2020年1月15日水曜日

15- イラン司令官殺害根拠揺らぐも それはどうでもいいことだとトランプ

 米軍がイランのソレイマニ司令官を殺害して理由としてトランプは10日イラン側がラク首都バグダッドをはじめ、4つの米大使館を攻撃するという差し迫った危険に対する自衛の措置であったと述べましたが、エスパー米国防長官は12「私は4カ所の大使館に関する(脅威の)証拠を見ていない」と述べて否定しました。
 殺害の理由が虚偽だと明らかにされるとトランプはツイッターで13日、「ソレイマニ司令官の過去を考えれば、それはどちらでもよいことだ」として、脅威が差し迫っていたかどうかは重要な問題ではないと主張しました。まことに「殺したかったから殺した」というに等しい主張です。

 天木直人氏はそれに関して、「イランによる民間航空機誤爆よりも深刻なトランプのウソ」とするブログを出し、そうであれば「米国に狙われたらお終いだということである」、「そんな米国を世界は誰も止められない、非難すらできない、ということである」と述べました。端的にトランプの(あるいは米国の)本性を指摘しています。そして「そんなトランプの米国に最後まで従っていくのが日本である」と述べています。

 しんぶん赤旗、NHKそれに天木直人氏のブログの記事を紹介します。

追記)ところでイラクの国会で米軍の撤退が決議されたにも関わらず、米軍は決して撤退しようとはしません。逆にウォール・ストリート・ジャーナル紙の匿名情報源によると、「米軍を追い出そうとすればイラク政府の銀行口座を封鎖する」とトランプは警告したということです(14日付櫻井ジャーナル)。勿論中東のオイル利権が居座る理由です。正に衆人環視の中で「居直り強盗」の本性を示したものです。
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米国防長官 大使館脅威「把握せず」 イラン司令官殺害根拠揺らぐ
しんぶん赤旗 2020年1月14日
 【ワシントン=池田晋】エスパー米国防長官は12日の米CBSテレビのインタビューで、トランプ大統領がイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官殺害の理由としてあげている4カ所の米大使館攻撃の計画をめぐり、「私は4カ所の大使館に関する(脅威の)証拠を見ていない」と述べました
 米議会では政権がソレイマニ司令官殺害の根拠を十分説明していないと批判が高まっており、トランプ、エスパー両氏の説明のくい違いが改めて殺害の正当性を揺るがしています。
 トランプ政権は、同司令官の殺害を「差し迫った攻撃」を防ぐための自衛措置だと主張。政権はイラン側が計画していたとする「差し迫った攻撃」に関する情報開示を拒んできましたが、トランプ氏は10日、「(イランの攻撃対象はイラク首都)バグダッドをはじめ、四つの米大使館だったと考えている」などと述べていました
 しかし、エスパー氏は「大統領が言ったのは、(放置すればバグダッド以外の)他の大使館にもおそらく襲撃があっただろうということだ」と述べ、確たる証拠がないことを示唆。ポンペオ国務長官も9日、「(イランの)攻撃がいつ、どこで計画されていたのか、詳細は分からない」と殺害の根拠となった脅威情報の曖昧(あいまい)さを認めていました。
 国際法上、自衛権の行使が正当化されるには、相手の攻撃に切迫性や違法性があることが要件となり、米側がこうした要件を証明する根拠もなく殺害を実行したなら明らかな国際法違反です。


トランプ大統領 “脅威 差し迫っていたかは重要ではない” 
NHK NEWS WEB 2020年1月14日
アメリカのトランプ大統領は、イランの司令官殺害の判断に疑問の声が相次ぐなか、改めて差し迫った脅威があったとする一方、「司令官の過去を考えればそれはどちらでもいいことだ」と主張しました。しかし「説明が不十分だ」との批判は根強く、判断の根拠をめぐる追及が続きそうです。
トランプ大統領がイランのソレイマニ司令官の殺害を指示したことを巡り、アメリカでは差し迫った脅威が本当にあったのか、疑問の声が相次いでいます。
これに対しトランプ大統領は13日、ツイッターへの投稿で、改めて脅威は差し迫っていたとしたうえで、「ソレイマニ司令官の過去を考えれば、それはどちらでもよいことだ」として、脅威が差し迫っていたかどうかは重要な問題ではないと主張しました。
トランプ大統領はこれまで具体的な脅威として「4つのアメリカ大使館が狙われていた」と主張していますが、エスパー国防長官ら政府高官は、これを裏付ける具体的な情報は把握していなかったとして、食い違いを見せています。
アメリカ議会では、野党・民主党だけでなく与党・共和党の議員からも「殺害を指示した根拠の説明が不十分だ」という批判が出ていて、大統領の判断の根拠をめぐる追及が続きそうです


イランによる民間航空機誤爆よりも深刻なトランプのウソ
天木直人のブログ 2020-01-14
 誤爆によって罪のない人々が犠牲になる。あってはならない事だ。
 イランが嘘をついたとしたら批判されてもおかしくない。もし誤爆が本当なら、イランにとっては大きな失点に違いない。
 ところが今度はトランプの米国の番だ。スレイマニア司令官の殺害を正当化するためにトランプ大統領は4つの米大使館攻撃計画への脅威をあげた。「差し迫った脅威があった」から攻撃に踏み切ったのだと。この殺害で多くの米国人の犠牲者を防いだと。
 どこかで聞いた言葉だ。その通りだ。
 いまから16年前、あのブッシュ大統領がサダム・フセインのイラクを攻撃した時、それを正当化した言葉だ。
 しかし、フセインとアルカイダのつながりはなく、大量破壊兵器もなかった。その口実はまっかな嘘だったのだ。その嘘の責任をとることなく、今度はスレイマニア司令官の殺害だ
 そして、いま、米国内部から、トランプ大統領の「差し迫った脅威」発言には根拠がないという疑義が出始めた。ポンペオ国務長官もエスパー国防長官も、そんな情報は聞いた事がない、証拠はない、と言い出し始めた。

 そしてついにトランプ大統領は開き直った。そんなことはどうでもいい。スレイマニアが脅威なのだと。
 語るに落ちるとはこのことだ。はじめにスレイマニア殺害ありきだったのだ。
 それはあたかもサダム・フセインのイラク攻撃ありきと同じだ。米国に狙われたらお終いだということである。米国に攻撃されたら最後だということだ。
 そんな米国を世界は誰も止められない、非難すらできない、ということである。
 そんなトランプの米国に最後まで従っていくのが日本である。
 いくら国があっても足りない日本である(了)