2018年7月14日土曜日

14- カジノは逆行 日本らしさ維持こそ訪日客増加に必要だ

 政府は国会の会期を22日まで大幅に延長しました。その間に未曽有の豪雨災害が発生し、政府の対応の遅れが批判されました。しかし政府にその反省はなく、災害報道に隠れて国会審議にスポットが当たらないのをいいことに、やりたい放題を加速させています。
 
 11には、国民の多くが反対している自民党・党利党略のための参院の定数増参院本会議で可決し、その日のうちに衆院に送りました。本会議に先立つ11日の特別委員会では、野党が提出した委員長不信任動議を否決し採決に踏み切りましたが、野党が出した3つの対案は採決されず、自民党案のみ討論を省略して採決に入るという暴挙でした。
 
 政府はこのあと、カジノ法案と水道事業民営化法案の二つを成立させようとしています。
 日本にはカジノ運営のノウハウを持った企業はないので、アメリカのカジノ王たちが虎視眈々とその成立を狙っているのは周知のとおりです。
 トランプ氏は、中間選挙前にカジノ法を成立させてそれを自分の実績にしようとして、安倍首相に早期成立を約束させました。
 
 水道民営化法案も同様で、本来民営化すべきではないものですが、これを商機と見ている米ベクテル社などが狙っているもので、麻生財務相が法案の成立を米国に約束したと言われています。
 
 経済学者の高橋乗宣は、それとは別の角度から、「カジノ法」は害悪のみが大きくて到底成長戦略にはならないと指摘しています。
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 日本経済一歩先の真相
カジノは逆行 「日本らしさ」維持こそ訪日客増加に必要だ
高橋乗宣 日刊ゲンダイ 2018年7月13日
 安倍政権がいわゆる“カジノ法案”の成立に向け躍起になっている。野党が「平成30年7月豪雨」の被害対応を優先するため、カジノ法案の参院審議を見送るべきだと反発する中、与党が押し切り、審議を強行。豪雨による死者・行方不明者は230人を超えたにもかかわらず、安倍政権は豪雨被害の対応より、カジノ法案の成立が大事のようだ。
 
 安倍首相はカジノ解禁を「成長戦略の柱」と位置づけ、「もっともっと、海外からの訪日客を呼び込みたい」と意気込んでいるが、この発想は大きく間違っている。すでに訪日外国人の数は5年連続で過去最高を更新。今年は初めて3000万人を突破する可能性が高まっているが、彼らを引き付けているのは、カジノとは正反対の「日本らしさ」だ。
 
 あるテレビ番組の調査によると、訪日外国人が魅力を感じる東京の人気スポットの1位は、明治神宮。2位は浅草の浅草寺で、3位は銀座のデパートの地下食品売り場と続く。デパートには日本の食品がズラリと並び、そこから好みの品々を選び出すことに外国人は魅力を感じているのだ。
 それぞれ共通しているのは日本の伝統文化であり、和風のデザインであり、建物などの雰囲気を含めた日本ならではの「味わい」である。私の故郷、広島でも宮島の厳島神社や、被爆地として平和記念公園や原爆ドームに、大勢の外国人客が詰めかけている。
 
 訪日外国人の多くは日本の文化や技術に触れ合うことに喜びを感じ、日本らしい雰囲気に魅了されている。それなのに、カジノで海外から訪問客を呼び込もうという考えは、ナンセンスの極みだ。安倍政権は全く現実が見えていない。
 
 カジノを成長戦略の柱に掲げ、海外からギャンブル好きをジャンジャン招くのは、外国人から、日本の良さを感じる機会を奪うことにもなる。海外からの訪日客を本当に増やしたいのなら、彼らが魅了されている日本の伝統技術や食文化など長年の歴史が培ってきた「日本らしさ」を生き永らえさせることが大事だ。
 
 どうせ、ギャンブルで外国人からお金を巻き上げるつもりなら、日本らしく囲碁や将棋、丁半バクチでもやらせた方が、よっぽどマシだ。安倍政権はカジノ解禁によって、日本をギャンブル依存国家にしようとしているとしか思えない。
 カジノ法案の成立にシャカリキの安倍首相からは、日本の伝統や文化に誇りを感じている気配は全く感じられない。常日頃から愛国者ぶっているが、そんな気持ちは皆目ないように思えてならない。 
 
 高橋乗宣 エコノミスト
1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。