サークルの句会で特選となった「梅雨空に 九条守れの女性デモ」の句が、恒例に反して「公民館だより」への掲載を拒否されたり、地方公共団体が護憲集会への会場の提供を断ったり、前文科省事務次官の講演会への後援を教育委員会が断るなど、いまや安倍首相への忖度は中央官僚に留まらずに地方公務員にも広がっています。
その一方で、憲法99条に規定されている「公務員の憲法尊重擁護義務」を首相が率先して破り、改憲を叫ぶという明らかな違憲行為に対しては殆ど批判が出されません。
そんな中 先月30日、高プロ制度の採決があった参院厚労委員会を傍聴しようとした女性(49)が、警務部の職員に、「No 9」と描かれたTシャツでは入館できないと拒否されました(「No 9」の下には「NO WAR」「LOVE & PEACE」がプリントされていました)。
女性が理由を聞くと「意思表示をしているから」ということで、「9ではなく1や5なら良いのか」と訊くと、それは「大丈夫」という回答だったということです。
世界に誇るべき憲法9条の「擁護」を公務員自身が危険視することこそ、大変な違憲状態に他なりません。それらが別に担当者個人の意向によるものではなく、上部からの指示に拠っていることは明らかで、その分なお更深刻と言えます。
安倍政治はここまで日本を歪めました。 LITERAの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
9条Tシャツを着ているだけで国会傍聴から締め出し!
改憲に動き出した安倍政権の「憲法9条」弾圧が深刻化
LITERA 2018年7月4日
安倍自民党の改憲実現に向けた動きが出てきた。5日に衆院憲法審査会を開き、国民投票法改正案の趣旨説明をおこなうことが決定したのだ。
この国民投票法改正案は、国政選挙と同様、憲法改正のための国民投票をショッピングセンターなどでもできるようにするなど一見当たり障りのない内容だが、この審議を踏み台にして改憲議論に突入させたいという安倍政権の思惑がミエミエ。3月の自民党大会で安倍首相が「いよいよ憲法改正に取り組むときがきた」と大号令をかけたように、年内に憲法改正の発議をおこなうという計画は着実に進行しているのだ。
そんななか、国会でゾッとするような事件が起こった。なんと、「9」とプリントされたTシャツを着た女性の国会傍聴を、参院警務部が制止したというのだ。
先月30日にこの女性は以下のようにツイートしている。
〈先日国会傍聴に行ったら、「9がついている物はダメです」と係員に止められました。ネックレスもタグも9は外せと言われます。結局カーディガンで隠して入るように言われました。「NO WAR」もダメなんだって。9はダメで他の数字はOKなんだって。変だよ。〉
女性はツイートとともに当日のファッションの写真も投稿。それは「No 9」と描かれたTシャツで、数字の下には「NO WAR」「LOVE & PEACE」とプリントされている。また、やはり「9」と印刷された手提げバッグも写っている。
「9」「NO WAR」というTシャツを着ているだけで排除される──。このツイートは6000RTを超える大きな反響を呼んでいたが、さらに昨日、東京新聞がこの問題を報道。記事によれば、参院警務部の職員はこう言って女性を制止したという。
「9を付けているね、そのようなものを付けて入ることはできません」
「NO WARとも書いているだろう」
「意志表示をしているものは駄目です」
しかも、女性が「1だったらいいですか」と質問すると、この職員は「1だったら大丈夫」と述べたのだという。さらに、東京新聞が参院警務部を取材したところ、サッカー日本代表・岡崎慎司選手の背番号「9」が入ったレプリカユニフォームの場合は「制止しない」、九条ネギや「銀河鉄道999」のTシャツの場合も「政治的メッセージは含まれておらず、入場は拒まない」と回答しているのだ。
つまり、憲法9条と結びつく「9」の数字や「NO WAR」は「政治的メッセージ」の意志表示と捉えられ、国会の傍聴さえ許されないというのである。
9がふたつ並ぶ憲法99条では天皇と公務員の憲法遵守義務が規定されているが、その遵守義務を課せられた国家公務員が憲法を「危険思想」として取り締まることの倒錯ぶりもナンセンスだが、いちばんの問題は「憲法9条」のタブー化が深刻度を増していることだろう。
じつは、今回のようなケースはこれがはじめてではない。安保法制が成立した直後の2015年10月にも、東京新聞は「『No.9(憲法九条)』と書かれた小さなタグや缶バッジをつけた市民が国会本館や議員会館に入ろうとすると、警備員らに制止される例が相次ぐ」ことを報じている。
ピーター・バラカンは、街で9条Tシャツを着ていただけで職務質問された
さらに、今回の女性が着ていたものとまったく同じTシャツを着用して歩いていただけで、警察から詰問された人物までいる。ラジオDJのピーター・バラカン氏だ。
バラカン氏は2015年10月16日、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組『The Lifestyle MUSEUM』(TOKYO FM)で、その日スタジオに向かう途中、こんな経験をしたと語っていた。
「めずらしく広尾のほうから六本木に向かって有栖川公園の脇を歩いていると、まずひとりの警官にちょっと、変な目で見られて(略)。もうちょっと先を歩くと、中国大使館のすぐ手前のところで2人の警官に、止められました。『あれ? どうしたんですか?』と言ったら、『いや、あの今日これから抗議をする予定ですか?』と聞かれたんですね。ん?いや、特にそんなことはないと『なぜそんなことを訊くんですか?』と言うと、『9条のTシャツを着ているから』と」
何度も言うがTシャツにプリントされているのは「No .9」「NO WAR」「LOVE & PEACE」という文字であって、「アベを殺す」とか「国会議事堂を爆破する」というような“過激な”メッセージではない。にもかかわらず、街で警察に職務質問され、国会の傍聴まで制限されるのだ。これは憲法で保障された「表現の自由」に反するだけでなく、もはや、戦中に政府が特高警察によって市民を社会主義者や反戦主義者という“思想犯”に仕立て上げて取り締まった歴史が繰り返されようとしている証拠だろう。
そして、この過剰な「憲法9条」の取り締まりの背景に、安倍首相が推し進める憲法改正への忖度があることは明白だ。
9条と平和主義を“危険思想”扱いして排除する。その動きを強化させていくことで、社会には「『9条を守れ』と言う人は危ない人物」という認知が広がる。ネット上ではすでに「戦争反対」と訴えることや「平和」を願うことをネトウヨたちが「反日」認定するという状態に陥っているが、このままでは一般社会でも「9条に触れてはいけない」という空気が広がっていくだろう。そして、それこそが改憲に向けた安倍自民党の狙いでもあるのだ。
当時バラカン氏は「ちょっとこの国、もしかしたらちょっとおかしな方向に行き始めているんじゃないかな」と述べていたが、まさにその指摘どおり、事態は深刻度を増して進んでいるのである。 (編集部)