2020年10月3日土曜日

03- 政治の仕事はまず「公助」 菅氏は首相の資質欠く(森 功氏)

  赤旗日曜版10月4日号に、『総理の影: 菅義偉の正体』などの著書を持ち 菅氏の人となりにも詳しい作家 功さんインタビュー記事が載りました。

 短い記事ですが、菅氏の特徴が簡潔に語られています。
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「自助」が大好き菅首相 格差を広げる弱肉強食の社会
 政治の仕事はまず「公助」 首相の資質欠く
                      赤旗日曜版 2020年10月4日号
 安倍政権の「継承」をかかげて発足した菅政権。『総理の影 菅義偉の正体』(2016年)を書いたノンフィクション作家の森 功さんに、菅新政権について聞きました。 
                           聞き手・田中倫夫記者
 菅首相は、めざす社会像について「自助・共助・公助」といっています。ある官僚は、 「菅氏は第1次安倍政権のころから『自助』という言葉が好きで、競争社会を歓迎していた」と言っていました。それは弱肉強食の「新自由主義」から来る発想ではないか。
「自助」は政治家がいう言葉ではない。親や学校の先生が子どもに「まずは自分でやるんだよ」というのとはわけが違います。政治の仕事は、まずは「公助」なんです。「自助」を一番に言うのは政治家、首相としての資質が問われる問題です。
 80年代のレガン(米)、サッチャー(英)、中曽根(日本)各政権ぐらいから、「小さな政府」「新自由主義」が世界的に広まりました。これが行き過ぎたことで社会での格差がひどくなり、社会不安、将来不安を引き起こしました。修正しないといけないといっているときに、新型コロナウイルスの感染拡大が起き、矛盾が顕在化してしまった。
 コロナ禍で「公助」が求められているのに、「自助」を強調するのには、理解ができません。私は菅政権を「安倍晋三さんのいない安倍政権」「居抜き政権」だと思っています。 「政治主導」を掲げながら、実際は官邸にいるとりまきの官僚たちが、総理や官房長官の威を借りて、専制的に物事を決めていく。形を変えた「官僚支配」です。これは「菅政治」の大きな特徴です。

異論許さない
 官僚人事を仕切る「内閣人事局」を使って、自分の好みの官僚を引き上げて、気に入らない官僚は平然と異動させてきました。その恐怖支配がさらに色濃くなるのではないでしょうか
 菅首相は「異を唱える官僚は異動させる」と明言しました。要するにおれに逆らうなということです。しかし、それは首相がいうべき言葉ではありません。首相の適格性があるのか、疑問を持たざるを得ません。反対意見を聞かない、受け付けないということは、民主主義国のトップリーダーとしてふさわしくありません。自分が最高権力者の地位にいることへの自覚がありません。

疑惑解明に背
 「森友・加計」「桜を見る会」疑惑、元法相の河井克行被告と妻の案里被告による大規模買収事件-これらもろもろの「負の遺産」を菅政権はまるまる背負い込むことになります。何もなかったかのように「再調査しない」「名簿は廃棄済み」「決着済み」では到底国民は納得しません
 河井夫妻事件は、まだ明らかになっていないことが多くあります。自民党本部から1億5千万円もの資金をだれが、何の目的で出したのか。河井夫妻は菅氏に近く、政権ナンバー2だった菅官房長官(当時)は関わっていなかったのか。一切関わっていないというのは信じられません。
 「ジャパンライフ」による巨額詐欺事件では、桜を見る会に元会長を「招待」し、詐欺の宣伝に利用されたことが問題になっています。菅首相は、桜を見る会を「来年からやらない」と言いだしました。やめてしまえば騒がれないという発想でしょう。あまりにも乱暴なやり方です。菅首相には疑惑をすべて明らかにする責任があります。

無批判な報道
 政権誕生をめぐっては、メディアの報じ方にも問題があったと思います。総裁選の「お祭り騒ぎ」のシナリオにメディアも乗せられてしまった。検証することなく、菅政権礼賛の報道をするのは大問題です。
 「たたき上げ」とか 「苦労人」とかだけを伝えることは、間違った印象を国民に植え付けることになります。「たたき上げ」についていう菅首相は秋田のけっこう大きなイチゴ農家に生まれ、育ちました。地元では「名士」でした。私の取材では、東京に出たのも、「集団就職」ではなく、単に父親と(進路について)けんかをしたことが理由です。サクセス・ストーリーとして、メディアが無批判に伝えていることに疑問を覚えます。メディアは権力を監視・チェックするのが役割です。

 功さん 
 1961年福岡県生まれ。新潮社勤務からフリーのノンフィクション作家に。『官邸官僚』『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』など著書多数