2018年7月14日土曜日

拉致問題に北はゼロ回答 新たな調査・対話を拒否

 韓国には政府が公式に認定した拉致被害者が500人弱います。韓国「拉致者家族会」の崔成竜代表が12日、北朝鮮の指導部に近い消息筋からの情報として語ったところによると金委員長は612日の米朝首脳会談後、関係部署に「再調査の結果を改めて日本側に説明するように」と指示し、日本にこの結果を受け入れるよう要求しているということです
 
 再調査の結果というのは「拉致被害者8人死亡」というもので、2014年のストックホルム合意によって北が「拉致問題について、誠意を持って再調査」したものですが、日本はその報告書の受け取りを拒否したまま現在に至っています。
 
「合意」では、日本にも制裁緩和や在日朝鮮人の地位向上などいくつかやらなくてはならない内容があったのですが、その後北朝鮮が核兵器やミサイルの開発を進めことに対して、当時国連理事国であった日本が北朝鮮制裁決議案をまとめるなどしたため、北朝鮮は「日本サイド一方的に『合意』を破棄したと認識しました。
 忘れてならないことは、日本は拉致問題では被害者ですが、戦前、朝鮮を植民地化し蹂躙した点では加害者なので、一方的に非難できる立場ではないということです。
 
拉致被害者8人死亡」を被害者家族が受け入れられないのは当然ですが、政府も一緒になって単に「受け入れられない」としたままで放置するというのは、拉致問題を解決しようとする姿勢ではありません。国交のない国とはいえ何らかの手ずるを辿って、せめていくつかの生存情報をつかんで、それを北に突き付けるなどの努力をすべきではなかったのでしょうか。そんなこともしないで、被害者家族に向かって常に「全員を帰国させる」など言い含めるのでは、拉致被害の政治利用に他なりません。
 
 安倍首相は、米朝首脳会談でトランプ氏が拉致問題に言及したことを、まるで自分の大手柄であるかのような言い方をしましたが、具体的な内容に入ると北から「解決済み」の発言が出かねないので、簡単に触れるだけでいいという点を繰り返し念を押したと言われます。自分の立場がなくならないようにという自己防衛だけが突出していて、一体何を頼もうとしたのか分からない話です。
 
 北の国営「朝鮮中央通信」は、5月の段階でも米朝会談直前の6月4日の段階でも、一貫して「日本人拉致問題はすでに解決済み」であるとの立場を貫いています。
 トランプ氏が言及したときには金正恩氏はいつでも会談に応じると答えたようですが、直後の14日にウランバートル国際会議での北の対応はそれとは異なるものでした。
 会議終了後、日本政府の代表が話しかけたのに対して北はケンもホロホロの対応で、メディアが北に「日本の代表団と会談しないのか」と訊いても、「会っても話すことがない」「話すことがないのに会ってどうするのか」という回答でした。
 
 米朝会談からもう1ヶ月が経ちましたが日朝の接触はありません。それどころか、その後も安倍首相と河野外相はことあるごとに諸外国に対して北朝鮮への制裁の継続(や強化)を訴えています。それに対して北朝鮮は不快の念を隠しませんが、それは当然のことで、一体なぜそんなにペラペラと北の悪口を言って回らなければならないのかです。一体拉致問題を解決しようという気があるのでしょうか。
 
 冒頭の事態は当然予想されたことなので、それだからしばらく様子見をするということはあってはならない対応です。そうした時間の空費は許されず、いまは全力を挙げて扉を敲くということしかありません。もしも政府が被害者の生存を信じるというのであれば尚更です。
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拉致問題に北“ゼロ回答” 金正恩は新たな調査・対話を拒否
日刊ゲンダイ 2018年7月13日
 北朝鮮の金正恩委員長が拉致問題で、日本政府に対して事実上の“ゼロ回答”をしていたことが分かった。
 韓国の拉致被害者家族でつくる「拉致者家族会」の崔成竜代表が12日、北朝鮮の指導部に近い消息筋からの情報として明らかにした。
 それによると、金委員長は6月12日の米朝首脳会談後、関係部署に「再調査の結果を改めて日本側に説明するように」と指示。日本に対して、この結果を受け入れるよう要求しているという。
 
 北朝鮮は2002年に「拉致被害者8人死亡」と表明。14年5月、日本と北朝鮮のスウェーデンの首都ストックホルムでの会談で、北朝鮮が日本人の拉致被害者や行方不明者について包括的に再調査を行い、日本はその見返りに対北制裁の一部を解除するとの合意に達した。
 その後、北朝鮮は合意に基づく再調査の結果をまとめたが、日本政府はこの報告書の受け取りを拒否したとされる。
 
 金委員長が日本政府に受け入れるよう要求している「再調査の結果」とは、このストックホルム合意に基づく古証文のような報告書のこと。金委員長は「日本はいい加減に報告書を受け取れ」と言っているのだ。
 金委員長はすでに「拉致問題は取り上げず、対話せず、交渉もするな」という「特別な指示」を出したとの情報もあり、今回の指示もその延長線上にある
 
 安倍首相は文在寅韓国大統領やトランプ米大統領に、それぞれ首脳会談で拉致問題を取り上げてくれと泣きつき、それをまるで“大てがら”のように吹聴しているが、金委員長はそんなことなど歯牙にもかけていなかったということ。
 そもそも、他人のフンドシで相撲を取ろうとするのが姑息なのだ。“外交の安倍”が聞いて呆れる。