所信表明演説に対する衆・参院での各党の代表質問が終わりました。
そこで感じられたことは、最重要問題である日本学術会議会員の任命拒否問題を見ても、野党側がいくら理を尽くしてそれが憲法違反・法律違反の行為であることを詳細に説明しても一切受け入れることがなく、しかも提起された論理に沿って反論するのではなく、ひたすらそれとは無関係な、当初考え付いた言い訳を繰り返すだけで、問答無用に「違憲・違法な行為ではない」、「結論は変えない」と強弁するというものでした。
「何を言おうとも、全く何も伝わらない」というのは『既視感』などという生易しいものではなく、安倍政権時代に我々が嫌というほどTV中継で毎回繰り返されてきたものですが、同じことが菅政権でも再現されることになりそうです。
菅氏は前政権では官房長官として7年半余り、記者たちから何を糺されても「批判は当たらない」、「問題ない」の一言で全ての問題案件を「議論停止=思考停止」させることでしのいできました。
それは多分彼一流の周到な思考からそうした門前払いの手法を選んだのだろうと理解されてきましたが、実はどうもそうではなくもともと論理的思考・議論が苦手というのが真相でないのかと思うしかなくなりました。そうでなければ人間はあれほどまでに「没論理的」になれるものではありません。また没論理的であれば結果的に遵法精神に欠けることになるのは自明のことです。
29日、共産党の志位和夫委員長は衆院の代表質問で、菅首相による日本学術会議への人事介入、緊急の課題となっている新型コロナ対策について真正面から糾しましたが、菅首相は日本学術会議への人事介入について聞かれたことにまともに答えず、開き直りの答弁を連発しました。コロナ対策の問題、暮らしと営業を支える3つの緊急提起でも全く同様でした。
それはどんなに理を尽くして緻密に説いても、それを理解する「能力」がないのではないかと思わせるものでした。ツイッター界では、志位委員長による代表質問が評価され逆に菅首相の答弁に批判が集中し、関東地方で一時「トレンド」入りしたということです。
遵法精神に欠け、論理的思考が苦手ということであれば国のトップは務まりません。
しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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首相の学術会議介入 違憲・違法の核心つく コロナ対策 焦眉の課題は
志位委員長の代表質問 衆院本会議
しんぶん赤旗 2020年10月30日
日本共産党の志位和夫委員長は29日の衆院本会議の代表質問で、菅義偉首相による日本学術会議への人事介入、緊急の課題となっている新型コロナ対策について真正面からただしました。菅首相は日本学術会議への人事介入について、聞かれたことにまともに答えず、開き直りの答弁を連発。コロナ対策でも従来通りの答弁を繰り返すだけで、国民の苦難に寄り添う姿勢は示しませんでした。
■学術会議法に真っ向違反 独立性・自主性を侵害
志位氏は、任命拒否が日本学術会議法に真っ向から違反していることを、各条文を引いて批判しました。
日本学術会議法は、学術会議の政府からの独立性を幾重にも保障しています。同法では▽学術会議は、政府から「独立して…職務を行う」(第3条)▽政府に対してさまざまな「勧告」を行う権限が与えられている(第5条)▽会員は、学術会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(第7条)▽病気等で辞職する場合には、「学術会議の同意」が必要(第25条)―とされています。
さらに第26条では、「会員として不適当な行為」があった場合ですら、退職には「学術会議の申出」が必要とされるなど、実質的な人事権は全面的に学術会議に与えられています。
志位氏はこれらを踏まえ、1949年の日本学術会議の創設時、当時の吉田茂首相が明言したように「高度の自主性が与えられている」ことを認めるかと迫り、「6人の任命拒否は、学術会議の独立性・自主性への侵害であり、日本学術会議法違反であることは明瞭だ」とただしました。
菅首相は、今回の任命が「学術会議法に沿って打ち出したもの」とするだけでまともに答えることができませんでした。
志位氏は、学術会議の独立性が損なわれないかが大問題になった1983年の会員の公選制を推薦制に変えた同法改定時、政府が首相の任命は「全くの形式的任命」「実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右することはしない」「推薦していただいた者は拒否しない」と繰り返し答弁していたことを示し、6人の任命拒否が政府答弁のすべてを覆すものだと強調。「法律はそれを制定する国会審議によって解釈が確定するのであり、政府の一存で勝手に解釈を変更すれば、国会審議は意味をなさなくなる」と追及しました。
菅首相は「解釈変更ではない」と強弁し、「推薦の通りに任命しなければならないわけではない」などと言い逃れに終始しました。
■憲法15条による任命拒否合理化は天につばするもの
菅首相は、任命しないことはありうると強弁する際、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とする憲法15条1項を持ち出しています。
志位氏は、憲法15条1項は、公務員の最終的な選定・罷免権が主権者である国民にあることを規定したものであり、それをいかに具体化するかは国民を代表する国会で個別の法律で定められるべきものだと指摘。日本学術会議の会員の選定・罷免権を定めた日本学術会議法に反した任命拒否こそ憲法15条違反だとし、「憲法15条を持ち出してそれを合理化するなど、天につばするものではないか」とただしました。
菅首相はこの指摘に一切答えず、憲法15条を6度も持ち出して同じ説明を繰り返すだけでした。
志位氏は、かつて政府が憲法15条の解釈で「明確に客観的に」「非常に不適当である場合」に限って任命しない場合もありうると答弁してきたと紹介。首相が任命拒否した6人が「不適当」かどうか、理由も明らかにせず任命拒否することは「6人に対する重大な名誉毀損(きそん)になる」と強調しました。
菅首相は、「人事」に関することだとして理由の説明を拒否したにもかかわらず、「名誉毀損にあたると考えていない」などと断言しました。
さらに志位氏は、菅首相が学術会議の推薦名簿は「一部の大学に偏っている」「民間、若手が極端に少ない」「多様性が大事」などと非難し始めたことについて、「それならば、なぜ50代前半の研究者、その大学からただ一人だけという研究者、比重の増加が求められている女性研究者の任命を拒否したのか」と追及。菅首相は「任命権者として判断した」などと居直りました。
志位氏は、首相が勝手に「選考・推薦はこうあるべき」という基準をつくって任命拒否をはじめれば、「学術会議にのみ与えられた選考・推薦権は奪われ、学術会議の独立性は根底から破壊されてしまう」と批判しました。
■学問の自由を二重に侵害する
任命拒否は、憲法23条が保障した「学問の自由」を侵害するものです。
志位氏は、菅首相が任命拒否は「学問の自由と関係ない」と述べていることに触れて「憲法が定めた学問の自由の保障をどう理解しているのか」と追及。学問の自由は、大学、学会など科学者の自律的集団に保障される必要があり、科学者集団の独立性・自主性の保障なくして科学者の自由な研究もありえないと強調しました。
その上で、「理由を明らかにしないままの任命拒否は個々の科学者に萎縮をもたらし、自由な研究を阻害する」と指摘。日本の科学者を代表する日本学術会議の独立性への乱暴な侵犯であり、「総理の任命拒否は学問の自由を二重に侵害するものだ」と批判しました。
菅首相は「学問の自由は広く国民に保護されたもの」と述べつつ、憲法15条を持ち出して「任命権の行使が、会員等が個人として有している学問の自由に影響を与え、これを侵害することや会議の職務の独立性を侵害することになるとは考えていない」と強弁しました。
さらに志位氏は「日本国憲法が思想・良心の自由や表現の自由と別に、学問の自由の保障を独立した条項として明記した理由がどこにあると認識しているのか」とただしました。
1930年代、滝川事件や天皇機関説事件など政権の意に沿わない学問への弾圧が、すべての国民の言論・表現の自由への圧殺につながっていったと指摘。「科学者が戦争に総動員され、侵略戦争の破滅へと国を導いた。憲法に明記された学問の自由の保障が、歴史の反省の上に刻まれたものだ」と訴え、「この問題は日本学術会議だけの問題ではなく、全国民にとっての大問題です。強権で異論を排斥する政治に決して未来はありません。日本共産党は違憲・違法の任命拒否の撤回を強く求める」と迫りました。
菅首相は、学問の自由が旧憲法下で圧迫されたことを踏まえ、明文で保障したものだと答えましたが、任命の変更は考えていないと改めて主張しました。
■PCR検査と医療の拡充が最大のカギ
再拡大が危惧されている新型コロナウイルス感染症の対策をめぐって、志位氏は「PCR検査と医療の抜本的拡充が、感染防止と経済活動を両立させる最大のカギだ」と述べ、政府対応の二つの問題点をただしました。
一つはPCR検査の立ち遅れです。日本での同検査の実施数は、人口比で世界152位にとどまっています。
志位氏は、無症状感染者の把握・保護を含めた積極的検査への戦略的転換を行うべきだと強調。国の責任で、感染が急増しそうな地域への網羅的検査や、病院・介護施設などでの社会的検査、感染追跡を行う専門員の増員など保健所の体制強化、全額国庫負担による検査の仕組みづくりを行うよう求めました。
菅首相は、「他国とは感染状況が異なる」「全体として検査体制は向上している」としてPCR検査の遅れを認めませんでしたが、検査体制強化の必要性は認めざるをえませんでした。
志位氏は次に、感染拡大に伴う経営悪化などで医療機関が疲弊しきっている問題を告発。日本病院会など3団体の調査報告書は、国からの十分な支援がなくては「地域医療が崩壊する危険性すらある」と訴えています。
志位氏は「総理は『医療従事者への感謝』と言うが、それなら医療機関への減収補てんに踏み切るべきだ」と主張。新型コロナとインフルエンザの同時流行への体制づくりを進めるためにも不可欠だと迫りました。
菅首相は1次・2次補正予算での支援を述べるだけで、患者の受診控えで経営が悪化する多数の医療機関への減収補てんにはまったく触れませんでした。
■暮らしと営業を支える三つの緊急提起
志位氏は「新型コロナの長期化で、事業と雇用の危機は深刻だ」と指摘しました。31万社を超える中小企業が廃業を検討し、8月の雇用者数はコロナ前より117万人減ったままだとして、「放置すればコロナ恐慌を引き起こしかねない」と強調し、次の3点を緊急に実行するよう提起しました。
第1は、休業支援金は予算の5%、家賃支援給付金は2割しか支給が決まっていない実態を踏まえ、ただちに是正し、実効ある措置をとることです。第2は、事業者の「年を越せない」「事業継続をあきらめざるをえない」という声を紹介し、雇用調整助成金のコロナ特例の延長、持続化給付金の第2弾の実施、家賃支援給付金の延長と生活困窮者のための貸付金の延長、返済免除の拡充、国が数千億円規模を出資しての「文化芸術復興基金」の創設です。第3に、消費税の5%減税と経営困難な中小業者に対する2019年、20年の消費税免税です。
菅首相は「雇調金の延長は適切に判断する」と回答。その他の支援策については「雇用情勢や経済動向などを踏まえる」と述べ、踏み込んで回答しませんでした。
志位氏は、菅首相が自己責任を繰り返すもとで「国民は十分すぎるほど自助努力をしている。政治の仕事は『公助』。暮らしを守るために公の責任を果たすことに尽きる」と主張しました。しかし、菅首相は「国民の創意工夫を大切にしたい」というだけで、国民の窮状を理解しない姿勢を示しました。
志位氏質問「トレンド」入り 「首相たじたじ、勝負あり」
インターネットの短文投稿サイト・ツイッターでは、日本共産党の志位和夫委員長による29日の衆院本会議での代表質問への反響や今後の追及への期待の声が相次ぎ、関東地方では一時、話題に上る頻度が上位を占めたことを示す「トレンド」に入りました。
志位氏が、「多様性が大事」だと言う菅義偉首相が50歳代の若手や女性の研究者の日本学術会議会員任命を拒否した矛盾を追及した部分の動画には「流石(さすが)」との投稿が。「この後すっきりした回答が得られない事が非常に残念。総理には早急に退場してもらいたい」と続けています。
学術会議推薦の名簿を「見ていない」のに会員に「偏り」があるなどと任命拒否を正当化する菅氏の矛盾を追及したことにも、「『名簿を見ていない』なら、『メンバーに偏りがあった』こともわからないはず。もし、『メンバーに偏りがあったので外した』という報告を受けたなら、それもまた問題(権限のない人間が勝手に行ったことになる)」と指摘し、「正直、志位首相で十分です」との投稿も。
また、コロナ禍のもとでも「自助」などと自己責任論を強調する首相に対し、志位氏が「コロナのもとで多くの国民は十分過ぎるほどの自助努力をやっていますよ。政治の仕事は公助だ」と主張したことにも、「あくまで自己責任論を基本とする菅氏に対する質問の締め括(くく)りが本当に素晴らしかった」との感想も上がりました。
党本部にも、「学術会議問題での志位さんの鋭い追及に菅首相はたじたじで、憲法15条を繰り返すだけだった。勝負ありです。予算委員会では徹底的に追及してほしい」などの声が寄せられました。