2018年7月28日土曜日

化け物のように強大化している安倍晋三の権力

世に倦む日々」氏が27、「化け物のように強大化している安倍晋三の権力 - 過小評価するな」という記事を出しました。同氏は、25日にも、「岸田文雄の総裁選不出馬 - 安倍晋三の狙いは無投票、四選、永久独裁」とするブログを発表したばかりで、この人がこんな短い間隔で論文を発表するのは(最近では)極めて珍しいことです。 
 
 25日のブログは概略以下のような内容です。
『5日の「赤坂自民亭」の酒宴は、本来、総裁選に向けての政局の一環として仕掛けられた行事で、次回の政権禅譲を約して降ろさせた岸田文雄が安倍三選支持に旋回することを党内外にデモンストレーションするだった。
 残る対抗馬は事実上石破茂一人になるが、安倍は、彼の立候補を妨害し阻止出馬断念に追い込もうとしている。そもそも石破なぜ3年前の総裁選で出馬を辞退したのか不明で、この3年間総裁への活路を開く努力は何もせず、全く無駄にしてきた。
 安倍が岸田に政権の禅譲を約束したのは「誑かし」であり、その本心は四選であって、永久に権力を手放さないこと。9条改憲を実現し、中国と戦争を始め、1930年代の原状に戻して岸信介の夢を果たすことだ8月以降、北朝鮮非核化の具体的進展がなければ、再び9条改憲の攻勢が政局の主舞台に浮上する公算が高い。
 安倍の公約では、2020年を新しい憲法を施行する年にすると言っている。そのためには2019年中の発議が必要で、巷間取り沙汰されているのは、来年2019年の通常国会で発議、7月の参院選を衆院選とダブルにして、国民投票も同時に強行するというトリプル選の目論見んでいる筈』
というものです。
 
 27日のブログはそれを補足するもので、岸田氏が25日に(安倍氏との間で決まってはいたものの)急遽、総裁選不出馬を表明した背景についての、「世に倦む日々」氏一流の考察がメインです。
 
 岸田氏は、724日の夜、岸田派若手の宴席に現れ彼らの前で滔々と天下国家の持論を垂れ、出席したたちはこれで岸田氏も出陣に腹を括ったと歓んだそうですが、その直後一転して安倍氏に電話して不出馬の意向を伝えたのでした。週刊朝日はこの行動を「謎」と見立てていますが、現実は、岸田が安倍に電話したのではなく、岸田出陣で盛り上がっていることをスパイから知らされて激怒した安倍が岸田に電話を入れ、「おまえ降りたんじゃないのか明日(25日)中に記者会見を開いて不出馬を表明しろ」と厳命したのに違いない、というのが「世に倦む日々」氏の推理です。
 そうであれば全てが納得でき、謎はなくなります。それにしても安倍氏は岸田氏の存在など歯牙にも掛けていない訳で、その権力は突出していますす。
 
 そのあとは、安倍氏がなぜ「無競争での当選」を必死に画策しているのかの理由を明らかにし、それによって三選後の3年間の安定を確保し、そののちには4選を狙うという流れを明らかにしています。
 
 それが「化け物のように強大化している安倍氏の権力」の実態であり、憲法改悪を完遂しよとする安倍氏の真の姿でもあります。
 決して過小評価することはできません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
化け物のように強大化している安倍晋三の権力 - 過小評価するな 
世に倦む日々 2018年7月27日
岸田文雄の総裁選不出馬について、幾つかのマスコミが裏話を披露する政界記事を配信している。(1)週刊朝日、(2)東洋経済オンライン、(3)読売新聞。虚実があり、憶測があるだろうが、浮かび上がるのは岸田文雄の優柔不断と覚悟の無さであり、戦略の欠如と見通しの甘さである。三つの記事には書かれてないが、どうやら岸田文雄は派閥を完全に掌握していなかった事実が透けて見える。派内は二つに割れていて、若手議員を中心とする主戦論の組と、降りて恭順しようというベテラン議員の組があり、岸田文雄は派内を一つの意思で纏めていなかった事情が推察される。傍目から見れば、7月5日夜の「赤坂自民亭」の酒宴への出席は、どう考えても安倍三選支持の意向の示唆であり、だからこそ、安倍側近の西村康稔がその証拠写真をツイッターで発信して宣伝したのだし、論功行賞を狙った片山さつきが大騒ぎしたのだろう。6月18日に安倍晋三と赤坂の料亭で会談した時点で、岸田文雄の腹の中は半ば決まっていたと言える。それにだめ押しするのが7月5日夜の機会で、恭順臣従の意思表明だった。 
 
常識的にはそのように解釈される。恭順の選択を岸田文雄に説いていたのは、あの酒盛りの証拠写真が物語るように、閣内にいる小野寺五典や上川陽子らベテラン組に他ならない。この連中は、所属は岸田派(宏池会)だけれど、実質的に安倍晋三の直臣であり、事実上の安倍派の構成分子で、安倍晋三や菅義偉の手先となって岸田派の内部を密偵したり撹乱し、岸田派を分断して無力化する工作員の役割を果たしているのだろう。彼らベテラン組からすれば、7月5日夜の宴会で決着がつき、やれやれ一段落というところだったのだろう。ところが、週刊朝日の記事によると、7月24日の夜、岸田派若手の宴席に現れた岸田文雄は、彼らの前で滔々と天下国家の持論を垂れ、出席した者たちは、これで岸田文雄も出陣に腹を括ったと歓び、「ついに決起だ」と盛り上がったとある。そして、その直後、一転して安倍晋三と電話で連絡を取り、不出馬の意向を伝える動きに出た。週刊朝日の描写は、若手議員の証言をベースにしていて、この岸田文雄の行動が謎めいていて奇怪である。矛盾している。だが、この経緯の説明は、次のように読み直せば筋が通る。
 
岸田文雄が安倍晋三に電話したのではなく、安倍晋三が岸田文雄に電話を入れたのだ。おまえ、何をやっているんだと。降りたんじゃないのかと。この24日夜の岸田派の宴会の中にスパイがいて、安倍晋三か菅義偉に即密告と注進の電話を入れたのだろう。降りる内意を伝えられていた安倍晋三は激怒し、岸田文雄を電話で呼び出し、明日(25日)中に記者会見を開けと厳命したのに違いない。そうしないと三選後の処遇はないし、野田聖子のように掴んでいる(岸田文雄の醜聞となる)機密情報をマスコミに流すぞと。一喝され、脅された岸田文雄は縮み上がって恐懼し、その電話口で、必ず明日(25日)中に記者会見しますと平身低頭したのだろう。つまり岸田文雄は、派内のベテラン議員たちには恭順・三選支持の方針を伝えながら、若手議員たちにはいい顔をして、反旗・三選阻止の意欲を示していたのである。矛盾した二つの顔を演じていて、それが破綻して惨めに恥をかく始末となったのだ。おそらく、週刊朝日が報じているところの24日の岸田派の宴会というのは、恭順を固めている親分に再考を促し、出馬へと翻心するよう、親分を囲んで説得する集会だったのだろう。
 
前回の記事で論じたとおり、安倍晋三の思惑は、ポスト安倍の全員を出馬断念に追い込み、無投票で三選を決めることである。総裁選となれば、対立候補は必ず政策の違いを鮮明にさせ、安倍政権の6年間を批判する論陣を張る姿勢に出る。ハト派を標榜する宏池会から候補が立てば、アベノミクスの失敗が批判されるだろうし、安全保障政策でも異論が提起され、テレビの生討論で応酬し合う展開となる。石破茂と一騎打ちになった場合は、9条改憲が争点となり、3月に党憲法改正推進本部で行われた激しい論戦を再びやらなくてはいけない。3月の党の平場では、安倍改憲案で押し切ろうとする執行部側(細田博之)が圧倒的に数が多かったので、石破茂の「正論」が通ることはなかったが、生放送のテレビで一対一の論争となれば、石破茂が安倍晋三を論破することは目に見えている。知識の量が違う。だから、安倍晋三はそうした場面を作りたくないのだ。仮に投票結果がトリプルスコアで圧勝となったとしても、9条改憲の論争で石破茂に論破され、決定的な失態を演じてしまえば、秋国会で改憲論議を起こすことが難しい状況になる。2項を削除せよという石破茂の「正論」は、安倍改憲にとって鬼門なのだ。だから、石破茂の出馬も阻止したいというのが本音なのである。
 
さて、ここから、反安倍の左翼リベラル諸氏によく考えてもらいたいのだが、岸田文雄も野田聖子も、3年前は、まさか今年(2018年)の総裁選で出馬断念に追い込まれるとは思っていないのである。そんな図は予想しておらず、次こそは安倍晋三と自由に政策論争し合えると想定していただろう。現状、マスコミは、今度の総裁選は安倍晋三と石破茂の一騎打ちになると、さも既定事実のように報じているが、私は、安倍晋三は全力で石破茂の出馬阻止に動いてくると睨んでいる。あらゆる手段を講じて、身辺の弱みを握って脅し上げ、リークやデマを流して屈服に追い込んで行くと予想する。手を抜かないはずで、徹底的にやるだろう。安倍晋三からすれば、総裁選で政策論争をやるということが、自身の権力を弱めることであり、次からの権力の行使を制限づける契機になるのである。2015年の総裁選を無投票で突破したことが、この3年間の安倍晋三の権力強化を媒介している。そして、その3年間に2度の国政選挙に圧勝した。稿の前半に、岸田派の内部模様を論じたが、現在の自民党議員405名というのは、どれもこれも安倍晋三のおかげで当選を果たした者ばかりだ。派閥に所属していても、選挙に勝たせてくれる本当の親分は安倍晋三に他ならない。
 
岸田文雄も、野田聖子も、今年不出馬になるとは思ってなかった。逆に言えば、彼らは意思に反して不出馬に追い込まれたのであり、安倍晋三が権力で周到に追い込んだのである。ポスト安倍たちは権力闘争に負けたのだ。おそらく安倍晋三(と菅義偉)は、7月中に岸田文雄の不出馬を確定させ、8月は石破茂の攻略に全力を注ぐという、そういう計画を最初から立てていたのだろう。簡単な敵から一つ一つ順番に潰して、最後に大きな敵を潰すのであり、軍略として間違っていない。岸田文雄の無能を論うのは容易だが、看過してはいけないのは、安倍晋三の権力の強大さであり、簡単に倒すことができないという事実である。この6年間、反安倍の左翼リベラルは、終始一貫して、安倍晋三を矮小化して蔑む言論を続けてきた。日刊ゲンダイの見出しのような罵倒と嘲笑を安倍晋三に浴びせて満足してきた。それはそれでよいだろう。権力者への非難は罵倒の言葉となるものだ。だが、敵を矮小化することで、それを過小評価する錯誤に陥り、対象の正しい測定と認識を失ったということはないだろうか。安倍晋三の権力が時間と共に強大化している点を、反安倍側は正視しておらず、彼我の力の差を自覚していない
 
反安倍の左翼陣営も、6年間、安倍晋三と政治の権力闘争をしてきたのであり、選挙という戦いの場で敗北し続けてきたのである。「野党共闘」は3年間で2回負けた。次は勝利はできなくても善戦できるだろうと、安易に楽観していたところは、岸田文雄や野田聖子と同じである。ポスト安倍が安倍晋三の強権に圧殺されているように、反安倍の野党も安倍晋三の権力の前に惨敗を重ね、既成野党との力の差はどんどん開いているのだ。力の差がリアルタイムにどれほど開いているかは、世論調査の数字がインジケーターとして冷徹に教えている。そろそろ、目を覚ますときではないのか。私はずっと既成野党では安倍自民には選挙で勝てないと言い、受け皿にはならないと言い、永田町の外からの、カリスマ的指導者を擁するリベラル新党を対案として訴えてきた。そうした政治革命のイマジネーションを、そろそろ真面目に検討する時期ではないのか。反安倍側がいつまで経っても既成野党への支持に拘泥し、野党が結束すれば安倍晋三に勝てるという幻想から離れないのは、日々強大化している安倍晋三の権力への過小評価があり、慢心と思考停止があるからである。
 
しばき隊の水増しデモなどで対抗できると考えるのは、政治に無知な児戯の発想と言わざるを得ない。安倍晋三の権力は化け物のように巨大になっている。派閥は形式だけで実体はない。野党も同じだ。立憲民主とか国民民主とかの野党は、せいぜい5年前まで野党として通用し機能していた政党であり、今はとても安倍晋三の権力に対抗できる力はない。仕様が合わない。時代が違う。権力の構造が根底から変わっている。われわれは、政治革命を設計構想しないといけない。今すぐに。