2018年7月2日月曜日

02- BBC放送「日本の秘められた恥」(伊藤詩織さん事件)「続報」

 LITERAがイギリスBBC放送「日本の秘められた恥」を取り上げました。
 1日付記事「伊藤詩織さん事件をBBCが放送 『日本の秘められた恥』だと」の続報として紹介します。
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英BBCが「日本の恥」と特集! 
山口敬之事件の被害者・詩織さんを攻撃する安倍応援団のグロテスクな姿が世界に
LITERA 2018年7月1日
 イギリスのBBCが28日、ジャーナリスト・山口敬之氏からの準強姦被害を訴えた伊藤詩織さんを中心に据えたドキュメンタリーを放送した。タイトルは「Japan's Secret Shame」、「日本の隠された恥」。
 番組は、詩織さんへの数カ月に渡る密着取材のほか、有識者やジャーナリスト、政治家のインタビューを盛り込みながら、性犯罪と被害者をめぐる日本社会の現況をえぐり出す内容。特筆したいのは、昨年5月に詩織さんが実名と顔を出して会見を行なった後、詩織さんに対して行われた誹謗中傷をBBCが具体的にクローズアップしたことだ。
 
 本サイトでもお伝えしてきたように、会見後、ネットを中心に詩織さんにセカンドレイプ的なバッシングまで巻き起こった。家族の希望で苗字を伏せていた詩織さんの苗字を暴くだけではなく、〈詩織さんはシャツの胸元開け過ぎで説得力ない〉〈同情を逆手に取った売名行為です、女から誘って男がはめられた〉〈はい、詩織さん、左翼まわしもの確定ですね〉といった罵詈雑言が溢れ、さらに、安倍昭恵夫人までも山口氏がFacebookに公表した“セカンドレイプ的”反論に「いいね!」と賛同、擁護する始末だった。
 
 番組では、ネットで家族の写真をさらされ、「売春婦」「朝鮮に帰れ」など罵詈雑言の書き込みが行われている様子を見る詩織さんの姿を写した。また、YouTubeで「まさしく怪しい」「性犯罪の被害者が「性犯罪の被害者が顔出しテレビ出演って」などとバッシングするネット右翼系の動画がアップされたことも紹介。さらに、文化人や政治家が山口氏を支援するネット番組の模様を複数引用した。
 たとえば、極右雑誌「月刊Hanada」の花田紀凱編集長によるネット番組(2017年10月収録)だ。本サイトでも放送当時にそのおぞましさをお伝えしたがhttp://lite-ra.com/2017/10/post-3552.html)、BBCのドキュメンタリーでは、番組に出演した山口氏と花田氏の会話を紹介した。
 
 山口「彼女がつくっているストーリーは、私がもともとそういう犯意をもって、悪意をもって薬を入れて、酔い潰して、ホテルに連れ込んだんだというストーリーなんだけど。そうじゃなくて勝手に酔っ払っちゃって、ただ一人で帰れなくなっちゃたけど、私はその通り先のホテルに戻ってやらなきゃいけない業務があって。駅で降ろしてくださいってご本人は言ったんだと思いますけれども、泥酔して嘔吐している人を駅に捨てて帰ったら逆に、これ、鬼っていうか。やむなく、じゃあちょっとホテルで休んでもらうしかないんですね」
  花田「酔っ払った女性、嫌ですよね。しかも、吐いたりしたらね。なんかよく山口さんも我慢して世話したなと思いますけど。僕なんか嫌ですよ
 
 また、これも本サイトでも取り上げているがhttp://lite-ra.com/2017/10/post-3552_4.html)、山口氏が出演した『報道特注』(2017年10月収録)の模様も伝えた。BBCは、司会の生田よしかつ氏(築地市場のマグロ仲卸三代目)が「めでたく日の目をみられるようになった山口さん」などと言って持ち上げ、自民党の和田政宗参院議員や日本維新の会の足立康史衆院議員らと乾杯する様子、そして山口氏が「もし、知らない方がいたら、ネットなど検索しないでおいていただけると(助かる)」などと述べて会場の笑いを誘う姿などを紹介した。
 山口氏を擁護するだけでなく、被害者である詩織さんを貶める安倍応援団の面々のグロテスクさが世界に発信されたわけだが、その中でも注目すべきなのは、BBCがあの議員にインタビューをしたことだろう。自民党衆院議員の杉田水脈だ。
 
英BBCの取材に国会議員・杉田水脈が「女として落ち度」と詩織さんを批判
 BBCは、例のヘイト漫画家・はすみとしこが、「枕営業大失敗!!」などと書いて詩織さんを誹謗中傷したおぞましいイラスト(http://lite-ra.com/2018/02/post-3830.html)に触れながら、そのはすみとネット番組『日本の病巣を斬る!』で共演した杉田のインタビューを報じた。杉田はBBCにこのように語っている。
「彼女の場合はあきらかに、女としても落ち度がありますよね。男性の前でそれだけ飲んで、記憶をなくしてっていうようなかたちで」
 「社会に出てきて、女性として働いているのであれば、それは嫌な人からも声をかけられますし、それをきっちり断ったりとかするのも、それもスキルのうちですし」
 続けて、インタビュアーから自身がセクハラを受けた経験を訊かれた杉田は、「はい。そりゃ、社会に生きていたら山ほどありますよ。ふふふ」と引きつった笑いを浮かべつつ「でもまあ、それは、そういうものかなあと思って」などと答えていた。
 
 さらに杉田は、詩織さんの告白について「日本の司法に対する侮辱」「日本の警察、世界で一番優秀」などとしながら、このように主張している。
「伊藤詩織さんが記者会見を行なって、ああいう嘘の主張をしたがためにですね、山口さんや山口さんの家族には、死ねとかいうような誹謗中傷のメールとか電話とかが殺到したわけですよ。だから私はこういうのは男性側のほうが本当にひどい被害を被っているんじゃないかなというふうに思っています」
 言葉もない。準強姦を訴える女性に対し、「女として落ち度がある」「社会に生きていたら山ほどある」などと言って責めたてる。まったく理解できないが、杉田のような考えの人物が国会議員として活動しているという事実を、国際社会はどう受け止めるだろうか。
 BBCのドキュメンタリーは、日本社会いかに女性が性被害について声をあげにくい状況になっているか、その構造を、事実を積み重ね映しだすことで描写している。その大きな要因のひとつが、告発した被害者に対する異常なバッシングとセカンドレイプが巻き起こること、そして「女は我慢しろ」という同調圧力が生み出されていることだ。
 
 BBCジャパンは、ドキュメンタリーのタイトル「Japan's Secret Shame」を「日本の秘められた恥」と訳している。ここには様々な意味が込められているが、少なくとも、こうした連中の存在こそ「日本の恥」だろう。
 
「Japan's Secret Shame」は海外で大きな反響、でも日本では「反日」と
「Japan's Secret Shame」は海外で大きな反響を呼んだ。Twitterにはハッシュタグで感想が投稿され、英紙ガーディアンなど他の海外メディアも番組レビューを公開している。BBCジャパンでは、たとえばアイルランド在住のシネイド・スミスの「#JapansSecretShameを見ている。ショックだし、ものすごく心が痛い。何がいやだって、女性が女性を攻撃してること。被害者を支えるんじゃなくて、女性が彼女を責めてる……。犯罪を犯した男を責めなさいよ!」という感想のツイートを紹介している。
 英語圏を中心に、性暴力をめぐる日本の問題の深刻さの一片が理解されようとしている。そして、それを変えようとする詩織さんの行動に賞賛の声が集まっているのだ。
 
 ところが、日本ではまったく逆の反応も目立つ。たとえば、BBCジャパンのツイッターアカウントにはこんな批判のリプライが複数寄せられている。言うまでもなく、日本のネット右翼と見られるアカウントからのものだ。
 〈フェイク番組もいいとこだな〉
 〈ホステスが枕営業失敗して 八つ当たりで嘘ついてるだけじゃん。〉
 〈#最低だな #BBC。#残念 #大英帝国 ってそんなもんだったのか。#事実認定 に #違法性 あり。#ドキュメンタリー?〉
 〈BBCJapanも反日なんですか なぜフェイクニュースながすのかな ロンドンの方に問い合わせしたいですね〉
 〈不起訴の山口氏を執拗に社会的抹殺する基地外と便乗する #BBC 。〉
 〈片方の一方的な主張のみ(それも検察、検察審査会で否定済み)を報道するならそれはもうプロパガンダ機関であって報道機関ではない。〉
 
 念のため言っておくが、番組は詩織さんの主張のみを扱ったものではない。むしろ、無罪を主張する山口氏の主張はもちろん、上述したように、花田氏や『報道特注』、杉田水脈議員などその支援者の主張にもかなりの尺をとっている。また、山口氏が安倍首相と近いジャーナリストであることを伝えると同時、裁判所の判断についても詳しく報じている。ドキュメンタリーとしては客観性を重視した構成だ。
 しかし、それは決して問題に「踏み込んでいない」ということではない。重要なのは、BBCがそうした詩織さんに批判的な人々の態度も含めて「Japan’s Secret Shame」と題したということ。まさに、番組に対して寄せられた「反日」とか「フェイクニュース」というクレームこそ、このタイトルが示唆しているものに他ならない。
 海外メディアは、ここまで山口氏の準強姦疑惑と日本社会の問題の深層に切り込んでいる。国内メディアも、見て見ぬ振りはもうできない。この国の内側にある「恥」を、徹底して明らかにしていく必要がある。 (編集部)