈した菅政権の正体 下落へ一直線の内閣支持率(日刊ゲンダイ)

  政権発足後1ヶ月が経たないうちに内閣支持率は53~61%に大幅に下落しました。

 発足後に早々に起きた出来事は、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を菅首相が拒否したことで、それは学術会議の人事には政府は介入しないという法律(日本学術会議法)を無視したものでした。もしも政府側に正当な理由があるのであれば丁寧に説明する必要がありますが、菅首相は「総合的、俯瞰的な」観点からそうしたと抽象的に述べるだけでした。
 学術会議に介入することは菅首相のかねてからの狙いでした。ただ思っていたより世論の反応が批判的であったことで最初は迷ったようですが、結局それで押し切る方針を決めたと伝えられています。しかしこの問題は、軌道を修正するのは沽券にかかわるというような話ではなく、「政治と学問」というより本質的な問題です。そういう認識を持っていないのであれば、国のトップとしてあまりにも問題です。

 それだけでなく、新内閣で始められた「Go Toトラベル」や「Go Toイート」も一向にスッキリしません。
 政府と強いつながりを持つ大手企業だけがいい思いをして、国民の税金が本当に救済されるべきところに使われていません。「Go Toイート」では、千円の食事で付与された1000ポイントで次回もの食事を予約すればまた1000ポイントがもらえるという無限ループ」が可能な仕組みになっています。要するに「コロナ対策」の名目で巨額の税金が不法に消費されているということです。

 政権の正体が早くも露呈し 目玉とされた政策の実態は滅茶苦茶です。これでは政権発足時の内閣支持率のご祝儀相場が維持できる筈はなく、支持率は下落の一途をたどるしかありません。日刊ゲンダイが取り上げました。
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露呈した正体、目玉の空振り 今がピークの内閣支持率 おそらく下落へ一直線
                        日刊ゲンダイ 2020年10月19日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 9月16日の就任から1カ月が経ったが、いまだ国会で所信表明も行っていない菅首相が18日、初の外遊に出かけた。
 夫人を伴って政府専用機で羽田を発ち、ベトナム、インドネシア両国を訪問。19日、ハノイでベトナムのフック首相、20日、ジャカルタでインドネシアのジョコ大統領との首脳会談に臨む。
「これは所信表明より優先されるような外遊なのでしょうか。この政権の外交政策もビジョンもハッキリしないのに、このコロナ禍の最中になぜ行く必要があるのかサッパリ分かりません。国会軽視も前政権から継承したということかもしれませんが、発足時の高い支持率に浮かれて好き勝手やっていると、すぐに支持を失うかもしれない。安倍長期政権に飽きていた国民が、次が誰でもいいからとにかく首相が代わって欲しいと願い、変化に期待して菅政権を支持した可能性が高いからです。その証拠に、所信表明も行わず、国会論戦が始まってもいないのに、早くも支持率が落ち始めている。逆に言えば、何もしていないから支持率が高かったわけで、今後は下落の一途をたどってもおかしくはありません」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
 報道陣に向かって笑顔で手を振り、専用機に乗り込む菅の表情は高揚感にあふれているように見えた。今回は夫人のファーストレディー外交デビューでもあったが、手をつないでタラップを上り、2人で手を振る前首相夫妻と違って、首相の脇でお辞儀をする夫人のつつましやかな態度は印象的だった。傲慢さは身を滅ぼすと戒めているようにも見えた。
 各種報道によれば、菅は世論調査のご祝儀相場に上機嫌だったという。総裁選の最中から、ダークホースが一躍本命に躍り出たことに「当然でしょ」と豪語していたとされる。
 だが、それもしょせんは邯鄲の夢か。

第一次安倍政権を彷彿とさせる
 共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、菅内閣の支持率は前回9月の調査と比べ、5・9ポイント減の60・5%だった。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題でも、菅の説明が「不十分だ」との回答は72・7%に上った。
 朝日新聞の調査では内閣支持率が前回(65%)から12ポイント減の53%に下がった。
 政権寄りとされるNNNと読売新聞の調査でも、支持率は7ポイント下がって67%だった。
 来週からようやく臨時国会が始まるが、日本学術会議の任命問題には多くの国民が説明不足だと感じている。「総合的、俯瞰的」に判断したとエラソーに言いながら、推薦名簿を見ていないと修正し、説明に齟齬が生じると学術会議の組織の問題にスリ替え、行革の対象としてやり玉に挙げる支離滅裂。学術会議の梶田会長と会談したものの何の進展もなく、収拾不能のまま国会に臨むことになる。
 答弁能力を不安視する声は自民党内にもあり、国会論戦で馬脚を現せば、ますます支持率は下落していくだろう。
 漠然とした期待に応えられなかった安倍第1次政権もそうだった。発足直後は65%前後と高い支持を得ていたが、能力不足や閣僚の不祥事、年金問題などで毎月のように支持率を下げ続け、回復基調になることがないまま、約1年で政権ブン投げに追い込まれた。周囲をオトモダチで固め、トップに上り詰めた高揚感だけで政権運営に乗り出した甘さは、今の菅政権にダブる。

“やってる感”だけでどこまで引っ張れるか
学術会議の問題では、人事を振りかざして強権を発動する危険な本性があらわになった。叩き上げの『パンケーキおじさん』という国民受けを狙ったイメージ戦略は早くも崩れ、就任1カ月で地金が出た印象です。そもそも安倍長期政権の官房長官として睨みを利かせ、汚れ仕事を一手にやっていた人ですから、そういう人が表舞台に出てきて傍若無人に振る舞うことには空恐ろしさを感じる。第2次安倍政権は最低最悪と思っていましたが、下には下があるということを思い知らされました。携帯料金値下げや不妊治療の保険適用など、実利実益を目の前にぶら下げれば政権を維持できると国民をナメているのでしょうが、安倍政権から継承した“やってる感”だけでどこまで引っ張れるのか。目玉政策の『Go To キャンペーン』も混乱続きで、勝ち組だけがいい思いをする仕組みだという認識が広がっている。大マスコミは上から目線の懐柔策でコントロールできても、国会や世論はそんなに甘くありません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
 新型コロナウイルス感染拡大に目をつぶって経済を優先する「Go Toトラベル」には当初から国民の不安が高かったが、スタート直前に東京を除外することになり、キャンセル発生の対応で混乱を招いた。その後も高級旅館に予約が集中して金持ち優遇の批判が起きたり、割引料金の上限がひっそり引き下げられていたりと制度設計の甘さが次々と露呈している。
 大体、コロナ禍で生活が困窮している国民は、優雅に旅行なんてしていられる状況ではないのだ。職を失い、瀬戸際に立たされている人もいる。満足に食事をとれない子どももいる。そういう困窮の実情が、菅に見えているのだろうか。
 輪をかけてひどいのが「Go Toイート」で、予約サイトを介してポイント付与の方式は、ネット活用に慣れていない高齢者や、登録していない個人経営の飲食店にはほとんど恩恵がない。サイト登録が多い都会や大手チェーン店、スマホ慣れした若者が予算を消費していくだけで、本当に困っている人に支援が届かない欠陥制度と言うほかない。
 1000円の食事で付与された1000ポイントで次回も1000円ディナーを予約すれば、また1000ポイントがもらえるという“無限ループ”の問題もある。

値下げ、無料化は選挙目的のバラマキ
 家電量販店でも航空会社のマイレージでも、普通はポイントを利用して支払った分にはポイントが加算されない。ところが、なぜか「Go To イート」は何度でもポイントがつく。予約のたびに手数料が入る仲介サイトはウハウハだろうが、これは税金の使い方として適切なのか。
 もっとも、西村経済再生相が「毎日毎日このポイントを使っていけば夕食代はずっと浮くわけですし」と“無限ループ”の利用を勧めていたくらいだから、何をかいわんやだ。コロナ禍で政府事業を請け負った電通やパソナ、JTBなどと同様、経済対策を名目にした大手企業のピンハネ中抜きビジネスに公金が流れる一方なのである。
「社会的弱者に目を配り、救済するのが政治の役割のはずなのに、政権に近い企業や関係者ばかりがおいしい思いをする税金の還流の仕方があまりに偏っています。携帯料金の値下げや不妊治療の保険適用にしても、いつからスタートするのか分からないし、値下げや無料化で喜ぶ人がいるからやるというだけで、どういう社会にしたいのかという理念がまったく見えない。だから、1年以内に必ず行われる総選挙向けのバラマキとしか思われないのです」(角谷浩一氏=前出)  
 現世利益で票を買えると有権者をバカにしている政権だから、民間企業に圧力をかけて目先の携帯料金の値下げに力んでいるのだろうが、長い目で見た場合に5G、6Gの設備投資で海外に後れを取れば国益を損じかねない。すべてが空回りで、いつまで高支持率をキープしていられるか。
「直近の世論調査を見ると、早くもメッキが剥げてきた感がある。総理は細かい政策で実績を上げ、来年の任期満了近くの総選挙で勝利して長期政権という展望を描いているのでしょうが、来年になれば支持率がどこまで下がっているか分からない。早いうちに選挙をしてしまった方がいいという声は、党内で日増しに高まっています」(自民党中堅議員)
 政権維持のためなら、大義がなくとも解散に踏み切る。菅はそういう男だ。理念も国家観もなく、権力を握ることだけが目的だからだ。
 政権発足直後の解散がなかったことで、選挙が遠のいたと野党はすっかり緩んでいるが、支持率が下落へ一直線なら、いつ何があってもおかしくない。