2018年7月15日日曜日

15- 安倍政権下で東京が豪雨災害に見舞われたら

「東京で大災害が起きると大変だ」という言い方には語弊がありますが、人口の密集している首都を激甚な災害が襲い、国政の機能がマヒする事態が起きれば大悲劇であるのは事実です。
 
 今回の西日本豪雨大災害で明らかにされたのは、安倍政権はロクな災害対策をしていない上に、災害が発生してからも人命救助に関して全く有効に対処できない、という実態です。
 五十嵐仁法大名誉教授「安倍首相の危機意識は歪んでい。自然災害が頻発する日本のトップでありながら防災に対する感覚は貧弱で、いつ来るとも分からない軍事的脅威には徹底的に備えようと国防力を肥大化させている。優先順位を完全に間違えていと批判しています。
 
 日刊ゲンダイが、「安倍政権で次は東京という恐怖」という記事を載せました。
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防災にどれだけ本気? 安倍政権で「次は東京」という恐怖
日刊ゲンダイ 2018年7月14日
(阿修羅14日付より転載)
 もはや悲劇と言うほかないだろう。生活再建のメドが立たない中、殺人的な暑さに見舞われる被災地の惨状には目を覆うばかりである。平成に入って最悪の被害をもたらした西日本豪雨による死者は14府県で200人を超え、安否不明者はなお50人を数えている。近畿から九州まで広範囲に大雨特別警報が出されてから1週間。20万戸以上がいまだ断水し、15府県で6000人あまりが避難生活を余儀なくされている
 
 気象庁は13日、猛暑日が続く恐れがあるとして関東から九州に高温注意情報を発表。「8、9月は平年より高い傾向」「(最高気温が)39~40度の可能性がないとは言えない」などと注意喚起した。蒸し風呂状態の日本列島で、被災地も例外ではない。
 甚大な被害を受けた岡山と広島はきのう、今年最高気温を記録。この週末も体温を上回りそうな酷暑になるとみられている。朝日新聞によると、12日時点で年齢や死亡状況が明らかになっている141人のうち、60歳以上が100人で7割を超えたという。
 
「災害弱者」とされる高齢者ほど犠牲を強いられているのが浮き彫りである。西日本豪雨は突然発生した大地震とは違う。凄まじい降雨量は予測され、警報も発せられていた。それなのに、なぜこれほど被害が広がり、犠牲者を増やしたのか。防ぐことはできなかったのか。
 
■被災者は「麻生、安倍に言ってもムダ」
 被災地を取材したジャーナリストの田中龍作氏は言う。
「安倍首相が初めて視察に入った倉敷市立第二福田小の体育館に避難している住民は、〈政府の対応が遅かったわな〉と口を揃えていました。気象庁が大雨としては異例の緊急会見で警戒を呼び掛けた当日に開かれた赤坂自民亭の宴会については、ほぼ知らなかったですね。体育館にテレビはなく、電波状況も悪くて情報を入手しづらい環境にあった。それで一連の話を伝えると、〈えっ!?頭に来るなあ〉と怒りをあらわにする方もいれば、〈麻生さん、安倍さん。あのレベルの人たちには何を言っても無駄〉という諦めも聞こえました」
 
 被災者の憤りは当然だ。気象庁の緊急会見から非常災害対策本部の設置まで66時間を要した。各地に避難勧告が出され、死者・行方不明者が続出する中、安倍首相がやったことは「7月5日からの大雨に関する閣僚会議」に15分出席しただけ。国民が死に直面する災害に見舞われる中、私邸にこもっていたのだから、この男の危機管理はメチャクチャ。「空白の66時間」に対応を急げば、被害を食い止められた可能性は決して小さくなかった。北朝鮮のミサイル脅威には「国民の生命と財産を守るために最善を尽くす」と冗舌だったのに、被災者は放置。冷淡な本性がアリアリと浮かび上がる。
 
豪雨「東京直撃」で死者4600人、経済損失100兆円 
 人命軽視の政権のもと、大規模災害が首都圏を襲ったらどうなるのか。豪雨や地震が首都・東京を直撃したら、この国は一体どうなってしまうのか。
 中央防災会議の試算は衝撃的だ。関東を北から東に流れる利根川流域の72時間平均雨量が約320ミリと想定した場合最大で死者数2600人に上り、86万世帯が浸水。孤立者は110万人に達するという。ライフラインもメタメタだ。電力59万戸、ガス26.6万戸のほか、上水道14万人、下水道180万人に影響が出るという。埼玉の奥秩父から東京湾に注ぐ荒川流域で72時間平均降水量が550ミリの想定では、死者数2000人、51万世帯の浸水、孤立者86万人とされている。
 
 西日本豪雨で観測した72時間雨量は高知県馬路村1319.5ミリ、広島県呉市465.0ミリ、愛媛県松山市360.5ミリを記録した。同様の現象が東京で起きれば、首都は壊滅的ダメージを受けるということだ。
「首都水没」の著者で、リバーフロント研究所技術参与の土屋信行氏はこう言う。
「西日本豪雨と同規模の降雨量に襲われたら、東京はひとたまりもありません。都内の雨水は下水管を通じて排水されますが、対応能力は1時間に50ミリ。排水能力は追いつかず、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区などの海抜ゼロメートル地帯はすべて水没するでしょう。都心部を縦横する地下鉄も脅威になる。トンネルはキレイに整備された巨大な水道管のようなもので、ひとたび大量の水が流れ込めば一気に押し流されてしまいます」
 
 東京メトロの町屋駅や北千住駅が水没した場合、12時間後には丸の内や大手町周辺も水没してしまうという。
「今年6月に土木学会が発表した資料によると、洪水や高潮による被害が東京で発生した場合、建築物などの資産被害は総額65兆円と推定され、経済被害も合わせれば損害は100兆円を超えるとみられます。もっとも、これは西日本豪雨より小規模な室戸台風(1934年)を想定したものに過ぎません。首都機能を守るためにはスーパー堤防の整備を拡大し、排水能力を高めるなど、インフラ整備を早急に進める必要があります」(土屋信行氏=前出)
 
 活断層だけでなく、地震が起きるプレート境界も複雑に重なる首都圏は大規模な首都直下地震の発生も想定されている。地震調査委員会が先月末に公表した「全国地震動予測地図2018年版」によると、30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる確率は千葉市85%、横浜市82%、水戸市81%、さいたま55%、東京48%。中央防災会議はM7.3の都心南部直下地震の発生によって、最大で死者2.3万人、全壊・焼失家屋は61万棟に達し、被害額は95兆円とも試算している。この政権で「次は東京」が現実になると想像しただけで戦慄が走る。
 
■「内閣不信任に値する」49.5%
 作っただけのハザードマップ、首都圏の脆弱さ、地震にも打つ手なし……。それなのに、国防には血道を上げるのが安倍だ。第2次安倍政権発足以降、中国や北朝鮮の脅威をあおり続け、防衛費は5年連続で拡大。年末に策定する新防衛計画大綱で、防衛費の対GDP比1%枠を撤廃して2%に倍増させることを自民党に提言させた。過去最大5兆円台の防衛費を、さらに10兆円規模まで膨らませるつもりだ。米朝対話の再開で北朝鮮の脅威が薄まる中、6月に閣議決定した「骨太の方針2018」で「防衛力を大幅に強化する」と明記。8月の概算要求では過去最高の5兆円超の防衛関係費を要求するという。
 
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。
「安倍首相の危機意識は歪んでいます。自然災害が頻発する日本のトップでありながら防災に対する感覚は貧弱で、いつ来るとも分からない軍事的脅威には徹底的に備えようと国防力を肥大化させている。東アジア情勢の変化を踏まえればなおさらのこと、優先順位を完全に間違えています」
 
 時事通信の世論調査(6~9日実施)で内閣支持率は前月比1.5ポイント増の37.0%、不支持率は2.5ポイント減の40.9%という結果が出た。微増する理由が判然としないが、不支持が支持を上回る状況は5カ月続く。この数字以上に不信感は強まっているといっていい。野党が内閣不信任決議案の提出を検討する中、モリカケ問題をめぐる政権の対応が不信任に値するかとの問いには「値する」が49.5%を占め、「値しない」の28.1%を大きく引き離した。アベ自民党が強引に成立させようとしている2法案にも反発が強まっている。参院合区対策で定数6増を狙う公職選挙法改正案は反対49.8%、賛成23.3%。カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案は反対61.7%、賛成22.1%だった。
 
「西日本豪雨による被災に日本中が心を痛めている中、担当大臣の石井国交相を国会に張り付け、ドサクサ紛れに自分勝手ならぬ“自民勝手”な法案を通そうとしている。安倍首相をはじめとする自民党の政治家は人間が腐りきっています。一連の対応を見て、改めてそう感じました。モリカケ問題であれほどデタラメをやりながら、内閣支持率は下げ止まり傾向を見せている。それで国民をナメ、タカをくくっているのでしょう」(五十嵐仁氏=前出)
 防災には目もくれない政権でいいのか。この国が沈みゆくのをただ眺めていていいのか。