2020年1月31日金曜日

武漢からの帰国者にチャーター機代8万円請求 それが安倍首相の流儀

 政府は新型肺炎で武漢市からの帰国者にチャーター機を出しましたが、何とチャーター機金として1人8万円を請求するということで、国民から批判の声が上がっています。
 それに対して茂木外相は「当事者本人の航空費等についてはこれまでも本人に負担してもらっている」とし菅義偉官房長官も「従来から、内戦など本人の意思にかかわらず待避をお願いせざるを得ない場合を除き、負担をお願いしている」と述べました。
 そうであれば今回のケースはまさに本人の意思にかかわらず待避をお願いする」ケースなのではないでしょうか。厳密にいえば異なるということなのでしょうが、これまで海外に60兆円をばら撒き、使い物にならないF35爆撃戦闘機の購入に(維持費を加えれば)数兆円を注ぎ込んでいる政府が、なぜそんな細かいことに拘ってチャーター代金を払わせようとするのでしょうか。

 LITERAが「新型肺炎で帰国者にチャーター機代8万円請求はまさに安倍首相の真骨頂! イラク人質事件でも「被害者に救出費用請求を」とする記事を出しました。
「安倍首相の真骨頂」と述べている所以は以下の通りです。
 かつて小泉政権時代の2004年にイラクでボランティア活動などをしていた高遠菜穂子邦人3名が武装勢力の人質になり、その後解放されたときに政府は帰国用の飛行機代を3人に請求しました。当時国内では俄然「自己責任論」がまき起こったのですが、その時に率先して「自己責任論」を主張したのが当時の自民党幹事長だった安倍晋三氏でした。

 因みに高遠菜穂子氏はその1年前からボランティアとして個人の立場でイラク国内で「人道支援」活動を行っていたもので、単に旅行者として無責任に入国したのとはわけが違っていました(同氏は現在も同様な支援活動に従事しています)。それに対して冷酷にも高額な飛行機代を請求したことこそ彼の酷薄な人間性を示すものでした。

 2015年ISによる後藤健二・湯川遥菜氏の拘束とその後の殺害事件が起きましたが、それは直前に安倍首相が中東を訪問し、エジプトで「『ISの脅威を食い止めるために2億ドルを支援する」と不用意に宣言したことが原因であったといわれています。
 それに対してISなどが日本人へのテロを宣言したときに、安倍首相は格好良く「日本人に指一本触れさせない」と大見えを切りました。しかし当然何一つ出来るわけではないので、16年7月にバングラデシュ・ダッカレストラン 日本人7人が殺害されたことを筆頭に、海外では多くの日本人がテロで殺傷されました。安倍政権はその間、「日本人に指一本触れさせない」どころか指1本動かすこともしなかったのでした。
 安倍首相の言うこと為すことは何もかもが話になりません。
(追記 31日のTVモーニングショーによると、世論に押されて政府は費用請求を止める方向に舵を切ったようです)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新型肺炎で帰国者にチャーター機代8万円請求はまさに安倍首相の真骨頂! イラク人質事件でも「被害者に救出費用請求を」と主張
LITERA 2020.01.30
 今月29日と30日、新型コロナウイルスの感染が広がる中国・武漢市から日本人400名余りが日本政府のチャーターに乗って帰国した。
 これに対して、ネットでは〈全員強制的に隔離しろ〉〈そのまま中国に置いておけばいい〉〈検査拒否したやつは武漢に送り返せ〉といった暴言が吹き上がっている。帰国者をバッシングする人たちには、「もし、自分が中国にいる側だったら」という想像力が完全に欠如しているのだろう。無論、入院した人や検査で陰性が出て帰宅した人たちに対して、排除や攻撃を仕掛けるということは決してあってはならない。いま求められるのは、パニックやデマを防ぐ冷静さだ。

 批判すべきはむしろ、この状況においても国民に自己責任を強いている政府の対応だ。チャーター機に搭乗した人ひとりにつき、エコノミークラスの片道料金と同額程度として約8万円(税抜き)を請求するというのである。29日の参院予算委員会では、立憲民主党の杉尾秀哉参院議員が「チャーター機の利用で片道8万円の請求するそうなんですけど、これぐらいは政府で出していいんじゃないですか、どうですか」と質問したが、茂木敏充外相は「当事者本人の航空費等についてはこれまでも本人に負担してもらっている」として8万円を請求する構えを見せた。
 菅義偉官房長官も本日の定例会見で「従来から、内戦など本人の意思にかかわらず待避をお願いせざるを得ない場合を除き、負担をお願いしている」と述べ、自己負担の方針を変えないことを表明した。
 だが、常識的に考えて、国が帰国のための費用を負担するべきだろう。8万円という航空費は高いか安いかという問題以前に、そもそも、海外の邦人保護は政府として当然なさねばならないことだ。「自己負担費用が高いから、帰国したいのにチャーター機に乗れない」という人がいないとも限らず、そうしたケースを避けるためには、国が全員分の費用を持つ以外にないのだ。
 国費のスケールで考えれば、数百名から千名程度の航空費など大した額ではない。だいたい、税金を私物化した「桜を見る会」で支援者らに無料飲食させる余裕があるなら、邦人救助のための費用に回すべきだ。しかも、「桜を見る会」は例年、決められた予算を何倍も超えて支出してきた。チャーター機費用について「柔軟な対応」ができることはとっくに証明されているではないか。
 さらに言えば、海外で保護された邦人たちは、普段の税金以外にも、あらかじめ「保護費」と呼べるものをおさめている。パスポートの取得費用だ。10年有効の旅券発行には1万6000円がかかるが、その収入証紙をのぞく国の手数料1万4000円には「間接行政経費(邦人保護関連経費)」なるものが含まれている。外務省はこれを〈海外における邦人保護に係る経費〉と説明しており、2016年度は実に351億円以上にのぼる。実際には、外務省職員らの人件費やその他諸経費にあてられるという(外務省領事局旅券課「旅券手数料収入と発給コストの比較について」令和元年 7月 8 日)が、この分を今回のケースのチャーター機代に充てるのは決して無理な話ではないだろう。

 前述したように、政府は自己負担の予定を変えておらず、Twitter上では「8万円の搭乗代」に疑問の声が相次いでいるが、他方で「仕方ない」と政府を擁護する意見も出ている。「武漢が封鎖される事態になるまでそこに留まっていたのだから、旅行なら自己責任」だというのだ。
 他にも「税金で帰ってきたら『自己責任だ』って批判されるから、自己負担のほうがいい」という萎縮の声も散見された。毎日新聞によれば、外務省幹部も「無償にした場合、国民から『税金のみで帰国させるのはいかがか』と批判が帰国者にも向きかねない」と説明したという。
 今回のようなケースで、帰国者が「自己責任」と批判される要素など一切ない。にもかかわらず、人々や官僚の頭のなかに「自己責任」という言葉が浮かぶのは、いかに安倍政権下の日本でグロテスクな“自己責任論”が蔓延っているかの証明だろう。

自己責任バッシングの生みの親は安倍首相だった!イラク人質事件で被害者に費用請求を主張
 海外で邦人人質事件が起こるたび、この国では「危険地帯に行った人の自己責任だ」「自分で海外に行っているのだから公金で保護するのはおかしい」なるバッシングが吹き荒れる。繰り返すが本来、自国民の生命保護は国家の責務である。どういった事情があったとしても、政府は人命のために最大限の努力をする義務があり、国民は国家にそれを要求する権利がある。にもかかわらず、日本社会ではなんでもかんでも「自己責任」という言葉が投げかけられるのだ。この状況は、欧米など海外メディアからも「日本特有の異常な考え方」と見なされ、繰り返し問題視されてきた。
 まったくグロテスクとしか言いようがないが、この状況をつくり出した元凶こそ安倍晋三だ。安倍首相は普段「いかなる事態になっても、国民の命を守る責任がある」などと偉そうに吹いているが、実は、国家の責務を放棄し国民個人に押し付ける「自己責任バッシング」の生みの親とでも呼ぶべき政治家なのだ。
 現在に連なる自己責任論の嚆矢は、2004年に発生したイラクでボランティア活動などをしていた邦人3名の人質事件といわれる。政治家の扇動で自己責任論が沸き起こり、すさまじいまでの人質バッシングが起きたが、その急先鋒だったのが、当時、自民党幹事長だった安倍晋三だ。
 このイラク人質事件では拘束が発覚した直後から、自民党では右派議員を中心に「(人質の)家族はまず『迷惑をかけて申し訳なかった』といえ」「遊泳禁止区域で勝手に泳いでおぼれたのと同じ」「好んで危険地帯に入った人間を助ける必要があるのか」といった自己責任論があがっていた。また、人質が解放された後も無事を喜ぶどころか、外務省政務次官経験のある議員が「救出費用は20億円くらいかかった」などという情報を流したことで、「税金の無駄遣いだ」「チャーター機など出すべきでない」「被害者に費用を請求すべきだ」との声が続出した。
 実際、救出にかかった費用は1000万円程度で、人質になった3人は航空機の費用なども支払っており、これらの主張はデマに基づいたヒステリーとしか言いようのないものだったが、幹事長の安倍は各種の会合でこうした自己責任論と被害者費用負担論に全面的に同調。そして、人質が解放された翌日の会見では、自らこう言い放ったのだ。
「山の遭難では救出費用を遭難者に請求することもある」
 この冷酷発言だけでも唖然とさせられるが、安倍は自民党の総務会でも人質への費用請求を求める声を受け、「しっかり考える」「かかった費用は精査する」と答弁。実際に政府に請求を検討させる姿勢を見せたのだ。
 この安倍をはじめとする政治家たちの新自由主義的な自己責任の大合唱が国民に浸透し、いまではすっかり根付いてしまったのである。

第二次安倍政権で加速する自己責任論 弱者バッシングで覆い隠される政権の失政
 そして、第二次安倍政権ではこの自己責任論が行くところまで行き着いた感すらある。2015年のISによる後藤健二さん・湯川遥菜さん拘束殺害事件や、シリアで行方不明になったジャーナリスト・安田純平氏が2018年に帰国した際にも、自己責任論によるバッシングが吹き荒れた。それだけでなく、非正規雇用のワーキングプアや生活保護受給者、シングルマザーなどの社会的弱者に対しても「自己責任だ」というのが正論であるかのように語られてきた。そして、今回の新型コロナウイルスをめぐる「8万円のチャーター機代」をめぐっても、やはり自己責任論が飛び出し、あげく官僚が“自己責任論バッシング”に萎縮し、保護される邦人の本人負担にしてしまっている。
 はっきり言って異常だろう。自己責任論はもともと、支配層にとって都合のよいロジックだ。本来、社会的・公共的に解決せねばならない問題を「個人の責任」に押し付けることで、不都合なことを隠蔽したり、対応をめぐる政府批判の隠れ蓑にできるからだ。事実、IS人質事件の際も、その直前に安倍首相がエジプトでの演説で「ISILの脅威を食い止めるために2億ドルを支援する」と宣言したことが事件につながったのではないかとの指摘が出ていたが、これも高まる自己責任論によってうやむやにされてしまった。
 自己責任論は、これを唱える人々自身にも降りかかってくる。今回の新型コロナウイルスでまたぞろ自己責任論が浮上していることによって、安倍政権の対応や対策を十分に検証できないような状況に陥る可能性があるだろう。そうなれば政府の思う壺だ。
「帰国したいのに帰国できない」という人が出ないよう、政府は8万円のチャーター機代請求をやめて、全額公金から支出すべきだし、わたしたちも、それが当たり前であるという認識をしっかりと持たねばならない。それこそが、百害あって一理なしの自己責任論を克服する第一歩になるのである。 (編集部)