2018年7月22日日曜日

金正恩氏が「拉致問題」への対応を一変 安倍首相は

 北朝鮮による拉致問題について最近になって我々が知らされたことは、2014年のストックホルム合意に基づいて北が再調査した結果は「拉致被害者8人死亡」で、日本はその報告書の受け取りを拒否したということです。そして安倍首相がその後も「拉致問題の安倍」として、絶えず「拉致被害者全員を生還させる」と豪語し続けて来たことです。
 
 全員死亡という情報は、家族の気持ちを思えばとても受け入れられないものであるのは事実ですが、国として単に受け取れないと突き返すだけで済む話ではありません。現実に受け入れを拒否したままで5年間が無為のままに経過しました。
 それだけではなく、その後北朝鮮が核兵器やミサイルの開発を進めことに対して、当時国連理事国であった日本が北朝鮮制裁決議案をまとめるなどしたため、北朝鮮は「日本サイドが一方的に『合意』を破棄した」と認識し、合意は事実上、無に帰しました(今年になって安倍首相が「ストックホルム合意をベースにして云々」と発言したのは、両国の関係の発展に向けて意味のあることでした)。
 
 日刊ゲンダイによると、金正恩委員長昨年「拉致問題は取り上げず、日本とは対話せず、交渉もするな」という“特別な指示”出していましが、最近、「ストックホルム合意に基づく調査結果を改めて日本側に説明するように」と指示したということです
 これはいわば「日本とは一切口を利くな」というのが、「これを話題にせよ」と変わったことなので喜ぶべきことなのですが、日刊ゲンダイは「却って安倍首相は困窮している」と深読みしています。
 何とも理解しがたいことで、もしも自分がこれまで述べ立てて来たことと辻褄が合わなくなるからというのであれば論外もいいところです。根拠もなく家族会をゴマカシてきたのであれば、まずそのことについてキチンと釈明すべきです。
 
 そもそも外交では米国対北朝鮮のように、非公式な交渉ルートを併せて持つのが常識と言われ、特に拉致被害者の命が掛かっているケースではなおさらです。
 田中均氏はそれなりの交渉ルートを持っていたようなのですが、彼をその役目から罷免しただけでなくその後もツイッターなどで口汚く貶めたのは安倍首相でした。その挙句、受け取り拒否後は交渉ルートはゼロになったのでした。
 
 こうした「受け取り拒否・その後は完全無作為」の愚かしさを繰り返すことは許されません。
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安倍首相を悩ませる 金正恩の「拉致問題」への対応一変
日刊ゲンダイ 2018年7月21日
 安倍官邸は内心、困っているのではないか  。「拉致問題の解決」を最重要課題に掲げている安倍首相。これまで北朝鮮は「拉致問題は解決済み」という態度だったが、ここにきて一転「拉致について日本に説明する」と態度を変えている。北朝鮮の変化が安倍を窮地に追い込むのではないか、という見方が広がっている。
 
 金正恩朝鮮労働党委員長は昨年、「拉致問題は取り上げず、対話せず、交渉もするな」という“特別な指示”を関連部署に出していた。ところが突然、「2014年のストックホルム合意に基づく調査結果を改めて日本側に説明するように」と指示したという。今月中旬、韓国の拉致被害者家族会の代表が明らかにした。
 
 安倍周辺が危惧しているのは、「調査結果の中身」と「トランプリスク」だ。
 ストックホルム合意に基づいて2014年、特別調査委員会を設置した北朝鮮は、日本側に「調査結果報告書」を渡そうとしたが、日本は受け取りを拒否したと報道されている。とても日本側が納得できる中身ではなかったからだとみられている。
 
 朝鮮半島問題に詳しいジャーナリストの太刀川正樹氏が言う。
まだ帰国していない政府認定の拉致被害者は12人います。調査結果を改めて日本側に説明するとしている北朝鮮は、以前、日本に渡そうとした調査結果と同じものを提出する可能性が高い。問題は、その時、日本政府が“調査結果は信用できない”と受け取りを拒否するかどうかです。安倍首相はトランプ大統領に、“拉致問題”について金正恩委員長に伝えて欲しいと依頼し、トランプ大統領も伝えています。事実上、トランプ大統領が“仲介役”になっただけに、受け取りを拒否できるかどうか。受け取ったら北朝鮮の調査結果を事実と認めることにもなりかねない。安倍首相は悩ましいはずです」
 
 横田早紀江さんは、きのう(19日)、「めぐみちゃんら全員が生存して誰ひとり欠けることなく帰ってくるのは難しいかもしれない」と苦しい心情を打ち明けている。安倍は、どうするのか。