しんぶん赤旗が新年の「外交展望」を出しました。
タイトルから明らかなように安倍外交は内政と同様に「全てが破綻」しています。内政の場合は都合の悪い文書は破棄乃至隠蔽し、官僚たちも政権と口裏合わせをし、さらにメディアも政権に「忖度」するので、その場しのぎ的に表面を取り繕うことが可能ですが、外交は、「安倍政権に忖度する必要のない」相手のあることなのでそうはいきません。
一昨年行われた日米首脳会談(貿易交渉)について、安倍首相は国民に対して「TAG(物品貿易協定)」だと強弁しましたが、そんなデタラメは勿論相手に通用しません。事実いまでは「TAG」などはおくびにも出しません。
安倍応援団は「外交の安倍」と持ち上げることに余念がありませんが、これほど違和感のある評価はありません。首相が回った国の数やその間にばら撒いたカネの額(60兆円以上といわれる)はなるほど「空前」なのかも知れませんが、そもそも首脳外交と言われるものはそんなことで測るべきものではありません。
首脳外交こそは当人の人格と識見がベースになるものであるのに、どこから見ても安倍首相にはそんな要素はありません。
天木直人氏のブログを併せて紹介します。
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20年 外交展望 発言力増す市民の運動 総破綻「安倍外交」に終止符を
しんぶん赤旗 2020年1月4日
「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を売り物にしてきた安倍外交が、総破綻に直面しています。もはや、内政でも外交でも、安倍政権を終わらせる以外に展望を切り開くことはできません。
米国いいなり
国際情勢を見れば、米国や中国、ロシアを中心に、覇権主義・排外主義が強まり、「自国中心主義」の傾向が色濃くなっています。こうした中、安倍政権は大国にひれ伏し、追随する屈辱外交を強めています。
なかでも、米国のトランプ政権言いなり外交は、年をおうごとに国民との矛盾が拡大しています。総額6000億円もの陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」など、米国製武器の爆買い、国会審議も経ないまま、中東派兵の年末駆け込み決定、食料・経済主権を放棄する日米貿易協定の批准強行―。その“実績”は枚挙にいとまがありません。
今年は、来年3月に期限が切れる米軍「思いやり予算」特別協定の改定交渉が始まります。トランプ大統領は年間2000億円規模で推移してきた思いやり予算の「4~5倍化」を要求。厳しい交渉が予想されます。
また、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設では、埋め立て区域に広大な軟弱地盤の存在が明らかになりました。政府は今春にも、沖縄県に地盤改良のための設計変更を申請する構えですが、完成は最短でも2030年代。いよいよ追いつめられています。
屈辱的な姿勢
米国に加え、中国・ロシアへの屈辱的な姿勢も際だっています。
安倍晋三首相は日ロ領土問題を“決着”させ、歴史に名を刻もうという野望を持っていました。このため、歴代政府の方針だった「4島返還」の方針さえ投げ捨て、事実上の「2島決着」の立場を打ち出して成果を急ぎます。しかし、プーチン政権からは一蹴され、無残な失敗に終わりました。「2島」か「4島」ではなく、旧ソ連が「領土不拡大」という第2次世界大戦後の大原則を踏みにじって千島列島を占領した不公正をただすことなしに、領土問題は解決しません。
中国はここ数年、南シナ海や東シナ海で覇権主義的な対応を強め、香港やウイグルで深刻な人権侵害を繰り返し、国際的に批判が高まっています。しかし、安倍首相は今春、習近平国家主席を国賓として迎え入れるために、尖閣問題でも、香港・ウイグル情勢でも、一切批判をしていません。こうした屈辱的な姿勢に、自民党内からも疑問の声が高まっています。
日韓関係でも
侵略戦争と植民地支配を美化し、排外主義を露骨に示す―。これが、安倍外交のもう一つの本性です。その下で、「戦後最悪」といわれる状況に陥ったのが日韓関係です。
日本企業に元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決に対して、日本政府は「国際法違反」だと一蹴して対話を拒むばかりか、報復措置として韓国を輸出優遇国から除外。日韓の報復の連鎖が起こりました。
昨年12月、首相と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が1年3カ月ぶりに会談し、当面の危機回避の動きが出ています。しかし、元徴用工問題の根底にあるのは、15年8月の「安倍談話」で、朝鮮半島の植民地化を進めた日露戦争を美化するなど、「植民地支配と侵略」への反省を事実上、投げ捨てた首相の歴史認識です。しかも、首相は「嫌韓」をあおって自らの支持を得るという卑劣な行為を行ってきました。
これを改めない限り、日韓関係の根本的な改善はありません。
明らかな妨害
大国のエゴイズムの一方、市民の運動が発言力を増し、大国を追いつめています。
一つは核兵器のない世界への動きです。日本をはじめ、各国の反核平和運動の積み重ねの上に、国連加盟国の圧倒的多数で採択された核兵器禁止条約は、発効に必要な50カ国の批准まで、あと16に迫っています(昨年11月25日現在)。今年4~5月にはNPT(核不拡散条約)再検討会議が開かれます。核固執勢力を包囲する世論づくりが求められます。
もう一つは地球温暖化問題です。世界各国の若者が声をあげ、人類の未来を左右する問題として、国際的な危機感が共有されました。今年末の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、各国の真価が問われます。
安倍政権は「核兵器のない世界」の実現でも、地球温暖化防止でも明確な妨害勢力です。もはや、安倍外交に未来はありません。
▼主な外交日程
(省 略)
安倍首相の対イラン仲介外交を吹っ飛ばした米国のイラン攻撃
天木直人 2020-01-04
新春のお屠蘇気分を吹っ飛ばしたのがゴーンの逃亡劇だったと思ったら、そのゴーンの逃亡劇を吹っ飛ばしたのが1月2日の米国のバグダッド空港ミサイル攻撃だ。
この攻撃は米国のイラク攻撃ではない。イランに対する先制攻撃なのだ。
ハメネイ師の懐刀であり、イラン革命防衛隊の英雄であるスレイマニ司令官のピンポイント殺害が目的だったのだ。イランが復讐を宣言したのも無理はない。
私は昨年12月31日の最後のメルマガ第848号「ヒズボラ攻撃のニュースに思う」で書いた。
米国がイランに戦争を仕掛ければ、イランの指揮命令下にあるテロ組織が、中東で一斉に米国に対してゲリラ戦を挑む危険性があると。
まさかこんなに早くその時が来るとは思わなかった。今度の米国の攻撃の深刻さは計り知れない。だからこそ世界が懸念を表明した。きょうの各紙が一斉に大きく報じた。
ゴーン逃亡劇の記事をすっかり吹っ飛ばした格好だ。
この米国の先制攻撃が、その後の米・イラン関係、さらには中東情勢にどのような影響を及ぼすか、それはもちろん私にはわからない。
しかし、はっきりしている事は、米国とイランが戦争状態に入ってしまったということだ。そして、安倍首相の対イラクパフォーマンス仲介外交が見事に破たんしたということだ。
これもまた、こんなに早く破綻するとは思わなかった。
これで2月上旬に派遣されるはずの海上自衛隊艦船の「調査・研究」派遣は100%なくなった。それは当然だろう。戦争状態になった中東海域で、調査・研究・情報収集などというとぼけた事をやっている場合ではないからだ。
それにもかかわらず、自衛隊幹部は次のように語っているという(1月4日共同)
「現時点で派遣に大きな影響はない」と。こんなことを言っているからゴーンに逃げられるのだ。
私は繰り返し書いて来た。安倍首相は、内政問題はごまかせても、外交はごまかせないと。いよいよ安倍首相は外交で自滅する年になりそうだ。
何度でも書く。日本国民をごまかす事が出来ても、世界をごまかすことは出来ないのである(了)