2020年1月23日木曜日

首相演説の自己愛、厚顔、能天気 聞き飽きた「夢」の空疎(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが「虚飾の自慢話と夢物語 首相演説に見る自己陶酔と能天気」(副題 「イカれた首相演説の自己愛、厚顔、能天気」)とする記事を出しました。

 ペンネームKK氏は、21日付のツイッターで、「【聞き飽きた「夢よもう一度」の空疎イカれた首相演説の自己愛、厚顔、能天気 何も成果がないまま政権維持だけが目的化した安倍長期政権で、我田引水の実績と虚飾に満ちた自慢話を並べ立て、国民一丸』『ともに新しい日本をと叫ぶ首相はマトモなのか」という前振りをつけてその記事を紹介しました。まさにそれに尽きています。

 22日にも、各党の代表質問に対して首相は、例によって異様に高潮した声音で無内容な回答を述べ立てていました。まさに「空の空なるかな」(「虚栄の市」)です。
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虚飾の自慢話と夢物語 首相演説に見る自己陶酔と能天気
日刊ゲンダイ 2020/01/21
「阿修羅」22日付より転載
 第201通常国会が20日召集された。会期は6月17日までの150日間。与党は経済対策を盛り込んだ2019年度補正予算案と20年度予算案を成立させ、社会保障制度改革関連法案の処理を急ぐ考えだ。
 それにしても相変わらず、グダグダと長いばかりで何ら中身のなかったのが、衆参両院の本会議で行われた、安倍首相の施政方針演説と茂木外相、麻生財務相、西村経済財政担当相による政府演説。とりわけ、酷かったのが安倍だろう。

「五輪史上初の衛星生中継。世界が見守る中、聖火を手に、国立競技場に入ってきたのは、(1964年の東京五輪で)最終ランナーの坂井義則さんでした」
 演説の冒頭、こう切り出した安倍は「8月6日広島生まれ。19歳となった若者の堂々たる走りは、我が国が戦後の焼け野原からの復興を成し遂げ、自信と誇りを持って、高度成長の新しい時代へと踏み出していく。そのことを、世界に力強く発信するものでありました」と続け、さらに「未来への躍動感あふれる日本の姿に、世界の目は釘付けとなった。半世紀ぶりに、あの感動が、再び、我が国にやってきます。(略)国民一丸となって、新しい時代へと皆さん、共に踏み出していこうではありませんか」などと絶叫。誰が聞いても、今年最大の国内イベントである東京五輪・パラリンピックに“便乗”する気がマンマンだった。

改憲と東京五輪を無理やりこじつける無意味
「『東洋の魔女』が活躍したバレーボール。そのボールを生み出したのは、広島の小さな町工場です。その後、半世紀にわたり、その高い技術を代々受け継ぎ、今なお、五輪の公式球に選ばれ続けています」
「日本が初めてオリンピック精神と出会ったのは、明治の時代であります。その時の興奮を(日本人で初のIOC委員となった)嘉納治五郎はこう記しています。(略)戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する。その正念場となる1年であります」
「(日本パラリンピックの父と呼ばれる医師の)中村先生の情熱によって、1964年、東京パラリンピック大会が実現しました」

「成長戦略」から「外交・安全保障」に至るまで、とにかく何でも東京五輪に結び付ける厚かましさ。極め付きは、締めくくりの言葉だ。

「『人類は4年ごとに夢を見る』。1964年の記録映画は、この言葉で締めくくられています。(略)令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時です。(略)国のかたちを語るもの。それは憲法です。(略)歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共にその責任を果たしていこうではありませんか

 ちょっと待て。施政方針演説とは本来、政権の基本姿勢を示すものだ。誰が原稿を書いたのかは知らないが、安倍個人の悲願である憲法改正と五輪を無理やりこじつけただけ。全く意味不明ではないか。政治評論家の小林吉弥氏はこう言う。
「安倍首相の政治姿勢は勢いに任せて何かをぶち上げるのですが、今回の施政方針演説を聞く限り、全く精彩を欠いていた。東京五輪に絡めるぐらいしか、目新しいことを言えなかったのでしょう。裏返せば、それほど政権が厳しい状況に追い込まれているとみていいのではないでしょうか」

安倍政権は不祥事を新たな言葉で“上書き”して国民をごまかしてきた
 東京五輪を引き合いに「夢よもう一度」と空疎なスローガンを繰り返す一方で、安倍が力を込めていたのが「来年度予算の税収は過去最高」「最低賃金も現行方式で過去最高」「9割近い中小企業で賃上げが実現しています」という、これまたご都合主義の解釈による我田引水の実績と虚飾に満ちた自慢話だ。
 それ以外は「希望出生率1・8の実現を目指す」「待機児童ゼロを実現します」などと、これまでブチ上げてきた政策課題を繰り返しただけ。「戦後外交の総決算」とカッコつけている「外交政策」でも、「日朝平壌宣言に基づき国交正常化を目指す」「(ロシア=旧ソ連との)1956年宣言を基礎として交渉を加速させ、(北方)領土問題を解決」と言っていたが、北朝鮮は日朝首脳会談に全く関心を示さず、ロシアも領土交渉で強硬姿勢を崩していない。総決算どころか、北朝鮮、ロシア問題ともに、どんどん後退する一方だ。
 これで、よくもまあ「我が国はかつての日本ではありません。『諦めの壁』は完全に打ち破ることができた」などと言えたもの。自己愛、厚顔、能天気……。本気で言っているのであれば、オツムがイカれているとしか思えない。一体どういう精神構造をしているのか。明大講師の関修氏(心理学)はこう言う。
「安倍首相は過去に健康状態の悪化を理由に総理を辞任していますが、おそらくデリケートな神経の持ち主なのでしょう。どこかに常に不安を抱えているため、それを隠すために強気の発言をしたり、虚勢を張ったりする。周囲から見れば、それが空威張りしているように見えるのです」

問題議員を放置し続け、国会を軽視する首相
 自分の言いたいことは好き勝手にベラベラと話すにもかかわらず、国民の関心が高い問題についてはほとんどスルー。
 国会審議をすっ飛ばして閣議決定した海上自衛隊の中東派遣については、辛うじて「日本船舶の安全を確保する」と触れていたが、私物化批判と政治資金規正法違反疑惑が指摘されている総理主催の「桜を見る会」の問題や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)をめぐる汚職事件で、東京地検特捜部に逮捕された衆院議員の秋元司容疑者の贈収賄事件、英語民間検定試験と国語・数学記述式問題の導入が見送られ、受験生や高校を大混乱させた大学入学共通テストについては全く言及せずだから呆れるばかり。大体、国会を見回せば、今の自民党議員は悪党ばかりではないか。

「適切な時期に説明したい」
 公選法違反疑惑で経産相を辞任し、3カ月ぶりに公の前に姿を現した菅原一秀衆院議員は20日、記者団にこう話していたが、どこかで見た光景だと思ったら、同容疑で広島地検の家宅捜索を受けた河井案里参院議員だ。河井も「適応障害」などと言い、シレッとした表情で「一区切りが付いたら説明したい」とかトボケていた。悪事がバレたら「睡眠障害」や「適応障害」と言って雲隠れし、ほとぼりが冷めるのを待つ。これが安倍自民の国会議員の実相なのだ。
 安倍は首相として施政方針演説する前に、党総裁として悪党議員に「説明しろ」と迫るのが筋だろう。それをほったらかしにしているのだから、首相自らが国会軽視しているのに等しい。それでいて「令和の新しい時代を切り開く」もヘッタクレもないだろう。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「施政方針演説で未来を語るのも大事ですが、国民が真相解明を求めていることに対して真摯に向き合うことも必要でしょう。安倍政権というのは問題や不祥事を常に目新しい言葉で“上書き”して国民の目をごまかしてきました。昨年は『令和』が使われ、今年は『東京五輪』です。今回の所信表明演説でも、その姿勢がよく表れていたと思います」
 もういい加減、退陣だ。