2018年7月9日月曜日

<核なき世界目指して> 第1回は川崎哲氏にインタビュー(東京新聞)

 核兵器の開発・使用を全面的に禁じる「核兵器禁止条約」が国連で採択されて7日で1年になりました。
 ・英・仏そしてロシアなどの核保有国は条約に参加しませんが、米国の「核の傘」に頼っているとして、日本条約に加わらない立場を貫いています。
 その一方で北朝鮮に対しては、核兵器(や日本を射程に入れるあらゆるミサイル)の完全撤廃を声高に叫び続けています。
 核兵器の完全撤廃を北に要求するのであれば米国にも要求するべきだし、あらゆるミサイルの廃棄を北に主張するのであれば、北朝鮮攻撃能力を有する在日米軍を温存するのは筋が通りません。
 
 東京新聞が核兵器禁止条約1年目に当たり、「核なき世界」の試金石とも言える北朝鮮の非核化を中心に、各界の関係者にインタビューするシリーズを開始しました
 
 東京新聞の記事「核兵器禁止条約1年 日本不参加のまま」も併せて紹介します。
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<核なき世界目指して> (1)条約署名こそ非核化の道
東京新聞 2018年7月8日
 核兵器禁止条約が採択されて一年。今年六月に史上初の米朝首脳会談が実現したが、北朝鮮の非核化への道筋は明らかになっておらず、米ロ間の核軍縮も進んでいない。「核なき世界」の試金石とも言える北朝鮮の非核化を中心に、各界の関係者にインタビューする。初回は、同条約を推進した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さんに聞いた。(大杉はるか)
 
  -現状では条約に核保有国の参加は見込めない。
「条約が発効すれば、未加入国も無視できない存在になる。締約国が増えるほど拘束力が強まる
 
  -米朝首脳会談の際にシンガポール入りしたそうだが、どんな思いからか。
「首脳会談に直接声を届けたかった。核兵器の被害を受ける市民社会(の代弁者)として首脳外交に参加する資格や責任があると思った」
 
  -米朝首脳は朝鮮半島の完全な非核化で合意したが、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」は共同声明に盛り込まれなかった。
「『核兵器は悪』という認識を決定的に欠いたまま、グレートディール(偉大な取引)と思ってやっている。(取引でなく)国際法に基づいて、朝鮮半島を完全非核化すべきだ。核兵器禁止条約こそCVID。韓国も北朝鮮も署名すればいい。核保有国の米国が禁止条約を嫌うなら『朝鮮半島非核化条約』でもいい
 
  -米朝会談は北朝鮮の非核化と、体制保証を取引したようにも見える。
「非核化も平和も必要。(しかし)平和を担保するために、一定量の核兵器に目をつぶるという議論がまかり通ることは警戒しなければいけない。核兵器付きの平和は長続きせず、大変危険だ。こうした考えとは決別しなくてはいけない」
 
  -日本政府は、北朝鮮の非核化で費用負担や技術支援を検討している。
「現実的に非核化は北朝鮮だけではできない。日本は技術もお金も人もたくさん出した方がいい。それが日本の利益にもつながる。被爆国として、核兵器は悪だと口で言うだけでなく、プレーヤーになるべきだ」
 
  -朝鮮半島は最後に残った冷戦とも言われる。
「東西冷戦が終わったとき、約六万発の核兵器が五年間で半分に減った。朝鮮半島で冷戦が終わるなら、核兵器を持つ理由がなくなる。そのとき、地域の人々が完全非核化という秩序でやっていこうと思えるかが重要だ。韓国も日本も核の傘を欲して、北朝鮮だけ核の傘がないというのはあり得ない。最終的には韓国、日本が(米国の核に頼らないと)腹をくくれるかどうかだ
 
 <かわさき・あきら> 
   1968年、東京都生まれ。東京大卒業後、平和活動を進めるNPO法人事務局長などを経て、2003年からピースボート共同代表。10年からICANの運営に携わる。
 
 
核兵器禁止条約1年 日本不参加のまま
東京新聞 2018年7月8日
 【ニューヨーク=赤川肇】核兵器の開発・使用を全面的に禁じる「核兵器禁止条約」が国連で採択されて七日で一年になった。この間、条約制定に尽力した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))」がノーベル平和賞を受賞し、国際的な機運は高まったが、米国、ロシアなどの核保有国や、米国の「核の傘」に頼る日本は条約に加わらない立場を崩していない。ICANは二〇一九年末までの条約発効を目標に、各国への働き掛けを強化する構えだ。
 
 条約は百二十二カ国の賛成で採択された。国連によると、五日までに五十九カ国が署名し、うちオーストリア、キューバ、コスタリカ、ガイアナ、バチカン、メキシコ、パラオ、パレスチナ、タイ、ベネズエラ、ベトナムの十一カ国が国内手続きを終えて批准した。条約は五十カ国が批准した九十日後に発効する
 
 核保有国の米国などは条約を「国際的な安全保障の環境を無視している」と批判し、不参加の立場。日本は核保有国の賛同を得られない条約は「実効性に乏しく、国際社会の分断を深める」と主張している。
 
 一方、被爆者団体や国際社会は、日本に対し「唯一の戦争被爆国として世界的運動に加わるべきだ」(キッカート・オーストリア国連大使)と要望。ICANは各国の立場をホームページで解説し、日本について「自国の安全保障のために米国の核兵器が不可欠と主張している」と紹介する。
 
 ICANのベアトリス・フィン事務局長は五月、本紙などの取材に、条約を拒んでいる国にも署名・批准を求めているとし、署名開始から二年となる一九年九月までの五十カ国批准という目標の達成を「確信している」と話した。
 
核兵器禁止条約> 核兵器の開発、実験、生産、製造のほか所有、保有、備蓄を禁止。禁止事項には、核抑止力を意味する「使用または使用するとの威嚇」も含まれる。「核兵器使用の被害者の受け入れがたい苦痛に留意する」として「hibakusha(被爆者)」に触れている。