先日、国民の強い反対を押し切って「働かせ方」関連法が成立しました。
これによって働く人の環境はどう変わるのか。東京新聞が、主なポイントを解説する連載記事を載せました。原記事には分かりやすく説明したイラストもついているので、ご覧になりたい方はURLからアクセスしてください。。
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<「働き方」どう変わる>(1)高プロ 労働時間、規制なくなる
東京新聞 2018年7月6日
今国会の最大のテーマである「働き方」関連法が成立した。七十年ぶりの大改革と言われる労働法制の見直しで働く人の環境はどう変わるのか。主なポイントを解説する。
「働き方」関連法では、全く新しいタイプの労働者が誕生することになる。「高度プロフェッショナル制度(高プロ、残業代ゼロ制度)」で働く人たちだ。
高プロとは、一部専門職を対象に労働時間規制を外す制度。労働基準法が定める「一日の労働時間は八時間」といった労働時間に関するルールが全て適用されなくなり、働いた時間と賃金の関係が一切なくなる。残業代や深夜や休日に働いた場合の割増賃金も支払われなくなる。
対象者は金融ディーラーやコンサルタントなどの専門職で、「通常の労働者の平均給与の三倍を相当程度上回る水準」の年収を受ける人だ。政府は千七十五万円以上を想定し、具体的には今後、経済団体や労働組合が参加する労働政策審議会で決める。
制度を導入するにはいくつかの手順がある。導入を検討する企業は、経営者と労働者が参加する労使委員会をつくり、そこでの五分の四以上の賛成で導入を決める。その後、対象となる仕事内容や労働者を決め、書面による本人の同意があって適用される。この同意は一年ごとに確認が必要で、労働者の意思で途中で離脱できる規定も盛り込まれたが、実際に離脱できるか疑問視する声もある。
高プロは何週間にもわたって一日二十四時間働くということも法律上は可能となる。そのため制度には健康確保策も講じられた。具体的には年百四日以上、四週で四日以上の休日の取得が義務となる。在社時間と社外で働いた時間の合計の「健康管理時間」が著しく長くなった場合は、医師の面接が必要となっている。
高プロは経済界が導入を強く要望する一方、労働界は反対し続けてきた。制度の詳細が決まっていない部分も多く、来年四月の施行に向けて慎重な議論が求められる。(この連載は木谷孝洋が担当します)
<「働き方」どう変わる>(2)残業規制 月100時間未満、高い上限
東京新聞 2018年7月7日
「働き方」関連法は、二〇一五年に大手広告代理店電通の社員だった高橋まつりさんが過労死した事件が社会問題化したことが、制定への後押しになった。柱の一つには、一九四七年の労働基準法制定以来初めてとなる残業時間の罰則付き上限規制が盛り込まれた。
これまでは労使で合意すれば残業時間を上限なく設定できた。「働き方」関連法では、月四十五時間、年三百六十時間を原則とし、繁忙期でも年七百二十時間以内、月百時間未満、二~六カ月平均八十時間以内とした。月四十五時間を超えられるのは年六回までとなる。違反した企業には六月以下の懲役または三十万円以下の罰金が科される。大企業は二〇一九年四月、中小企業は二〇年四月から施行される。
上限規制は、長時間労働の是正に一歩前進だが、上限が高すぎることに批判もある。月百時間、二~六カ月平均で八十時間は、過労死を認定する際の基準となる。法律でその水準を容認することで「過労死認定が難しくなる」との懸念が過労死遺族らから出ている。
年七百二十時間の上限には、休日労働が含まれていない。これを含めると年九百六十時間の残業が可能になる点も指摘された。
規制の適用が除外される業種が多いことも課題だ。過重労働が著しい建設、自動車運転(運輸)、医師は五年間、適用が猶予される。運輸は五年後も他業種より緩い年九百六十時間の上限規制となる。人手不足や業務の特殊性を踏まえた措置だが、過労死の多い業界が「働き方改革」から置き去りにされる不安は根強い。
政府は残業時間規制の実効性を高めるため、全都道府県に「働き方改革推進支援センター」を設置し、中小企業などの取り組みを支援する。