2020年10月4日日曜日

記者たちが菅首相とオフレコ懇談会 幹事社から開催隠蔽のメール

  菅首相が、日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち新安保法制や共謀罪法などに反対した6人を任命しなかったのは、政治が学問の自由に介入する暴挙です。野党は官僚などからのヒアリングを続け、〈#日本学術会議への人事介入に抗議する〉とハッシュタグツイートは25万を超えました。

 これについて菅首相は記者団の問いかけに対し「法に基づいて適切に対応した結果」とただ一述べただけということです。これはいわゆる「その指摘は当たりません」の菅語法と同じもので何の説明にもなっていません。それどころか任命の拒否は、日本学術会議法改正に当たっての趣旨説明にも、その際の付帯決議にも明確に反していて、決して「法に基づいて」といえるようなものではありません。首相になった以上、官房長官時代の様に「その指摘は当たらない」「全く問題ない」というような無意味・無内容の説明では済まれさないことを菅氏は自覚すべきです。

 そんな中3日朝菅首相と総理番記者による朝食付き「完全オフレコ懇談会」1回目が原宿で行われました(記者総勢60人以上を2回に分け、2回目は10日の予定)。参加を断ったのは朝日東京京都新聞の3だったそうです。
 朝日新聞はオフレコ懇談会を欠席するに当たり、「首相側懇談ではなく記者会見などできちんと説明してほしい」との声明を出しました。極めて当然の主張ですそもそも海外には「記者クラブ」そのものが存在しません。当然、メディアの幹部が定期的に首相と会食をするという風習?もありません。メディアと政権との馴れ合いを生む「記者クラブ」や定期的な会食やオフレコ懇談はこれを機に廃止すべきです。
 LITERAが取り上げました。

 3日、首相が新会員候補者6人の任命を拒否した件で研究者や市民ら300人が首相官邸前で理由の説明や撤回を求める抗議集会を開き、「学術に携わっていない政府が推薦を覆すのは不当」「日本の民主主義に関わる問題だ」と批判しました(沖縄タイムス)。

 またオフレコ懇談会を報じた田中龍作ジャーナルによれば、著述家の菅野完氏が、菅首相による学術会議への人事介入に抗議して、2日午後7時から国会記者会館前でハンストに入り、「言論人と学者がちゃんと戦い始めるまで、座り込みを続ける」と語っているということです。
 3つの記事を紹介します。
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日本学術会議問題で非難も菅首相とマスコミが「オフレコ懇談会」強行してパンケーキ! 幹事社から「オフ懇開催の隠蔽」メール
                             LITERA 2020.10.03
 本サイトがいち早く報じた菅首相と総理番記者による朝食付き「完全オフレコ懇談会」の開催(https://lite-ra.com/2020/09/post-5657.html)。結局、きょう3日朝7時30分から予定通り開催された。しかも、このオフ懇が開かれたのは「Eggs’n Things原宿店」。
 エッグシングスといえば、前参院議員でタリーズコーヒージャパンの創業者の松田公太氏が代表を務めるカジュアルレストランで、菅首相の好物パンケーキが有名なお店だ。
 周知のように、いま、菅首相をめぐっては「学問の自由」を踏みにじる日本学術会議の人事介入に大きな非難が巻き起こっている。〈#日本学術会議への人事介入に抗議する〉というハッシュタグは20万ツイートを超え、官邸前では数百人規模のデモも行われた。
 ところが、菅首相は昨日2日、記者団の問いかけに対し「法に基づいて適切に対応した結果」と言っただけで、なんの説明もしていない。記者会見の開催の要求にも応じていない。ところが、それでいて、このオフ懇だけは強行し、マスコミ各社の総理番記者たちとなかよくパンケーキをほおばったのである。
 安倍政権時代と全く変わらない国民を舐めきった姿勢には言葉を失うが、しかしもっと暗澹とさせられるのは、そのオフ懇に参加したマスコミだ。
 このオフ懇は本サイトが報道して以降、ネットで批判が広がっていたため、さすがにかなりの社が参加を拒否するのではないかと見られていたが、結局、現時点で拒否したことがわかっているのは朝日新聞と東京新聞、京都新聞の3社のみ。
 ところが、ほとんどの社は、日本学術会議問題の追及もせず、記者会見の早期開催の要求もせず、朝食付き完全オフ懇に馳せ参じて、嬉々としていっしょにパンケーキを頬張ったのである。
 いや、それどころか、マスコミは率先して情報隠蔽に加担していた。オフ懇の窓口である内閣記者会の幹事社は現在、NHKと西日本新聞だが、3日ほど前、その幹事社から以下のような内容のメールが、各社の総理番記者に届いたという。
〈ご報告です。 外部メディアから幹事社あてに、「総理と番記者の懇談が開かれるが事実か」と問い合わせがありました。幹事社で検討の上、「取材の過程にかかわることなので、懇談が開かれるかどうかについてはお答えできません」と回答することにしました。オフレコ取材である以上、外部に伝えるのは適当でないと考えるからです。
懇談ですが、会費制です。出席者で均等に折半していることを総理室で確認しています。一人2千円以内で検討しているとのことです。〉
 これはようするに、内閣記者会が批判が高まったのを受けて、懇談そのものを国民の目から隠蔽しようとしたということだろう。
 実際、当日、現地に取材に赴いたジャーナリストの田中龍作氏は、オフ懇のスタートが〈朝8時からが7時30分からに変更され、場所も直前まで伏せられた。〉とツイートしていた。

朝日新聞は参加拒否「懇談ではなく会見で」日本学術会議問題の説明を求める真っ当な声明
 この隠蔽はまさに国民への背信行為ではないか。日本学術会議の人事介入が明らかなように、菅政権は安倍政権と全く変わらない、いや、それ以上の民主主義の破壊行為を推し進めようとしている。ところが、マスコミはそれを批判するどころか、菅政権の顔色だけを伺って、一緒になって情報を国民の目に見えないようにしているのだ。
 絶望的としか言いようのない状況だが、そんななかで唯一の救いは、朝日新聞がオフ懇を拒否しただけでなく、以下の声明を出したことだ。
朝日新聞の記者はこの懇談会を欠席しました。首相は日本学術会議の新会員に6人を任命しなかった問題をめぐり「法に基づいて適切に対応した結果です」と記者団に答えるにとどめています。朝日新聞は、首相側に懇談ではなく記者会見などできちんと説明してほしいと求めています。首相側の対応が十分ではないと判断しました。〉
 本来ならこれはわざわざ褒めるような話ではなく、報道機関として当然の姿勢なのだが、しかし、菅首相については、朝日や毎日の政治部も歓迎ムードに包まれており、追及が甘くなるのではないかという見方も流れていた。そんな中で、朝日がこうした姿勢を示したことは積極的に評価すべきだろう。
 国民が菅政権の民主主義破壊を厳しく批判する一方で、こうした筋を通したメディアに対して後押ししていけば、後に続く動きを生み、政権の暴走を抑え込むことにつながるはずだ。 (編集部)


研究者ら官邸前で抗議集会 任命拒否「不当」と300人
                       沖縄タイムス 2020年10月3日
 日本学術会議が推薦した新会員の候補者6人が任命を拒否された問題で、多くの研究者や市民らが3日、首相官邸前で理由の説明や撤回を求める抗議集会を開いた。参加者は「学術に携わっていない政府が推薦を覆すのは不当」「日本の民主主義に関わる問題だ」と声を上げた。
 主催者側によると、約300人が参加。「学問の自由を守れ」「日本学術会議への人事介入に抗議する」と書かれたプラカードを掲げていた。
 集会の呼び掛け人となった小原隆治早稲田大教授(地方自治)は「説明責任を果たそうとしない政府の対応を見て、法治主義や立憲主義の危機だと感じた」と強調。(共同通信)


パンケーキとハンスト お忍び朝食会で記者たちは首相に何を聞いたのか
                     田中龍作ジャーナル 2020年10月3日
 前々日までの案内では3日午前8時となっていたが、30分繰り上げられ、7時30分からとなった。場所も直前まで伏せられた・・・スガ首相と番記者たちの朝食懇談会のことである。
 いじましいまでのコソコソぶりだ。そうまでして会いたい相思相愛の仲なのか。
 朝食会の場所は原宿のパンケーキ店だった。ハワイに本店があり日本全国に展開する有名店のようだ。
 スガ氏の好物パンケーキの店でオフレコ懇。誰のアイデアなのだろうか。「パンケーキおじさん」として人気を得ようとする戦術か。
 別に何を食べようと構わないが、マスコミの記者たちはジャーナリストとして聞くべきことを菅首相から聞いたのだろうか。
 菅首相が学術会議の人事に介入した事件でSNSは大荒れだ。新聞もいちおう一面で扱っている。
 「あの6人を外したのは、ちょっと手荒過ぎたんじゃないんですか?」「首相の拒否権はいつからできたんですか?」・・・くらいは質問したのだろうか。
 新聞テレビがまともに権力を追及していたら安倍政権は7年8ヵ月も続かなかっただろう。マスコミが今の調子だと菅政権も長期に渡って続くのだろうか。

ハンスト2日目に入った菅野完氏。とりあえず元気だ。=3日12時頃、官邸(国会記者会館)前 撮影:田中龍作= 

 「同じ日本の言論人か?」と思うことが起きている。著述家の菅野完氏が、菅首相による学術会議への人事介入に抗議して、官邸前で2日午後7時からハンストに入っているのだ。
 首相官邸前の場所を厳密にいうと、国会記者会館前である。
 3日午後に行われた「学術会議人事に反対するデモ」にはマスコミが取材に来た。だが傍らで座り込む菅野氏には目もくれなかったようだ。
 国有地に家賃も払わずに入居する記者たちは、菅野氏が ひもじい腹を 抱えている時、菅野氏の抗議相手と共にパンケーキを食べていた。
 報道の自由を奪いつつある首相は、今度は学問の自由に手を突っ込んだのだ。
 「言論人と学者がちゃんと戦い始めるまで、座り込みを続ける」と菅野氏は語る。
 言論人が独裁者とパンケーキを食べているうちは、菅野氏はハンストを永遠に続けなくてはならない。
       ~終わり~