19日、最高裁は、都立高校の教職員ら24名が、卒業式等において起立して「君が代」を斉唱しなかつたことのみを理由に、定年退職後の再雇用を拒否された事件について、都教委の判断を是認し、教職員らの請求を全面的に退ける判決を言い渡しました。
二審(東京高裁)判決では、「起立斉唱しなかっただけで、不合格とするような重大な非違行為にあたると評価することはできない」として、(一審とともに)原告の主張を認めましたが、それを破棄した不当な判決でした。
国旗・国歌に対する起立・斉唱を強制することは、憲法が保証する「思想・良心の自由」に抵触する惧れがあるとして、15年の二審判決では過重な処分を不当としたのに対して、最高裁は「処分」は都教委の裁量権の範囲であるとしたうえで、「式典の秩序や雰囲気」「生徒への影響」を重視したということです。
それは11~12年にかけての最高裁判決が、起立・斉唱の職務命令が「思想・良心の自由の間接的な制約となる面がある」と述べたことを否定するもので、驚くべき後退です。あたかも安倍内閣が登場したのが12年の年末なので、それに合わせて最高裁の反動化が進んだかのようです。
司法が政権の方針に追随するなどは本末転倒そのものですが、それは既に原発差止訴訟では実証されていることです。
レイバーネットの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
渡部通信 : 地に落ちた最高裁 「君が代不起立」再雇用で逆転敗訴判決
レイバーネット 2018年7月20日
「都教委包囲首都圏ネットワーク」、「新芽ML」、「ひのきみ全国ネット」、「戦争をさせない杉並1000人委員会」の渡部です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昨日(7月19日)、最高裁で「君が代」判決があり、これまで一審、二審で勝訴していた都立高校の元教職員の再雇用について、逆転敗訴判決が出された。
二審では、「起立斉唱しなかっただけで、不合格とするような重大な非違行為にあたると評価することはできない」と述べられていた。
それに対し、都教委は上告したわけだが、一般的には「最高裁判所に対する上告の理由は、民事事件及び行政事件においては、憲法違反,法が列挙した重大な手続違反に限られます」となっている。
にもかかわらず、今回の判決では、「都教委の裁量権」を前面に出し、「式典の秩序や雰囲気を一定程度損ない、参列する生徒への影響も否定しがたい」として、都教委の再任用拒否を認めた。
事案はまったく憲法にかかわるものでも、重大な手続き違反にかかわるものでもない。
「裁量権」と「式典の秩序や雰囲気」「生徒への影響」など、二次的なものばかりである。最高裁も地に落ちたものである。
そして、この判決は2011~12年にかけての最高裁判決よりもさらに後退したものとなっている。
そこでは、職務命令に対し、「思想・良心の自由の間接的な制約となる面がある」と述べてあったのである。それさえも否定したことになる。
したがって、これからの日本社会では、公の場で「君が代」斉唱に反対する者は、教員だけではなく一般人でもこのように排除されることになろう。
世界の歴史上、王政復古・反革命(歴史の歯車の逆転)は何回か行われた。日本で言えば、承久の乱や鎌倉幕府滅亡後の一時的な王政復古などがそうだ。
戦後70年余り、日本社会は戦後「民主化」が否定され、再び戦前回帰(「戦後レジームからの脱却」)しつつある。
その象徴的な例が「日の丸・君が代」強制なのである。
(後 略)
東京・全国の仲間の皆さんへ。
被処分者の会・東京「君が代」裁判原告団の近藤です。
「処分撤回を求めて(485)<速報>原告逆転敗訴の不当判決~再雇用拒否撤回第二次訴訟・最高裁判決」を送信します。
【原告勝訴の高裁判決を破棄、逆転敗訴の不当判決
~再雇用拒否撤回第二次訴訟・最高裁判決】
7月19日、うだるような暑さの中、再雇用拒否撤回を求める第二次訴訟の最高裁判決があった。最高裁は一審原告らが勝訴した東京高裁判決を破棄し、逆転敗訴の不当判決を言い渡した。卒入学式で「君が代」斉唱時に起立しなかったことを唯一の理由に再雇用を拒否した都教委=行政に追随し、国の退職後の継続雇用の流れに逆行しする許し難い判決だ。今日は司法が、憲法の三権分立の建前に反し、行政のチェック機能を放棄した日として記憶されるであろう。
私たちは、これからも「『日の丸・君が代』強制は戦争への道」との思いを胸に闘い続ける。
●本日の朝日新聞社説が最高裁判決を厳しく批判していますのでご覧ください。
●原告・弁護団声明をご覧ください。
声 明
1 本日、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は、都立高校の教職員ら24名が、卒業式等において「日の丸」に向かって起立して「君が代」を斉唱しなかつたことのみを理由に、東京都により定年退職後の再雇用職員ないし非常勤教員としての採用を拒否された事件(平成28年(受)第563号損害賠償請求事件)について、教職員らの請求を一部認容した控訴審東京高裁判決(2015年12月10日)を破棄して、教職員らの請求を全面的に退ける不当判決を言い渡した。
2 本件は、東京都教育委員会(都教委)が2003年10月23日付けで全都立学校の校長らに通達を発し(10.23通達)、卒業式等において国歌斉唱時に教職員らが国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することを徹底するよう命じ、これに従わないものを処分するとして、「日の丸・君が代」の強制を進める中で起きた事件である。
本件の教職員らは、それぞれが個人としての歴史観・人生観や、長年の教師としての教育観に基づいて、過去に軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた歴史を背負う「日の丸・君が代」自体が受け入れがたいという思い、あるいは、学校行事における「日の丸・君が代」の強制は許されないという思いを強く持っており、そうした自らの思想・良心から、校長の職務命令には従うことができなかった。
ところが、都教委は、定年等退職後に再雇用職員あるいは非常勤教員として引き続き教壇に立つことを希望した教職員らに対し、卒業式等で校長の職務命令に従わず、国歌斉唱時に起立しなかったことのみを理由に、「勤務成績不良」であるとして、再雇用を拒否したのである。
3 本件において、2015年5月25日の東京地裁判決は、本件再雇用拒否が、国歌斉唱時に起立斉唱しないという行為を極端に過大視しており、都教委の裁量権を逸脱・濫用した違法なものであるとして、東京都に対し、採用された場合の1年間の賃金に相当する金額、合計で約5370万円の損害賠償を命じ、さらに、同年12月10日の東京高裁判決においても、その内容は全面的に維持された。
4 ところが、今回の最高裁判決は、その控訴審判決を破棄し、教職員らの請求を全面的に棄却したものである。
今回の最高裁判決は、東京都の再雇用・再任用手続きにおける裁量につき、あくまで「新たに採用するものであって」などと言いなして極めて広範な裁量を認め、不起立があれば「他の個別事情のいかんにかかわらず」不合格の判断をすることも許されるとした。
最高裁判決は、事件当時において9割を超える高い率で再雇用・再任用がなされていたこと、雇用と年金の連携の観点から原則として採用すべきとされていたことなど、本件における具体的な事実関係を踏まえて検討することをせず、一般的・抽象的な行政の裁量権を是認して第1審及び控訴審における教職員勝訴の判断を覆した。行政の主張に無批判に追随する判決内容であり、司法権の使命を放棄した判決と言わざるを得ない。
5 わたしたちは、このような最高裁の不当な判決に対し、失望と憤りを禁じ得ない。
教師が教育行政からの命令で強制的に国旗に向かって立たされ、国歌を歌わされ、自らの思想良心も守れないとき、生徒たちにも国旗や国歌が強制される危険がある。
都立学校の教育現場で続いている異常事態に、皆様の関心を引き続きお寄せいただき、教育に自由の風を取り戻すための努力に、皆様のご支援をぜひともいただきたい。
2018年7月19日
「日の丸・君が代」強制反対
再雇用拒否撤回を求める第二次原告団・弁護団