北朝鮮は02年の日朝首脳会談で、横田めぐみさんら13人の拉致を認め、日本政府が被害者に認定した計17人のうち5人が帰国し、残る12人について北朝鮮は「8人が死亡、4人が未入国」と主張していました。
北朝鮮は、ストックホルム合意を交わす直前に、水面下の協議で他に田中実さんの入国を認めましたが、日本側との最近の接触で、金田龍光さんについても「入国していた」と初めて伝えました。それ以外の入国者はいないということです。
これまで安倍首相が拉致被害者家族に対して話してきたことととはまるで違う話です。
天木直人氏は、「見えて来た拉致問題解決の落としどころ」として、
「安倍首相は前言をひるがえすのは朝飯前なので、拉致被害家族らに補償を与え、どのような結果になろうとも、日朝関係の改善のために受け入れて欲しいと迫ることで、解決しようとするだろう」
と述べました。
もはや拉致問題を自己顕示に利用出来る見通しはなくなったので、そうするしかないでしょう。勿論02年以降、自分が拉致被害家族や国民を欺き続けてきたことについては、何の痛痒も感じないことと思います。
東京新聞と天木直人氏のブログの記事を紹介します。、
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北「新たな入国者ない」 拉致問題 田中、金田さん以外
東京新聞 2018年7月22日
日本人拉致問題を巡り、北朝鮮が日本側との最近の接触で、四年前に入国を認めた神戸市の元ラーメン店員田中実さん=失踪当時(28)=と、同じ店の元店員金田龍光(たつみつ)さん=同(26)=以外に「新たな入国者はいない」と伝えていたことが二十一日分かった。日本政府関係者が明らかにした。伝達時期は、米朝首脳会談が開かれた六月十二日前後とみられる。
北朝鮮は米国や韓国と対話姿勢に転じた後も、拉致問題については再三「解決済み」と訴えているが、具体的な主張内容が明らかになったのは初めて。拉致問題の進展は現時点では厳しい情勢で、日朝首脳会談を目指す安倍晋三首相は難しいかじ取りを迫られる。
日本の外務省幹部は共同通信の取材に「コメントできない」と答えた。
政府は、田中さんを拉致被害者と認定、金田さんを拉致の可能性が排除できない行方不明者としている。
北朝鮮は、拉致問題の再調査などを盛り込んだ二〇一四年五月のストックホルム合意後の同年秋ごろ、田中さんと金田さんの入国情報を、再調査の「中間報告」として示していたことも新たに判明した。
北朝鮮は〇二年の日朝首脳会談で、横田めぐみさん=同(13)=ら十三人の拉致を認めた。日本政府が被害者に認定した計十七人のうち五人が帰国。残る十二人について北朝鮮は「八人が死亡、四人が未入国」と主張していた。田中さんは未入国とされた一人だった。
北朝鮮は、ストックホルム合意を交わす直前に、それまでの主張を一転し水面下の協議で田中さんの入国を認めた。この際、金田さんについても「入国していた」と初めて伝えてきた。
田中さんは一九七八年六月に日本を出国後、消息を絶った。元工作員とされる男性(故人)が告白して発覚した。田中さんと同じ養護施設出身で在日韓国人の金田さんは七九年十一月ごろ、欧州訪問の打ち合わせのため「東京に行く」と周囲に語ったまま、神戸を離れ行方不明になった。
見えて来た拉致問題解決の落としどころ
天木直人のブログ 2018年7月22日
きょう7月22日の共同通信がスクープ報道し、一部の地方紙(下野新聞)が書いた。
拉致問題をめぐり、北朝鮮が日本側との最近の接触で、4年前のストックホルム合意の時に入国を認めた2名(神戸市の元ラーメン店店員の田中実さんと金田龍光さん)の二人以外に、あらたな入国者はいないと日本側に伝えていたことがわかったと。
きのう21日、日本政府関係者が明らかにしたと。
北朝鮮は拉致問題については再三にわたって「解決済み」と訴えているが、具体的な内容が明らかになったのはこれが初めてだと。
このスクープ報道は、金正恩が「2014年のストックホルム合意に基づく調査結果をあらためて日本側に説明するように」指示したとされることと平仄が一致する。
つまり、もはや、いくら再調査してもあらたな調査結果は出て来ないと言う事だ。
もし、安倍首相が、それでもその調査結果の受け取りを拒否し続けるなら、安倍首相は拉致問題を自らの手で解決する事は出来ないということだ。
そして、米朝首脳会談におけるトランプ大統領の要請に従って金正恩委員長が日本側に再説明した以上、トランプ大統領は、もはやそれ以上金正恩委員長に拉致問題について注文をつけるわけにはいかないし、そうはしない。
いよいよ、安倍首相は決断を迫られれる事になる。
はたして安倍首相は拉致問題の解決をどのように自らの手で行うのだろうか。
そう思っていたら、日刊ゲンダイ(7月22日号)が教えてくれた。
横田早紀江さんが7月19日につぎのような苦しい心情を打ち明けたというのだ。
「めぐみちゃんら全員が生存して誰ひとり欠けることなく帰ってくるのは難しいかもしれない」と。
こんなことを横田早紀江さんが語ったことは、私の知る限りではじめてだ。
この早紀江さんの発言が、どこで、どのような人たちの前で、行われたかは日刊ゲンダイの記事では不明だ。
しかし、日刊ゲンダイが書いたぐらいだから、安倍首相が知らないはずがない。
安倍首相はこの早紀江さんの言葉を知って、シメタ!と小躍りしたに違いない。拉致問題の落としどころを見つけたに違いない。早紀江さんがそう思い始めたのなら後は簡単だ。
拉致被害家族らに補償を与え、どのような結果になろうとも、日朝関係の改善のために受け入れて欲しいと、迫ればいいのだ。
これまで言って来た事と違うじゃないかと批判が出るかも知れない。
しかし、安倍首相にとって、前言をひるがえすのは朝飯前だ。これまでの政策の誤りを、詭弁でごまかすのはいつもの通りだ。そして、批判はそれ以上大きくならずに消えて行くのも、いつもの通りだ。
安倍首相は政権維持のためには何でもやる。どうやら拉致問題のサプライズ解決に向けて動き出すような気配である(了)