2020年1月16日木曜日

“桜”疑惑 安倍首相は自ら無罪を立証したらどうだ(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが「“桜”証拠隠滅疑惑 安倍首相は自ら無罪を立証したらどうだ」とする記事を出しました。「無罪を立証」の部分は、森法相の「ゴーン被告は自ら無罪を証明すべきだ」という誤った発言をもじったものです。

モリカケ問題では、安倍首相が「もしも自分たち夫婦が森友学園問題に関与していれば議員を辞める」と高言したために、官僚たちは、首相夫妻の関与を示す公文書を全て隠蔽するか、改竄しました。それについて安倍首相は後日国会でナント「(財務省に)ウミを出し切らせる」と公言したのでした。自分が問題の根源なのに、なぜそんなこととが言えたのでしょうか。理解の埒外というしかありません。

 しかし昨年の臨時国会で明らかにされた「桜を見る会」問題は安倍首相個人にかかわるものなので、今度は官僚のせいにすることはできません。
 14日には全国の憲法学者など13人が、背任の疑いで安倍首相に対する告発状を東京地検に提出しましたが、それは疑いの余地がないからで、‟桜”問題ではそのほかに公職選挙法違反や政治資金規正法違反が指摘されています。
 暮れの臨時国会では首相はひたすら説明責任から逃げ回りついに逃げ切りましたが、20日に始まる通常国会は会期も長く予算委などでは当然説明を迫られます。そして退陣を迫られることになります。
⇒ 通常国会で退陣を迫られることになる安倍首相植草一秀の「知られざる真実」

 安倍政権になってからは、国のトップがやりたい放題で 憲法さえ無視していますが、役人はそのつど“総理の犯罪”を隠蔽するために子供だましの嘘をつき、公文書を隠蔽し改竄してきました。
 公文書管理法は、名称や保存期間、保存期間が過ぎた後の取り扱いなどを「管理簿」に記載し、その行政文書を廃棄する際には、内閣総理大臣の同意を得る必要あり、廃棄した場合「廃棄簿」に記載することが定められています。
 しかし安倍政権下ではそのどれもが行われないまま、13年から17年の「桜を見る会」招待者名簿が廃棄されていました。これは首相にとって不都合なことが書かれていたら、法令も無視し公文書を勝手に廃棄するということです。
 とても法治国家とは言えません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
“桜”証拠隠滅疑惑 安倍首相は自ら無罪を立証したらどうだ
日刊ゲンダイ 2020/01/14
 また、いつもの目くらましだ。中東を歴訪中の安倍首相が、例によってパフォーマンス外交に精を出している。
 米国とイランの衝突で中東情勢が不安定になり、一度は取りやめを発表したものの、戦争危機が遠のいたと見るや一転、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン歴訪の旅に出発。最初の訪問国サウジでは、ムハンマド皇太子らと会談し、自衛隊の中東派遣について「完全な理解と支持を得た」と成果をアピールしていた。
 イランと敵対し、米国主導の有志連合にも参加するサウジが自衛隊派遣を支持するのは当たり前で、むしろ日本とイランの友好関係には微妙な影を落としかねない。そういうリスクをどこまで考えているのか、安倍らしい場当たり外交ではあるが、ご機嫌なのは、大好きな外遊を満喫しているせいだけではないだろう。
 この週末に行われた世論調査で、下落していた支持率がなぜか上向き始めたのだ。共同通信の調査では、安倍内閣の支持率は49・3%で、昨年12月の前回調査から6・6ポイントも増えた。
「桜を見る会」の疑惑から逃げ回るだけで、年末年始はゴルフ三昧。なーんも仕事らしいことをしていないのに支持率回復だから、そりゃあ安倍も笑いたくなる。産経新聞とFNNの合同調査でも、支持率は前回調査から1・4ポイント増の44・6%だった。

「時間が経てば国民は忘れる」

「支持率上昇も不可解ですが、共同通信の調査で驚いたのは、海上自衛隊の中東派遣について『反対』が58・4%と過半に上ったものの、『賛成』という回答が34・4%もあったことです。湾岸戦争の時には自衛隊の派遣に反対する声が自民党内からも上がり、国会も世論も紛糾したことを考えると、世論の反応には隔世の感がある。
 安倍政権は国会審議も経ない閣議決定で自衛隊派遣を決め、すでに政府の命令によって、11日に第1陣のP3C哨戒機が中東に出発しています。安倍首相は、自衛隊を率いて中東の紛争地域に乗り込み、米国と連携する国から自衛隊派遣の支持を取り付けている。米軍の一員として中東で行動すると宣言して回っているようなもので、疑惑まみれの首相の一存で、戦後日本の平和主義が踏みにじられているのです」(政治評論家・本澤二郎氏)

 無意味な中東旅行も、テレビニュースは外交成果のごとく報じる。日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の逃亡劇や、10年ぶりに現職国会議員の逮捕者が出たIR疑惑も、国民の関心を「桜疑惑」からそらす効果があったのかもしれない。
 どんな悪事が発覚しても、それで支持率が下がろうとも、「時間が経てば国民は忘れる」とやり過ごしてきたのがこの政権だ。今回も、支持率の回復傾向を見て安堵し、年がかわれば「桜疑惑」もオシマイ、また逃げ切ったと舌を出しているのだろうが、そうは問屋が卸さない。
 年が明けてからも、桜疑獄では次々と新たな問題が発覚している。

名簿破棄は法令違反と認めても、なお居直る悪辣
 10日の会見で、菅官房長官は「桜を見る会」の招待者名簿の取り扱いが公文書管理法に違反していたと認めた。
 公文書管理法は、保存期間が1年以上の公文書について、名称や保存期間、保存期間が過ぎた後の取り扱いなどを「管理簿」に記載するよう定めている。記載された行政文書を廃棄する際には、内閣総理大臣の同意を得る必要もある。廃棄した場合、「廃棄簿」に記載することが政府のガイドラインで定められている。
 そのどれもが行われないまま、2013年から17年の招待者名簿が廃棄されたというのだ。こうなると、「ルールに基づき適切に保存・廃棄した」という政府の説明が、根底から覆ることになる。
「由々しき事態です。首相にとって不都合なことが書かれていたら、法令も無視し、国民共有の財産である公文書を勝手に廃棄するなんて、戦前の軍部と変わらない。証拠隠滅という言葉しか思い浮かびません。それでも居直って、誰も辞任しないのだから信じられない。モリカケ問題もそうですが、一連の不祥事の根底には、安倍官邸による権力の私物化がある。やりたい放題で憲法さえ無視する“総理の犯罪”を隠蔽するために、役人が子供だましの嘘をつくことが常態化しているのが現状です。
 役人が口裏合わせやゴマカシに加担するのは、内閣人事局で官僚人事を一元化し、官邸の提灯持ちを引き上げて、逆らう者は干すという強権でコントロールしてきた弊害に他ならない。官僚機構を巻き込んだ犯罪隠蔽工作をいつまで続けさせるのでしょう。いまの日本は北朝鮮を笑えない。民主主義国家でも法治国家でもない独裁国家になりつつある。安倍内閣に支持率を与えている有権者は、本当にそれでいいのでしょうか」(本澤二郎氏=前出)
 先進国を気取っていても、実態は封建社会のような日本のお寒い現状はカルロス・ゴーンの逃亡について、森雅子法相が「潔白というのなら司法の場で無罪を証明すべきだ」と発言したことでも国際社会に知れ渡ってしまった。

内閣は立法府に説明する義務がある
 刑事司法は、被告人は「推定無罪」という原則に成り立つ。有罪の立証責任は検察側にあり、被告人が無罪の証明をする必要はない。ゴーンのフランスの代理人弁護士から「間違えたのは、容易に理解できる。あなたの(国の)司法制度はこうした原則を無視しているためだ」と皮肉られる始末だ。

「森法相は弁護士資格を持っていて、ド素人が法務大臣に就いたわけでもなく、言い間違いでは済まされない問題発言です。森氏の発言は、敵を攻撃する時は威勢がいいが、身内に甘く、自分に火の粉が降りかかると相手のせいにする安倍政権の体質をよく表していると思う。ボスに倣うとそうなるのでしょうか。
 安倍首相は、疑惑を追及されると『それが事実か証明しろ』と野党に立証責任を転嫁することがありますが、それもおかしくて、内閣は本来、立法府に呼ばれれば、行政権の行使について説明する義務がある。それは憲法66条に定められています。桜を見る会の招待者名簿が法令に反して廃棄されていた件も、無理に無理を重ねて法令違反を認めざるを得なくなったのか、最初から意図的に名簿を保存しないようなオペレーションにしていたのか。
 いずれにしても、首相夫妻が関わると公文書が改ざんされたり廃棄されるというのは、あまりに不自然です。当然、野党は説明を求めるでしょうが、キレやすい首相が果たして長丁場の通常国会を乗り切れるのか。自民党議員の間からも『前門の桜、後門のIR』と国会運営を危惧する声が上がっています」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

 通常国会は来週20日に召集される予定だ。会期は150日間。説明する時間はたっぷりあるわけで、安倍は国会で自ら潔白を立証する必要がある
 これは、有権者に対する「説明責任」という倫理的責任とは別次元の話だ。行政府のトップとして、予算執行に関する疑惑を払拭する言葉を持たないのなら、退陣するほかない。引退して、海外旅行と美食、ゴルフ三昧の日々を送ったらどうだ。その方が、この国のためでもある。