朝日新聞とテレビ朝日が24、25の両日、大阪都構想(正確には大阪市廃止)についての大阪市民の賛否を調査した結果は、反対が41%で賛成39%をやや上回りました。これは日経新聞とテレビ大阪の調査結果(16日~18日)の反対41%、賛成40%とほぼ同じでした。その一方でABC朝日放送とJX通信社の調査(10月17~18日調査)では、賛成47・9%が反対40・4%を7・5ポイント上回っていました。この違いが単なる調査のバラツキなのか、ここ1週間の反対派の追い上げなのかは不明ですが、反対派の伸びに勢いがあるという見方ができそうです。
大阪維新の会は2015年にも、同じ大阪都構想を目指して住民投票を行い、約1万票差で否決されました。そのときも維新は都構想のメリットを大宣伝しましたが、そこで出された数字が偽りであったことが様々に暴露されました。
維新の会は今回もテレビコマーシャルなどを通じて、大阪都構想のメリットについて大宣伝を行っているということです。
ジャーナリストの横田 一氏が「 ~ メッキが剥がれ始めた『維新都構想』」と題した記事で、松井・大阪市長たちが強調する「大阪の成長を止めるな!」のキャッチフレーズは看板倒れで、虚偽情報にすぎないことを明らかにしました。
公式な成長率のデータを用いているので松井・大阪市長も言い逃れは出来ません。
実体がなくて彼らの頭の中だけにある「お花畑」の幻想に、もしも大阪市民が引き込まれてしまうようであれば、その被害は計り知れません。
しんぶん赤旗が、「大阪市をよくする会」・「明るい民主大阪府政をつくる会」合同の活動者会議の様子を報じましたので、併せて紹介します。
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住民投票直前。メッキが続々と剥がれ始めた「維新都構想」
横田 一 ハーバー・ビジネス・オンライン 2020/10/27
“維新依頼説”は公明党内でも創価学会員内でも流れていた
大阪都構想(政令指定都市の大阪市廃止)の賛否を問う「住民投票」(11月1日投開票)が、ほぼ横一線状態の激戦となっている。報道機関の世論調査も割れるほどで、ABC朝日放送とJX通信社の調査(10月17・18日調査)では賛成派が7・5%リード(賛成47・9%、反対40・4%)していたが、『日本経済新聞』とテレビ大阪の調査(16日~18日)では賛成40%に反対41%と逆の結果が出ていた。
両派の接戦が続く中、10月18日には公明党の山口那津男代表が大阪入りし、維新との合同街宣でマイクを握った。約1万票差で否決された2015年の住民投票では反対した公明党だが、今回は賛成に転じた。しかしABCの世論調査では公明党支持者は賛成よりも反対が多い結果となっていた。固めきれていない公明票へのテコ入れであることは誰の目にも明らかだった。
山口代表と街宣車でそろい踏み演説をした松井一郎・大阪市長(維新代表)は「公明党大阪府連が決めたこと」と説明しているが、合同街宣を聞いていた創価学会員は「『維新が公明党本部に頼んで山口代表の大阪入りが実現した』と聞いている」と暴露。時事通信も「公明の山口代表、一転大阪入り、都構想賛否拮抗で維新要請か」と銘打った19日の配信記事で、現地入りに慎重だった山口代表が方針転換した理由について「党内からは『焦りを強める維新から強い要請があった』(関係者)との声が漏れる」と報じた。“維新依頼説”は公明党内でも創価学会員内でも流れていたのだ。
「大阪の成長を止めるな!」は看板倒れで、虚偽情報にすぎない
終盤になっても接戦なのは、都構想のメリットが不明瞭であるのも一因に違いない。先の創価学会員は「山口代表の話を聞いても反対する」と記者団に明言。「維新の府知事と市長が誕生して9年経つが、大阪が成長した実感もないし、生活が豊かになったとも全く思わない」とも語ったが、これは大阪府の成長率が全国平均以下であるデータとも合致する(10月19日公開の本サイト「政令指定都市から特別区への“格下げ”となる都構想のデメリットに、大阪市民も気づいてきた」で紹介)。維新の都構想のキャッチフレーズである「大阪の成長を止めるな!」は看板倒れで、虚偽情報にすぎないというわけだ。
都構想実現の根拠が崩れ去ったともいえる。「2011年に維新府市一体行政が始まって二重行政は解消、大阪は成長に転じたので、これを制度的に定着させるために都構想が不可欠」と維新は主張しているが、二重行政が残る全国平均よりも大阪の成長率が低ければ、わざわざ巨費を投じて都構想(大阪市廃止と特別区移行)をする必要性は乏しい。
カーレースに例えると、<二重行政解消の強力エンジン搭載の“バーチャル都構想号”の購入を大阪市民に勧める維新だが、実は、二重行政の重荷を詰んだ普通車にスピード競争で敗北。大金を支払って買う必要はなかった>という話になる。維新は紛い物を売りつける詐欺的商法をしているとしか見えないのだ。
嘘を嘘で塗り固める松井氏の「弁明」
10月15日の会見で「『大阪の成長を止めるな!』という維新のキャッチフレーズはイカサマではないか」と聞くと、松井氏は「一度検証します」と回答したので、3日後の10月18日の囲み取材で再質問をすると、こう答えた。
「われわれ2011年から府市一体で準備してきているわけです。今の観光の話(外国人観光客)をスタートしたのは2012年の年末です。2011年に僕と橋下さんが(府市のトップに)なって、観光局をスタートさせたのは2014年4月です」(松井氏)
「松井一郎・大阪府知事と橋下徹・大阪市長(いずれも当時)」の維新府市一体行政は2011年にスタートしたが、準備期間が必要だったので効果が出てくるまでの時間差(タイムラグ)が生じたというのだ。
そこで、前回の記事で示した「2011年~16年の年平均成長率」に加えて、「2014年~16年の年平均成長率」も同じように計算してみたが、全国平均以下であることに変わりはなかったのだ(大阪府作成の2019年12月版「データで見る『大阪府の成長戦略』」の数字を使用)。
<2014年~16年の年平均成長率>
大阪府 +0.37%
全国 +0.60%
<2011年~16年の年平均成長率>
大阪府 +0.58%
全国 +0.95%
松井氏の回答(準備期間によるタイムラグ)では、「二重行政解消の大阪府の成長率が二重行政が残る全国平均以下」という逆転現象の謎を説明することはできないのだ。嘘を嘘で塗り固めるような維新の詐欺的商法について私は、10月22日の会見で松井氏に「2014年~2016年」の成長率の数字を紹介した上で、先の例えを使った再々質問をした。
「二重行政を解消した強力エンジンを積んだ大阪のバーチャル都構想のほうが、二重行政を積んだぽんこつ車と競争したら、なぜかぽんこつ車のほうが勝っちゃったと。これは維新の強力エンジンはやっぱりいかさま、まがい物で、詐欺的商法をやっているようなイメージにも思えるが、これをどう理解すればいいのか」「(地方を含む)47都道府県の平均よりも下回っていた」
すると、松井氏は“復興特需牽引説”を持ち出してこう謎解きをした。
「地方の成長率の中には建設、宿泊、飲食とかも入っています。で、一番これで地方の平均(成長率)を上げてるのが宮城、岩手です。これは当時、震災で復興で建設の需要として、公共工事がもう、すごいお金が投入されてずっときています。だから防潮堤とか、ああいう土木系工事。これが宮城でプラスの13.9、岩手はプラスの7.6」「これで平均すると、やはり地方平均がぐっと上がったということです」。
維新府市一体行政が始まった2011年に東日本大震災が起き、宮城や岩手などで復興需要が急増したことが全国平均の成長率を引き上げた結果、大阪を上回ることになったと松井氏は反論したのだ。
「震災復興特需牽引説」もやっぱり嘘
しかし、この“復興特需牽引説”も“準備期間タイムラグ説”と同様、逆転現象を説明できる代物ではなかった。震災翌年の2012年には宮城も岩手も高い成長率を記録したものの、それ以降は右肩下がりとなり、2016年にはマイナスの成長率になるなど、両県の6年間の平均は2%台で、全国平均を1%程度引き上げたにすぎなかった。「地方平均がぐっと上がった」(松井氏)の説明は、一部のデータを針小棒大に紹介して全体的傾向を偽装するペテン論法(虚偽説明)といえる。
<2011年~16年の年平均成長率>
岩手県 +2.13%
宮城県 +2.98%
大阪府 +0.58%
全国平均 +0.95%
宮城・岩手除く全国平均 +0.88%
復興特需にわいた宮城と岩手を除いた全国平均は「+0.88%」で、二重行政解消の大阪の「+0.58%」を上回っていた(福島県を入れても同様の結果)。復興特需と無縁の二重行政付のポンコツ車が、二重行政解消エンジンの“維新バーチャル都構想号”に成長スピード競争で勝ったことを物語っている。
紛い物の都構想に大金を投じさせようとする維新の詐欺的商法の実態が浮き彫りになってくる。と同時に、データの裏付けなき空論を繰り返す松井代表にも唖然とする。
カイロ大学首席卒業など嘘を嘘で塗り固めるのが得意の小池百合子都知事(『仮面 虚飾の女帝小池百合子』参照)と、松井氏が二重写しにもなってくる。都構想でバラ色の未来が到来するかのように語る維新の主張は、信憑性を徹底的に検証する必要があるのだ。都構想の住民投票の結果が注目される。 <文・写真/横田一>
なくすな大阪市
賛否拮抗 勝利へ100万人対話 住民投票まで1週間 合同活動者会議
党府委員長が報告
しんぶん赤旗 2020年10月27日
大阪市廃止の是非を問う住民投票(11月1日)まで1週間となった26日、勝利へ向け「大阪市をよくする会」と「明るい民主大阪府政をつくる会」は合同で団体・地域連絡会活動者会議を開きました。
大阪労連の菅義人議長が主催者あいさつし、日本共産党の柳利昭府委員長が情勢報告を行いました。
柳氏は、メディアの世論調査結果を紹介し、「当初は『圧勝』をもくろんでいた維新に対して、『大阪市廃止に反対』の市民の声が激しく追い上げて、まさに『賛否拮抗(きっこう)』まで持ち込んできた」と指摘しました。
最終盤の論戦について、これまで一貫して訴えてきた三つの焦点((1)大阪市の廃止か、それとも130年の歴史をもつ大阪市の存続か (2)権限・財源を奪われ住民サービスの切り捨てか、大阪市の力を活かした充実か (3)コロナ禍でもカジノ・インバウンド〈外国人訪日旅行者〉頼みを続けるのか、命と福祉・暮らし第一に転換するのか)を貫くことの重要性を力説。「パンフやビラでていねいに情報を届けて対話し、考えてもらう働きかけを行う『100万人対話』を文字通りやりぬこう」と呼びかけました。
平松邦夫元大阪市長がゲストスピーチし、日本共産党の山中智子市議団長が決意表明。
「明るい会」の荒田功事務局長が「対話をすれば『反対』になる。これが教訓だ」と強調し、「100万人対話こそ勝利のカギ。必ずやり切る」ために、▽目に見え、耳に聞こえて勢いある宣伝をし、「対話を」意識的に行う▽平日の活動を質量ともに飛躍させる▽構成員のつながりを生かし、市民に依拠した運動を進める―ことなどを提起しました。
党中央委員会が協力呼びかけ
大阪市を廃止する住民投票は、賛否が拮抗(きっこう)する緊迫した局面。日本共産党中央委員会は全国のみなさんに以下の3点の協力を呼びかけます。
(1)今すぐ全国から、大阪市の有権者に、電話やネットも使い大阪市廃止反対の投票の働きかけを。
(2)「大阪市をなくすな」―投票日も含めSNS毎日拡散作戦に取り組もう。
(3)テレビコマーシャルなど、維新の「物量宣伝」に勝ち抜く最終盤の宣伝を支える緊急募金に協力を。