2020年10月27日火曜日

菅政権のやり方は学術会議への脅迫 NHK日曜討論で小池・共産書記局長

  25日のNHK「日曜討論」で、柴山昌彦・自民幹事長代理学術会議が軍事研究に反対していることが問題だと明言しました。戦争を放棄した国の与党幹部がよくも平然と口に出来たものです。それに例の「総合的・俯瞰的な観点から」という言葉を重ねてみたところで、決して任命拒否理由の説明にはなりません。柴山氏は「政治的対立によって国民の信頼を失うことがあってはならないので総合的・俯瞰的な観点が必要だ」と述べましたが、共産党の小池晃書記局長は「政治的な対立を持ち込んでいるのは自民党だ」と反論しました。

 菅氏と同様に柴山氏も、「学問の自由」についてと日本学術会議法が定めている会員任命のあり方についての基本的認識を共に欠いています。学術会議の会員任命拒否の問題では図らずもこの政権のそうした欠陥を炙り出しました。これでは立憲政治などは望むべくもありません。
 それだけではありません。菅首相は、 中曽根元首相の合同葬に際して裁判所や国立大学などにも弔意の表明を求めるなどの強権的な実体を早くも露出させまし。菅氏本人は叩き上げで苦労人の「人情派」といったイメージを持たせたかったのでしょうが、我々が実感するのはそれとは対極の冷徹で強権的な本質です。立憲政治を識らず、身に着けたのは官房長官時代に官僚を支配する中で養った強権体質だけであっては日本は救われません。
 小池氏は26日から始まる臨時国会で、コロナ対策と共に菅政権の強権性と対決していくと表明しました。
 NHK日曜討論での小池・共産書記局長の発言を、しんぶん赤旗電子版が2つの記事で取り上げました。
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任命拒否問題
軍事研究反対を自民問題視 学術会議への重大な脅迫 NHK日曜討論 小池書記局長が批判
                        しんぶん赤旗 2020年10月26日
 日本共産党の小池晃書記局長は25日、NHK「日曜討論」に出席し、菅義偉首相による学術会議任命拒否問題などで各党代表と討論しました。小池氏は、学術会議が軍事研究に反対していることが問題だとした自民党の柴山昌彦幹事長代理の発言を厳しく批判し、26日から始まる臨時国会で、コロナから国民を守る政治への転換とともに、菅政権の強権性と対決していくと表明しました。(詳報下掲

 柴山氏は、学術会議の「1950年の軍事研究を行わないという提言」があるため軍事研究が進まないと述べ、「6人の候補者の過去の実績や活動を鑑みて総合的・俯瞰(ふかん)的な観点から適切な任命措置がなされた」と主張しました。
 これに対し小池氏はまさに軍事研究に反対したから人事に介入したとしか聞こえない。重大だ」と指摘。「今回のやり方は、個々の研究者だけでなく学術会議全体を『政府に盾つく組織は許さない』と脅迫するもので、二重三重に学問の自由を脅かす。非常に卑劣だ」と批判しました。
 また小池氏は、日本維新の会の馬場伸幸幹事長が学術会議への政府介入の根拠に10億円の税金が同会議に投入されていることを挙げたのに対して、「税金を使っているから国のやることに異論を唱えてはいけないというのは独裁国家だ」と批判。自民党への政党助成金
170億円などの方がよほど理解されないと語りました。
 さらに、柴山氏が「政治的対立によって国民の信頼を失うことがあってはならないので総合的・俯瞰的な観点が必要だ」と述べたことについて、小池氏は「政治的な対立を持ち込んでいるのは自民党だ」と反論。かつて中曽根康弘首相が形式的な任命だから学問の自由は守られると答弁(1983年)していたことを紹介し、「それを国会での議論も経ずに勝手に政府が法の解釈や国会答弁をねじ曲げて運用しはじめたら民主主義国家ではない。こういうやり方は絶対に許してはいけない」と強調しました。


NHK日曜討論 小池書記局長の発言
                        しんぶん赤旗 2020年10月26日
 日本共産党の小池晃書記局長は25日のNHK「日曜討論」で、きょうから始まる臨時国会で焦点となる、菅義偉首相による日本学術会議の新規会員の任命拒否問題、新型コロナウイルスと経済対策、批准が発効に必要な50カ国に達した核兵器禁止条約について各党代表と議論しました。

菅政権発足1カ月
 初めに就任1カ月が過ぎた菅政権の評価について問われ、自民党の柴山昌彦幹事長代理、公明党の石井啓一幹事長、日本維新の会の馬場伸幸幹事長は、携帯電話料金の値下げ、不妊治療への保険適用などが高い支持を受けていると述べました。
 小池氏は「安倍政権の継承・発展というが、継承してはいけないことを継承し、発展させてはいけないことを発展させている」と強調しました。小池氏は、学術会議の任命拒否問題では安倍政権の強権性がいっそうひどい形で表れており、コロナ禍の下で国民に「自助」=自己責任を押し付けようとしていることも大問題だと指摘。「臨時国会ではこういう強権性や、国民に自己責任を押し付ける政治と対決し、命と暮らしを守るために、市民と野党が力を合わせて政権交代を実現する論戦に取り組みたい」と表明しました。
 立憲民主党の福山哲郎幹事長は、菅政権が安倍政権の悪い部分を継承していると述べ、支持率が一気に下落していると指摘しました。

学術会議任命拒否
 学術会議が推薦した会員候補のうち6人を菅首相が任命拒否したことについて、自民・柴山氏は「学術会議は1950年の軍事研究は行わないという提言を盾に、デュアルユース(民生技術の軍事転用)の研究がなかなか進まないという問題点も指摘されている」「6人の候補者の過去の実績や活動に鑑みて総合的・俯瞰(ふかん)的な観点から適切な任命措置がなされた」と発言しました。
 小池氏は「軍事研究に反対したから人事に介入したとしか聞こえない」と批判。任命を拒否された加藤陽子東京大学教授の「政府側の意向に従順でない人々をあらかじめ切るという事態が進行した」という言葉をあげ、「まさに憲法23条の学問の自由を脅かす事態であり、6人だけの問題ではなく、国民の権利、学問の自由を脅かすという点で、全ての国民にとって重大問題だ」と訴えました。
 柴山氏が、学術会議の「硬直性」を問題視する声が一部にあるなどと今後の組織の在り方に問題をすり替えようとしたのに対し、小池氏は「問われているのはすでにやった(任命拒否の)ことであって、未来のことではない」と反論しました。
 さらに、柴山氏が会員に任命されなくても研究の自由はあるなどと述べたことにも、小池氏は「暴論だ。学問の自由は、個々の研究者の自由もそうだが、学者コミュニティーの自律性・自主性の尊重がなければいけない。今回のやり方は、個々の研究者だけでなく学術会議全体を『政府に盾突く組織は許さない』と脅迫するもので、二重三重に学問の自由を脅かす。非常に卑劣だ」と訴えました。
 立民・福山氏は、任命拒否は「違法だ」と述べ、任命拒否に関与したとされる杉田和博官房副長官の国会招致を求めました。

コロナと経済対策
 新型コロナ対策が議論となり、小池氏は、PCR検査に必要な予算をしっかり手当てするなど医療と検査の徹底した拡充が必要だと力説。休・廃業や解散を検討する中小企業が31万社に上り、非正規雇用もコロナ以前に比べ100万人以上減る一方、ほとんどの政府の経済支援制度が12月までで切れるとし、「倒産と失業の悪循環に陥る恐慌に絶対にしてはいけない」と訴えました。
 小池氏は、政府の支援策は穴が多いうえ、必要なところにお金が届いていないため、第2次補正予算の予備費が7兆円も残っていると指摘。「医療機関に対する支援も極めて不十分。すでに決めたものは直ちに届ける。あらゆる手だてで解雇・雇い止めを抑える。持続化給付金は一回限りにしないでコロナ収束まで複数回出す。あらゆる施策を総動員してくらしと命、経済を立て直すために全力を挙げるべきときだ」と求めました。

核兵器禁止条約
 核兵器禁止条約が来年1月に発効する運びとなったことについて、小池氏は「大変うれしいニュースだ。史上初めて核兵器を違法化する条約が実現する。しかも核兵器の使用のみならず、開発も、実験も、生産も、保有も、威嚇も全面的に禁止する中身だ。核なき世界への大きな一歩を心から歓迎したい」と表明しました。
 そして、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のベアトリス・フィン事務局長が、鍵を握るのは核保有国ではなく、核保有国を擁護する日本などの国々の動向であり、日本が政策転換すれば世界にとてつもない衝撃を与え、歴史を変える瞬間になるとコメントしていることに触れ、「国際社会は核兵器廃絶か、それとも固執するのか、そこに二分されている。核兵器廃絶の大きな流れが一歩進み始めたわけで、日本の立ち位置が問われている。唯一の戦争被爆国として日本の政府が核兵器禁止条約に一刻も早く署名・批准することを求めていきたい」と述べ、日本は条約発効を待たずに批准すべきだと主張しました。
 自民・柴山氏は「理念は共有するが、実効性の確保や工程表の面で現実味が薄いことから(政府は)批准を保留してきた」と発言。公明・石井氏も政府の対応はやむを得ない面もあると述べました。

臨時国会どう臨む
 最後に、臨時国会での重要課題について問われ、小池氏は「最優先で取り組むべきはコロナから国民の命を守り、経済を立て直す。そのために全力を挙げることだし、そのために予算を振り向けることだ」と発言。タイやフィリピン、韓国では、コロナ対策のために軍事費を削減する一方、菅政権が来年度の概算要求で過去最大5兆5千億円の軍事費を計上していることをあげ、「こういう在り方を根本から見直して、コロナから国民の命を守る、そういう政治に転換していくことを求めていきたい」と語りました。