沖縄で米軍絡みの事件・事故が後を絶たない原因は、在日米軍の特権的な立場を定めた日米地位協定にあると言われます。
第二次世界大戦の敗戦国である日本、ドイツ、イタリアにはいまも米軍が駐留していて、それぞれが米国との間で地位協定を結び、米軍の特権的な立場を保証しています。
日本は60年に日米地位協定を締結して以来一度も改定することなく現在に至っていますが、ドイツでは93年に改定し、「米軍機にもドイツの航空法が適用され、夜間飛行が制限される。訓練はドイツ航空管制の事前許可が必要」などの改善を勝ち取りました。
イタリアでも98年、米軍機がロープウエーのケーブルを切断して20人が死亡した事件を機に、新たな協定を締結し、米軍の訓練の許可制度や、訓練飛行への規制が大幅に強化されました。
沖縄県はそうした実態に鑑み、今年、基地対策課の職員をイタリアとドイツに派遣し、在欧米軍基地の運用実態、特に基地の排他的管理権について調査しました。
日本には、さらに日米地位協定の運用を協議する日米合同委員会という機関があり、各省庁から選ばれた日本の官僚と在日米軍のトップが委員になって月2回、60年以上に渡って定期的に開かれています。かつてそこに初めて出席した米国務省の部長は、そこに「米軍が日本官僚に指示を与える占領中にできた異常な関係」が温存されていることに驚き、廃止を主張しましたが、在日米軍はそれを拒否しました。
日本政府はこの屈辱的な組織をあたかも聖域であるかのように扱い、手を付けるのはおろか組織の存在自体を事実上秘匿して来ました。ところが昨年11月、韓国※では「米韓合同委員会」の合意内容について、「軍事機密や米軍の内部情報」を除いて、基本的に公表することになりました。それは韓国の市民が訴訟などを通じて合同委員会の内容を公開するよう働きかけた結果だということです。
イタリアのディーニ元首相は、沖縄県の調査員に「米国の言うことを聞いているお友達は日本だけだ。沖縄が抱える問題は、日本の政治家が動かないと解決が難しい」と話したということです。トランプ氏との「特別」の友情を海外にまで主張する安倍首相が、こうした地位協定の改定に取り分け消極的なのはどういう訳なのでしょうか。
沖縄県の調査結果にも触れた東京新聞の記事を紹介します。
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日米地位協定 動かぬ改定 独伊は事故を機に見直し
東京新聞 2018年7月3日
沖縄県うるま市で二〇一六年に女性会社員が元米軍属の男に殺害された事件で日米両政府は、日米地位協定に基づかない形で、遺族に賠償金を支払うことで合意した。在日米軍の特権的な立場を定めた地位協定は、沖縄で米軍絡みの事件・事故が後を絶たない原因とされる。県は、日本と同じ第二次世界大戦の敗戦国であるドイツ、イタリアが米国と結んだ協定と比べて、抜本的な改定を訴えている。(村上一樹)
うるま市の事件後、日米は軍属の範囲を縮小する補足協定を結んだが、地位協定の見直しに踏み込まなかった。賠償金を巡っても、日本側は地位協定に基づく賠償を求めたが、米側は、元米軍属の男は「米軍の被用者」に当たらないと主張。協定外の「自発的、人道的な支払い」にだけ応じた。不足した場合、日本側が見舞金として対応する。
沖縄では米軍絡みの凶悪事件や米軍機の事故が繰り返され、県は地位協定に問題があるとして改定を求め続けてきた。その一環として、米軍が大規模に駐留するドイツとイタリアに職員を派遣し、両国と米国との地位協定を調査。県のサイトで公表した。
ドイツでは東西統合前の一九八八年、航空ショーで米軍機が墜落し、七十人以上が犠牲になる事故が発生。これをきっかけに九三年、地位協定が改定された。米軍機にもドイツの航空法が適用され、夜間飛行が制限される。訓練はドイツ航空管制の事前許可が必要。
米軍基地内に自治体職員の立ち入り権も認められ、ドイツの警察官が常駐。騒音軽減委員会が設置され、自治体の意見を米軍が聴く仕組みもある。
イタリアでも九八年、米軍機がロープウエーのケーブルを切断してスキー客二十人が死亡したことを受け、その後、新たな協定を締結。米軍の訓練の許可制度や、訓練飛行への規制が大幅に強化された。
対照的に日米地位協定は六〇年の締結以降、一度も改定されていない。原則として米軍に国内法は適用されず、訓練の詳細情報は知らされない。地域の委員会も設置されていない。沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は先の「慰霊の日」平和宣言で「県民は、広大な米軍基地から派生する事件・事故、騒音に苦しみ続けている」と訴えた。
しかし、安倍政権は協定の見直しに消極的。外務省の担当者は「日米地位協定が、他の地位協定に比べて不利ということはない」と言い切る。
イタリアのディーニ元首相は、沖縄県の調査にこう話したという。「米国の言うことを聞いているお友達は日本だけだ。沖縄が抱える問題は、日本の政治家が動かないと解決が難しい」
米国との地位協定の比較 (沖縄県調査)
駐留米軍への国内法の適用
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米軍基地への立入権
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訓練演習への関与
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日 本
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国内法は原則適用され
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日本側の施設区域内
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日本側に規制権限なし。
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ない
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への立入権の明記なし
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訓練の詳細な情報通報なし
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ドイツ
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米軍施設の使用や訓練
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ドイツ連邦、州、自
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米軍訓練・演習にドイツ側
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・演習に国内法適用
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治体の立入権明記
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の許可、承認など必要
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イタリア
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米軍の訓練行動などに
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イタリア軍司令官は
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イタリア軍司令官への事前
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対し手国内法順守義務
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米軍基地に自由に
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通告や、イタリア側の承認
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立入可能
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など明記
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