2018年7月12日木曜日

<「働き方」どう変わる>(3)(4ー完)

 東京新聞にシリーズ(3)は「同一労働同一賃金」にかかわるもので、今年と昨年の通常国会冒頭の施政方針演説で、安倍首相が、政府は「同一労働同一賃金」を実現すると大見えを切ったものです。
 非正規労働者は約2000万人を超え労働者の4割を占めますが、年収は200万円以下で、正社員や正規職員の1/3とかそれ以下というのが実態です。
 待遇改善の方法としては「均等待遇」と「均衡待遇」と「労使協定方式」の三つがあり、「均等待遇」が最も格差を少なくする案なので当然それで行うべきですが、「労使協定方式」は待遇改善を回避するための抜け道を呈示したものです。
 こんなことで本当に非正規労働者の待遇が改善されるのか大いに疑問です。
 
 シリーズ(4)は、「働き方」改革法の中で、唯一労働者の働き方や待遇改善につながる年次有給休暇(年休)の取得促進中小企業の残業代の引き上げについてです。
 
 「働き方どう変わる」の連載はこれをもって終了です。
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<「働き方」どう変わる>(3)同一労働同一賃金 非正規の待遇改善図る
東京新聞 2018年7月10日
 「同一労働同一賃金」は正社員と非正規社員との不合理な待遇差を解消し、非正規の待遇改善を図る考え方だ。非正規社員とは有期契約やパート、アルバイトを指す。条文に「同一労働同一賃金」の文言はなく、パートタイム労働法や労働者派遣法に正規と非正規の間に不合理な待遇の格差を禁止することを定めた。
 
 非正規で働く人は二千万人を超え、労働者全体の約四割を占める。欧州に比べて低い処遇を受けてきた非正規の待遇を着実に改善することが求められる。正社員との待遇差の解消には、「均等待遇」と「均衡待遇」の二つの方法がある。
 均等待遇は、仕事の内容や配置変更の範囲が同じであれば給与や賞与で同等の取り扱いをしなければならないという規定。例えば、ある職場でパートタイムで働く人が正社員と同じ仕事を行い、異動の範囲も同じであれば、給与で差別することを禁じる。
 均衡待遇では、正社員と非正規社員の間で仕事の内容に違いがある場合、一定の格差を認める一方で、その格差が不合理と認められない程度にすることを定めた。この場合、基本給や賞与、各種手当のそれぞれに関し、不合理かどうかを判断すべきだと明確にした。労働者が待遇差について説明を求めた場合、企業に説明する義務も盛り込んだ。
 派遣労働者に関しては、派遣先企業で同様の仕事をする人と均等待遇か均衡待遇を行うよう定めた。ただ、派遣元企業で労使が協定を結べば、派遣先企業と関係なく待遇を決められる「労使協定方式」も採用した。派遣元企業が労使協定方式を採れば、派遣先企業の正社員との待遇格差を縮める必要がなくなり、派遣社員の待遇改善につながらない恐れがある。
 
 
<「働き方」どう変わる>(4)年休と残業代 環境整備 働く側に利点も
東京新聞 2018年7月11日
「働き方」関連法には、労働者の働き方や待遇改善につながる内容も盛り込まれた。代表的なものは、年次有給休暇(年休)の取得促進と、中小企業の残業代の引き上げだ。
 労働基準法により、年休は仕事を休んでも給与が発生する休日で、働いた年数に応じて日数が与えられる。例えば、一年六カ月働いたら十一日、六年六カ月以上だと二十日与えられる。
 
 年休取得は労働者の権利だが、「職場に負担をかける」といった心理的なためらいから十分な取得は進んでいない。厚生労働省の調査によると、二〇一六年の取得率は49・4%で五割に満たない。独立行政法人が一一年に行った調査では、一年で一日も年休を使わなかった人は16・4%いた。
 今回改正された労働基準法では、年十日以上の年休がある労働者に対して、このうち五日は必ず取得することとし、企業側は労働者の希望を聞いた上で時季を指定する。年五日の有休を消化できない労働者がいる企業には罰金を科す。
 政府は二〇年までに年休取得率を70%とすることを目標にしており、今回の義務化で社員が休みやすくする環境を整える。一九年四月から施行する。
 
 中小企業の残業代の引き上げでは、現在は大企業に比べて低く抑えられている月六十時間を超えた分の割増賃金率を大企業と同等にする
 具体的には、月六十時間超の残業に対する割増賃金率を現在の25%から50%にする。時給が千円の労働者の場合、残業が月六十時間を超えた分は千五百円となる。二三年四月から施行となる。
 残業代が引き上げられることで労働者にとっては収入増や残業の減少などのメリットがあるが、企業側にとっては人件費増につながる可能性がある。 =おわり
 (この連載は、木谷孝洋が担当しました)