2018年7月26日木曜日

26- グローバルホークもイージスアショアも役に立たない

 安倍首相は約束した「国土強靭化」を何も行わないで、倉敷市真備町の大惨事を引き起こしました。
 場所はそれぞれ異なるにしても、毎年必ず来る豪雨災害の対策をしない一方で、ありもしない北朝鮮の脅威を煽っては、役に絶たない米国製の兵器を爆買いしています。
 そしてそれでもまだ不足だとして、今度は防衛費を2倍に上げる(5兆円→10兆円)ことを目指しています。増額分の大半が兵器の爆買いに投じられるのは明らかです。
 
 14日付の孫崎享氏の連載記事「日本外交と政治の正体」によると、田母神俊雄・元航空幕僚長が、少しも役に立たない兵器として米国製の無人偵察機「グローバルホーク」と、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を挙げました。
 グローバルホークの偵察映像を日本側は可視化することは出来ずに、すべて米国に送られ、日本が映像を見るには費用を負担して米国から情報を送ってもらうシステムになっているということです。要するに高価な偵察機本体を買わされても、それで得られるデータはすべて米国が独占し、日本は有料でその一部を分けてもらうというわけです。こんなバカな話を一体誰が決めたのでしょうか。
 
 イージス・アショアについては、迎撃ミサイルの速度は340m/秒程度なのに、飛来するミサイルの速度は2000~3000m/秒と5倍以上のため、例えば北朝鮮から飛来したミサイルを300キロ遠方で迎撃するためには、北が発射する前に迎撃ミサイルを発射しないといけないことになり、全く役に立たない兵器ということになります。
 そもそも300キロ先のサイズがせいぜい1~2mクラスの弾頭に衝突させるには、それだけの軌道の精度に加えて、標的とのすれ違いを避けるためには、標的に到達する時刻の誤差を1000分の1秒程度に抑える必要があります。しかしそんなに精密な速度制御が実現される筈はありません。
 要するに迎撃ミサイルの効果は「ゼロ」というのが真相です。それを迎撃率が85%に高まったなどと言い立てる日本の政治家や評論家は「無知」以外のものではありません。
 
 それにそもそも米国がイージスアショアを日本に設置させたい真の理由は、超強力なレーダー網を敷設させ、その情報を本国で常時監視することで、自国の対ミサイル防衛の役に立てるということです。
 
 孫崎氏の記事は短いですが、真理が端的に書かれています。
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 日本外交と政治の正体
少しも役立たない装備品 米国に貢ぐだけの日本の防衛政策
孫崎享 日刊ゲンダイ 2018年7月14日
「日本の真の独立を行うには自衛隊の独立が必要である。そのためには、装備品を米国に依存すべきでない」
 ある政治家の会合に出席した時、田母神俊雄・元航空幕僚長がこう発言していた。田母神氏が米国に依存すべきでない装備品として具体例で挙げていたのが、無人偵察機「グローバルホーク」と、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」である。
 グローバルホークは、地上20キロ上空で42時間の飛行が可能。地上の30センチ~1メートルの物体を識別できる能力を持つ。だが、データは全て米国に送られるため、解析するには日本が費用を負担して米国に依頼し、情報を送ってもらうしかない。しかも、解析情報のうち、おそらく秘密度が高いものは日本に送付されない。
 
 田母神氏はこうも主張していた。
「『日本が自ら解析して必要な情報は米国に渡す。この形でしか、グローバルホークは導入しない』という交渉をすれば、米国は、容認せざるを得ない。しかし、政治家が何の条件も付けずに米国の言い分をそのままのむから、せっかく導入しても、実質的な持ち主は米国という悲惨な結果を招く
 
そして、イージス・アショアについても「現場の制服組は何の相談も受けていないのではないか」と疑問を呈していた。
 イージス・アショアは、秋田、山口に配備され、日本全土をカバーするといわれている。しかし、北朝鮮の大陸間弾道ミサイルの速度は秒速2キロ~3キロ。これに対し、イージス・アショアの迎撃ミサイルはマッハ(秒速340メートル)を目指すといわれている。つまり、北のミサイルの方が迎撃ミサイルの速度よりも5倍以上あるのだ。
 大ざっぱにいって迎撃ミサイルが300キロ飛ぶ間に、北朝鮮のミサイルは1500キロ飛んでいる。東京―平壌は1290キロだから、北朝鮮がミサイルを発射する前に迎撃ミサイルを発射しなければならない
 全くバカげた話である。日本の防衛には少しも役立たない装備品に多額の費用を米国に支払い、米国のために使うのである。
 
 孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。