2020年10月17日土曜日

菅首相 横浜市議時代に味をしめた「人事介入」 行き着く先は陰湿な警察国家

  日本学術会議会員の一部任命拒否は10月1日に明らかになりましたが、翌日、加藤官房長官は決定を見直す考えはないと述べました。2日に開かれた野党合同ヒアリングには任命されなかった会員候補の有識者3人が出席しました。日本学術会議は3日、幹事会を開催し、菅首相に対して任命拒否の理由を説明し6人を任命するように求める要望書を決定し、内閣府に送付しました。

 こうした状況をみて首相はまずいなとこぼしたそうですが、3日からの週末に対応を協議して公務員の任免権は首相にあるで押し通す方針ました。しかしその後の展開は支離滅裂というべきで、方針は勇ましかったものの緻密さが決定的に欠けていました。所詮誤りを取り繕うことは出来ないということなのですが、こんなことでこの先やっていけるのでしょうか。

 菅氏は14年に導入された内閣府人事局制度によって幹部官僚らの人事権を握り、気に入らない官僚は左遷・排除するという恐怖政治を敷くことで官僚を掌握したといわれます。まさにその通りなのですが、実は菅氏は25年前の横浜市議時代に既に“影の市長” と呼ばれ市職員人事への介入で市政に絶大な影響力を持っていたということです。
 週刊FLASHが報じました。逆にその時のうま味を国政に持ち込むために内閣府人事局制度を導入したということも出来そうです。

 それとは別に、この9月30日まで日本学術会議会員を2期6年務めた西川伸一明治大学教授は、今回の任命拒否に強い衝撃と憤りを覚えたとして、「菅政権、行き着く先は陰湿な警察国家 ~ 」とする文章を全国新聞ネットに掲載しました。
 西川氏は、安倍政権を実質的に支えたのは菅官房長官と警察官僚出身の杉田和博官房副長官(内閣府人事局長兼任)だったとして、「たたき上げ」の菅氏が、79歳になる杉田氏再任したことを、悪代官と越後屋のような組み合わせだと評しましたそしてこの時代劇コンビが、目障りな存在を次々に葬り去って行き着く先は陰湿な警察国家だろうか」と述べましたこれ以上はなく辛辣な菅義偉・杉田和博コンビ評です。
 2つの記事を紹介します。
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菅首相、25年前に味をしめた「人事介入」横浜市の職員が告発
                  FLASH編集部 Smart FLASH 2020.10.16
                      週刊FLASH 2020年10月27日号
 「状況を把握した首相は、とっさに『まずいな』と、こぼしたそうです。10月3日からの週末に対応を協議して、『公務員の任免権は首相にある』で押し通す方針が決まりました」(政治部記者)

 10月1日に明らかになった、菅義偉首相(71)の「日本学術会議」任命拒否問題。従来は学術会議側からの推薦者を、そのまま会員に任命するのが慣例だったが、今回、首相は推薦された105名の学者から、6名を除外した。
 「首相は官房長官時代から、形式上の任免権しかないことに疑問を感じていました。2017年の前回選考時は、学術会議側から定員より多い『予定者リスト』を受け取っていましたが、今回の『予定者リスト』は、定員ぴったりの人数。
 それに不快感を覚えて、首相の “最側近” である杉田和博官房副長官(79)が主導し、和泉洋人首相補佐官(67)と除外を実行したようです」(同前)
 だが、冒頭の首相の発言どおり、学会からは広く「学問の自由の侵害」と大反発が起きた。引くに引けない菅政権は、10月9日の会見で、河野太郎行革相(57)が「不透明な学術会議のあり方も行政改革の対象」との方針を示すなど、完全対立の様相となった。
 
「あとづけで行政改革の話にすり替えられましたが、今回の任命拒否は、総裁選で『反対する官僚は異動してもらう』と、首相が発言した延長線上にあるように見えます。官僚を押さえつけ、マスコミを手なずけ、今度は学者を従わせたいということでしょう」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

 今回の騒動を、「いかにも菅さんらしい」と見ていたのは、横浜市の幹部職員のA氏だ。菅首相が衆議院議員に初当選したのは、1996年のこと。それ以前は、横浜市議会議員だった。
 「25年ほど前、菅さんは横浜市で “影の市長” と呼ばれていました。市職員人事への介入で、市政に絶大な影響力を持っていたからです」(A氏)
 菅首相が、“神奈川のドン” と呼ばれた故・小此木彦三郎元通産相の秘書として「政治の道」を歩み始めたのは、有名な話だ。
 秘書として10年以上仕えたあと、1987年に横浜市議会議員に初当選すると、当時の菅市議は、小此木事務所の “番頭” の位置に収まる。国政に出て、あまり地元にいない小此木氏に代わり、“ドンの名代” として、菅市議は市政にかかわっていたという。
 「ある市職員が、小此木事務所からの陳情に、いい対応をしなかったことがありました。すると、その職員が課長に昇進する際、菅さんが市長に昇進理由をただしたんです。突然のことに、市長も『ドンに失礼があったのか……』と、その職員の昇進を一度見送りにしました。
 人事は “玉突き” ですから、ひとりの発令が遅れると市の業務が滞ってしまう。円滑に人事をおこないたい市は、それ以来『人事予定リスト』を、事前に菅さんへ提出するようになったんです」(同前)
 そうして発令の時期になると、「リスト」が菅市議の手元へ。1~2人を指差して「昇進理由は?」と菅市議がただす。指名された職員は “確認” が必要になるため、昇進は一度見送りに――。 1991年の小此木氏の死後も、「菅チェック」は、国政進出まで続いた。
「いくら菅さんでも、市の全職員の個々の仕事ぶりを把握するのは無理。でも、目についた数人にケチをつけるだけなら、簡単です。ひとりが外されると、ほかの全職員が萎縮して “ドミノ倒し” のように、菅さんに頭を下げるようになりました。
 次第に、役所内では据え置き人事があると、『あの人は菅さんから、“昇進NG” があったんだよ』と、非常に恐れられるようになりました」(同前)

 このときの経験で、人事掌握に味をしめたのだろう。
 安倍政権では、国税庁長官への昇格を果たした佐川宣寿元理財局長のような、「忖度官僚」への論功人事が問題視された。上から釣ったアベと、下まで落とすスガ――。じつは、菅首相のほうが、恐ろしいかもしれない。


菅政権、行き着く先は陰湿な警察国家 学術会議「任命拒否」の衝撃
                    西川伸一 全国新聞ネット 2020/10/16
 私はこの9月30日まで日本学術会議会員を2期6年務めた。会議の活動に携わってきただけに、今回の菅義偉首相による任命拒否に強い衝撃と憤りを覚えた。
                             (明治大学政治経済学部教授  西川伸一)
▽押し通した法律違反
 日本学術会議法をみてみよう。17条は「日本学術会議は(略)優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し(略)内閣総理大臣に推薦するものとする」と規定する。そして7条2項には「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とある。
 菅首相は会議が「優れた研究又は業績がある科学者」とみなした6人の研究者の任命を拒否した。彼らはそれに当たらないと判断したということだ。しかし、6人がそれぞれの学問領域で顕著な業績を挙げてきた研究者であることに、だれも異を唱えないだろう。この点だけを取っても、首相の行為は会議法に反している
 また、首相は6人を除外する前の推薦者名簿を「見ていない」と明言した。名簿なしにどうやって99人を選べたのか。これでは7条2項を踏まえていなかったことになる。首相は会議法をあえて犯してまで、6人の任命拒否を押し通したのだ。

▽排除される「目障りな」存在
 理由はわかりやすい。6人が、首相が「しっかり継承」すると語った安倍晋三前政権の政策に異を唱えた目立つ存在だったからだ。その結果、首相によって憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」が踏みにじられた。だからこそ、首相は本当の理由は明らかにできず、「総合的・俯瞰(ふかん)的」などというおよそ具体性のない空疎で美しい言葉で言い繕うほかなかった。
 首相の蛮行が、憲法23条がうたう「学問の自由」を侵害したことは論をまたない。会議法2条によれば「日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関」であり、同3条は「日本学術会議は、独立して左の職務を行う。」と定めている。学問の自由の下、研究に従事する全国の研究者の代表機関の意思を無視して、その独立に干渉した。
 内閣法制局しかり、最高裁しかり、検察庁しかり。政権の思惑と合致せず「目障り」と映る存在には人事に介入して、その独立性をはぎ取ることが安倍政権で繰り返されてきた。それが菅政権でも「継承」された。
 とはいえ、権力は本質的に暴走する。だからこそそれを抑えるためのしくみが幾重にも張り巡らされてきた。いわば「取扱注意」のシールが権力には何枚も貼られてきたのだ。そうしたシールが「前例踏襲打破」という勇ましいかけ声の下、一枚また一枚と今後もはがされてしまうのではと懸念する。

▽すり替え
 河野太郎・行政改革担当相は日本学術会議を行政改革の対象とすることを表明した。会議の年間約10億円の予算をめぐって「適切な金額かどうか」を注視していくのだという。
 今回の問題のアルファでありオメガは、任命拒否について任命権者たる首相が説明責任を果たしていないことである。この核心を覆い隠すかのように、会議の行革が政策課題とされる。これには強い違和感を禁じ得ない。
 10億円と聞くと巨額と受け止められる。だが、2021年度予算編成に向けた各省庁の概算要求の総額は約105兆円である。防衛省は最新鋭ステルス戦闘機F35の6機の取得費用666億円を盛り込んでいる。

▽学術会議を取り巻く厳しい現実
 一方で、私は10月に開かれる日本学術会議の総会などで、毎年のように予算のひっ迫について説明を受けてきた。各分科会の活動が活発なのは好ましいが、このまま予定どおりの活動が行われるとまもなく予算が底をつき、日当や旅費が支払えなくなるというのだ。事実、私は旅費の欄に「辞退」と書かれた書類に押印したことが幾度もある
 一番驚いたのは、昨年10月の総会である。それまでの総会では受付時にミネラルウオーターのペットボトルがもらえた。ところが、昨年10月の総会ではそれがなかったのである。ここまで節約しなければやりくりできないのかとあぜんとした。
 日本学術会議はかつかつの予算で運営されているというのが実感である。

▽浮かび上がる菅政権の本質
 菅首相の表情が最近、「令和おじさん」の頃とは違って陰湿にみえて仕方がない。むしろこちらが本性ということだろうか。
 安倍政権を実質的に支えたのは菅官房長官と杉田和博官房副長官(事務)だった。事務副長官は「影の総理」とさえ評される官僚の最高峰ポストである。警察官僚出身の杉田氏は79歳にして菅政権でも再任された
 彼による警察官僚の発想そのままのやり方も、「サラブレッド」の安倍首相を介することで陰湿さを薄めることができた。その安倍首相が去り、「たたき上げ」の菅氏が表舞台に登場した。菅氏と杉田氏の組み合わせは、悪代官と越後屋のようだ。
 任命拒否問題の「張本人」が杉田氏であることはほぼ間違いない。この時代劇コンビの悪だくみこそ菅政権の本質といえよう。「お主も悪よのお」などと言い合いながら、目障りな存在を次々に葬り去っていく。慣例を無視し、法律を骨抜きにし、さらには憲法までも意に介さない。行き着く先は陰湿な警察国家だろうか