2020年10月28日水曜日

国民の苦難に背 際立つ強権 菅首相 初の所信表明

 菅首相は所信表明演説の終わりのところで、「私が目指す社会像は、『自助・共助・公助』そして『絆』です」と述べました。余程この言葉を気に入っているようですが、それこそは10年前、竹中平蔵氏の先輩で新自由主義の旗手であった中谷巌氏が、文春に「竹中平蔵君、僕は間違えた」という記事を載せて誤りを認めた「新自由主義」を象徴する言葉です(菅氏は竹中氏から教えられたとされています)。
 日本中がコロナ禍の打撃を受け、第3波の到来に備えなければならないこの時期に、良くも臆することなく「自己責任を強調し弱肉強食の経済の流れを良しとする」新自由主義を謳えるもので、それは「自己責任」を押し付け、国民の命とくらしを守るという政治の最大の責任を放棄する宣言です。菅首相の冷酷さを示しています。
 志位・共産委員長は「極めて深刻なのは、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題について、一言も触れなかったことです」と述べました。日本学術会議は戦前のあり方を反省し、国民生活に科学を反映、浸透させることを目的に1949年に、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。その人事を首相が恣意的に行うのは即 政治による「学問の自由」への介入であって絶対に許されないことです。

 27日付の宮崎日日新聞は、「菅首相初の所信表明 ◆「語らなかったこと」に本質◆」とする社説を掲げ、「語らなかったことのなかに本質が潜む」と述べています。
 しんぶん赤旗は、「いま日本でも世界でも、新型コロナ、気候変動、核兵器廃絶、貧困と格差の拡大という人類的な課題の克服にむけて、どういう社会像を描いて、その実現をめざすのかが、鋭く問われているのに、所信表明演説には、これらの問題に正面から応える姿勢は見られない」として、「所信表明演説が示したものは、菅首相の強権・ファッショぶりと、焦眉の課題での無策ぶり」だと述べました。

 しんぶん赤旗の下記の3つの記事を紹介します。
「国民の苦難に背 際立つ強権 菅首相 初の所信表明」
「学術会議・新型コロナ 焦眉の大問題にとりくむ ~ 志位委員長が表明 臨時国会開会」
「学術会議介入 問題の本質は任命拒否 ネット署名呼びかけ人が会見」
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国民の苦難に背 際立つ強権 菅首相 初の所信表明
                       しんぶん赤旗 2020年10月27日
 26日に始まった臨時国会で、初めての所信表明演説を行った菅義偉首相。コロナ禍のなかでの国民の苦難をよそに、「自助、共助、公助」と強調する一方、日本学術会議の会員任命拒否など国民に説明すべき問題には一切触れない強権ぶりを際立たせました。

学術会議一切触れず
 菅首相が国会も開かず最初にやった仕事は、日本学術会議会員候補6人の任命拒否でした。「学問の自由」を脅かす重大問題ですが、菅首相は演説でこの問題に一言も触れませんでした。国民の疑問に答えず、説明責任を果たさない強権的な姿勢をあらわにしています。
 任命拒否は、日本学術会議法に明白に違反し、憲法が保障する学問、思想・良心、表現の自由を侵害するものです。日本学術会議だけでなく国民全体にとっての重大問題です。
 しかし菅首相は、任命拒否の理由や経過を一切明らかにしていません。菅首相は安倍前政権下での官房長官時代も、森友・加計学園や「桜を見る会」をめぐる政治私物化疑惑について国民や国会に説明せず、「指摘は当たらない」などと疑惑にフタをしてきました。こうした強権的手法を新政権でも「継承」していることが早くもあらわになっています。
「自分でできることは、まず、自分でやってみる」。菅首相が、目指す社会像として「自助・共助・公助」と語ったことに、野党議員から「自己責任内閣!」とやじが飛びました。国民への説明は果たさず新型コロナ禍で苦しむ国民に「自己責任」を迫る発言は、政治の責任を放棄するものに他なりません。

コロナ禍の現場無視
 菅首相は新型コロナウイルス対策について「爆発的な感染は絶対に防ぎ国民の命と健康を守り抜く」と述べたものの、実際の対応はずさんです。
 ヨーロッパに続き日本でも感染再燃が危惧される中、野党が強く要求し政府も必要性を認めてきたPCR検査の抜本拡充や「検査・保護・追跡」体制の強化は進んでいません。経営危機にある医療現場への減収補填(ほてん)は一言も触れず、公立・公的病院の統廃合・病床削減を進める「地域医療構想」の中止も言及しませんでした。
 事業と雇用の危機打開も極めて不十分です。菅首相は「マーケットは安定」「新たに働く人を400万人増やすことができた」といいますが、国民の暮らしや営業は全く見えていません。

 休・廃業を検討する中小企業が31万社に上り、非正規雇用者数はコロナ前に比べ100万人超急減しています。ところが菅首相は、休業支援金が予算額の3%しか支給されない深刻な事態は放置し、「Go Toキャンペーン」、無利子・無担保融資を強調しました。
 政府の経済支援制度の多くは12月までに切れるもと、直接支援の継続と強化、消費税5%への減税と納入免除など、必要な支援を届けきることが必要です。

「目玉」政策 願い遠く
「グリーン社会の実現に最大限注力していく」。菅首相は演説の目玉として、温室効果ガスを2050年までにゼロにする目標を掲げました。「パリ協定」の目標「気温上昇1・5度未満」を達成するための条件で、すでに国際社会では120カ国以上が表明しています。国民や国際社会の批判に押された結果とはいえ、出遅れは明らかです。
 ただ、菅首相は「石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換」するとしたものの、廃止に触れませんでした。30年までに二酸化炭素の排出量を現在の半分にする必要があり、最大排出源の石炭火力発電所を段階的に廃止しなければなりません
 菅首相が力を入れるとした次世代型太陽電池が完成しても、石炭火力発電所が稼働する限り実現は無理。二酸化炭素を再利用する「カーボンリサイクル」も挙げましたが、実用化のめどは立っていません。しかも、東京電力の福島第1原発事故を収束できないまま「原子力政策を進める」と述べ、原発推進に固執する無責任な姿勢を示しました。
 さらに「デジタル社会実現」として、プライバシー侵害の懸念が広がるマイナンバーカードと保険証の一体化も主張しました。
 グリーン社会、デジタル社会等の看板を掲げても、国民が願う政策からは程遠いのが実態です。

9条改憲姿勢あらわ
 菅首相は、「抑止力の強化」として、敵基地攻撃能力の保有の検討を指示した安倍晋三前首相談話(9月11日)を踏まえて「議論を進める」としました。歴代政権は「敵基地攻撃能力」保有を「違憲」としてきましたが、この憲法解釈の再検討を宣言した形です。
 さらに、憲法審査会で「与野党の枠を超えて建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていく」と強調。自民党内部では改憲原案の年内作成に動き出しています。「敵基地攻撃能力」保有検討を新たな突破口としつつ、自衛隊明記の9条改憲に向けた危険な姿勢をあらわにしました。
 菅首相は、沖縄県民の圧倒的多数が反対する名護市辺野古の米軍新基地建設を「着実に進める」と強調。玉城デニー知事が求める問題解決に向けた対話も拒否しました。
「沖縄の皆さんの心に寄り添い」などと口にしましたが、官房長官時代に県民の民意を踏みにじり弾圧してきた自身の行為を顧みない口先だけの言葉は空虚に響き、基地のない平和な沖縄を願う県民との矛盾が一層深まっています。


学術会議・新型コロナ 焦眉の大問題にとりくむ
党議員団総会 志位委員長が表明 臨時国会開会
                       しんぶん赤旗 2020年10月27日
 菅義偉首相の就任後、初の国会論戦となる第203臨時国会が26日、召集され、菅首相は衆参両院本会議で所信表明演説を行いました。菅首相は「目指すべき社会像」として、「自助、共助、公助」を強調する一方で、日本学術会議の会員任命拒否について一切触れず、説明を放棄しました。日本共産党は国会議員団総会を開き、志位和夫委員長があいさつ。日本政府の核兵器禁止条約への参加を求めるとともに、日本学術会議への人事介入、新型コロナ危機という二つの焦眉の大問題にとりくむ決意を表明。野党共闘のさらなる発展を呼びかけました。臨時国会の会期は12月5日までの41日間です。(志位氏あいさつ全文)
 志位氏は、核兵器禁止条約の発効が確定したことで、「歴史上初めて、国際法上、核兵器が違法化された」と強調。唯一の戦争被爆国の日本政府に条約参加を真剣に検討するよう強く求めると表明しました。
 また、日本学術会議への人事介入について、菅首相の任命拒否は「法の支配」「国民の精神的自由」への挑戦だと厳しく批判。学問の自由への弾圧がすべての国民の自由への圧殺、侵略戦争の破滅へとつながった歴史に触れ、「日本共産党は、党の存在意義にかけて、この暴挙を許さない先頭に立って奮闘する」と述べました。
 そのうえで、志位氏は、任命拒否は学術会議だけの問題でなく、すべての国民への攻撃であり、「国民みんなにとっての大問題だ」と強調。違法・違憲の任命拒否を撤回させるため、「立場の違いを超えて、一大国民運動を起こそう」と呼びかけました。
 新型コロナをめぐっては、「感染拡大の危機」と「事業と雇用の危機」という二つの重大な危機を打開することが緊急の課題となっています。
 志位氏は、専門家から欧州に続く感染拡大再燃の危惧と「検査・保護・追跡」の抜本強化の重要性が語られたことをあげ、PCR検査と医療体制の抜本的拡充をはかることを主張。事業と雇用の危機を「コロナ恐慌」にしないために、直接支援の継続と強化、消費税5%への減税と納入の免除など必要なあらゆる手だてを強く求めてたたかいぬこうと訴えました。
 最後に、志位氏は、政府・与党が国会を開かないもと、野党が閉会中審査や野党合同ヒアリングなど立法府の責任を果たしてきたことを指摘。「この共闘の流れを臨時国会でさらに大きく発展させ、次の総選挙での政権交代と野党連合政権の実現に道を開く国会にしていこう」と呼びかけるとともに、党の躍進に貢献する国会活動にとりくむ決意を表明しました。


学術会議介入 問題の本質は任命拒否 ネット署名呼びかけ人が会見
                       しんぶん赤旗 2020年10月27日
 菅義偉首相に日本学術会議会員6人の任命拒否の撤回を求めるネット署名を呼びかけた鈴木淳東京大学教授、古川隆久日本大学教授の2氏が26日、日本記者クラブで会見しました。賛同人の瀬畑源龍谷大学准教授がネット参加しました。
 戦前の言論弾圧を踏まえ今回の政府の措置を「座視できない」とする同署名には、10日間で14万超の賛同が寄せられています。
 古川氏は、今回の事態の中で、学術会議のあり方を問題にする議論がされていることを批判し、問題の本質が任命拒否にあることを明確にさせるため、会見したと説明。「任命拒否は不公正で、会議のあり方を問うなら、任命した上でオープンな議論をすべきだ」と指摘しました。
 また首相の「任命拒否しても学問の自由は侵さない」という発言について「学問の成果を分かりやすく発信している学術会議の役割が理解されていない。異論の言える社会こそ民主主義に不可欠。今回のことを黙認すれば息苦しい社会になる」と訴えました。
 鈴木氏は、菅首相は「国民に対して説明の義務があり、国会で議論されるべきだ」と指摘。「任命拒否は日本学術会議法に反する。法解釈の変更が国会にもかけずに行政府の判断で行われることは三権分立に反し、法治国家で許されるべきではない」と述べました。
 瀬畑氏は、任命拒否の理由や誰がどこで決めたのかなど説明が一切されないことを公文書管理研究の立場から批判。「決定過程に関わる公文書を公開すべきだ」と指摘。安倍政権時代の森友・加計問題や桜を見る会などでのごまかしにもつながっているとして「国民に対して説明責任を果たす情報公開制度を追求すべきだ」と訴えました。