日刊ゲンダイが「 ~ 囁かれ始めた史上最長政権の末路」とする記事を出しました。タイトルの前半は「佐藤栄作超えも黄信号~」となっているのですが、「佐藤栄作超え」というのは、東京五輪後の今年8月24日まで政権を維持すれば、連続在職記録でも佐藤栄作の2798日を抜いてトップに躍り出るという意味です。
そこまで続くというのは考えるだけでもうんざりしますが、「佐藤栄作超えも黄信号」ということで、それまでの退陣もあり得るというのであれば、日本のためにまだしも多少の希望は抱けます。どうなりますか。
以下に紹介します。
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佐藤栄作超えも黄信号 囁かれ始めた史上最長政権の末路
日刊ゲンダイ 2020/01/20
(21日付 阿修羅より転載)
20日召集された第201通常国会で、初日に安倍首相の施政方針演説など政府4演説を実施。22日からは衆参両院で各党の代表質問が予定されているが、これに先立ち、まず野党が求めていたのが「政治とカネ」の疑惑で昨年10月に閣僚を辞任して以来、公の場に姿を現していない菅原一秀前経産相の“本人による説明”だ。
「政治とカネ」では、河井克行前法相も辞任し、妻の案里参院議員とともに地検の捜査を受けている。昨夏の参院選で、案里の陣営が車上運動員らに違法な報酬を支払ったとされる公選法違反の疑惑である。
自民党の岸田政調会長が地元の後援会の新年互礼会で「こういうことがあると自民党や政治への信頼が損なわれる」と苦言を呈すなど、与党内からも先行きを不安視する声が上がっている。
ただでさえ、安倍政権は「桜を見る会」をめぐる数々の問題や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業に絡む汚職事件を抱えた状態で通常国会に臨むことになり、足元はグラグラ。自衛隊の中東派遣も、今後どうなるか分からない。経済対策を盛り込んだ2019年度補正予算案、20年度予算案を審議する長丁場の予算委を乗り切れるのか。
「過去にモリカケ問題をゴマカシや隠蔽で乗り切った“成功体験”に味をしめているかもしれませんが、桜を見る会の問題は安倍夫妻の疑惑であり、財務省や国交省、文科省に責任を押し付けることができません。予算委で答弁を求められる担当大臣は、総理大臣と官房長官なのです。IRにしても、安倍内閣が成長戦略の柱に据えて推進してきたわけで、官邸の話です。野党がちゃんと踏ん張って追及すれば、政権は窮地に追い込まれるでしょう。予算委で政府がデタラメ答弁を続ければ、国民の批判の声が高まり、支持率は落ち込んでいく。悪事がバレても嘘でゴマカし、ほとぼりが冷めるまで逃げ回るというやり方は、通用しなくなってきていると思います」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
4選なんてあり得ない
今国会の会期は6月17日までの150日間。直後に都知事選や東京五輪を控え、会期延長は難しい。綱渡りの日程で、その場しのぎの方便が墓穴を掘る可能性は十分ある。
すでに、桜を見る会の問題では、無理に無理を重ねたせいで、政府側の説明が失笑レベルになっている。反社会的勢力は「定義が困難」と閣議決定。“私人”である昭恵夫人の公用車の使用状況についても、「公用車の定義はさまざま」とか言い出した。こんな政府に任せていたら、そのうち「公的行事の定義は困難」「内閣総理大臣の定義はさまざま」とか言い出しかねない。
首相を守るために公文書を書き換え、法解釈もねじ曲げ、ひたすら米国に媚を売って強引に維持してきた長期政権は、昨年11月20日に通算在職日数で戦前の桂太郎を抜き、106年ぶりに歴代最長記録を塗り替えた。安倍の自民党総裁任期は21年9月までで、東京五輪後の今年8月24日まで政権を維持すれば、連続在職記録でも佐藤栄作の2798日を抜いて単独1位に躍り出る。
それにしても、これほど功績のない長期政権も珍しい。本人は改憲や五輪外交パフォーマンスなど、レガシーを諦めていないのだろうが、1強支配を揺るがす反旗のうねりはジワジワと、そして確実に広がっている。
改憲を成し遂げるための4選なんてあり得ず、現在の総裁任期をまっとうできるかも分からないのが実情だろう。今年8月の“佐藤超え”だって黄信号ではないか?
どんな終わり方をしても無傷で済むことはない
「本来なら、とっくに終わっている政権です。問題が多すぎて、次から次へと表出するものだから、野党の批判が追いつかず、前の疑惑がウヤムヤになるという疑惑の自転車操業で生き永らえてきた。国会に求められても文書を出さず、平気で嘘をつき、官僚にも嘘を言わせて疑惑にフタをするというやり方で、モラルを完全に崩壊させてしまったことは、実に罪深いと思います。首相個人の資質の問題もありますが、長期政権は必ず腐敗する。だからこそ、自民党総裁任期は2期6年に規定されているのです。それを特例で無視して3期目に突入した結果、法案審議の前に是正すべき問題点が山積みで、いまの政治は憲政史上まれに見る惨状になっている。国民生活より自分や周辺の利益を優先する首相の取り巻きが特権階級のようにふるまい、忖度がはびこる。国民にとって、政治は暮らしそのものなのに、権力ゲームのようになってしまっています。政府の横暴には、国民の代表である立法府の一員として、与党議員も怒りの声を上げる段階に来ています」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
長期政権の終わり方にはさまざまなパターンがあるが、哀れな末路をたどることも多い。「アリの一穴、天下の破れ」で、どんなに盤石に見えた政権でも、党内の異論や世論の風向き次第で、瞬く間に瓦解していくことは歴史が証明している。
吉田茂は造船疑獄などの不祥事が相次いで総辞職。安倍の大叔父にあたる佐藤栄作も、末期には求心力が低下し、72年2月の札幌冬季五輪、5月の沖縄の本土復帰を花道に7月に総辞職。福田赳夫を後継指名したが、総裁選で田中角栄が勝ち、無念のうちに退陣していった。
民主主義を破壊した大罪
「月刊日本」1月号で、自民党元幹事長の山崎拓氏がこう指摘している。
<安倍総理がどんな辞め方をしても、無傷で済むことはまずないと思います。これは非常に難しい問題で、私が総理の立場でもどうしていいか分からないほどです>
<自民党内にはまだ「安倍4選」が既定路線であるかのような錯覚があるため、「4選になったらどうしよう、いま逆らうと大変だ」という空気が残っている。しかし、すでに「安倍4選」の可能性はなくなりつつあり、潮目が変わろうとしている>
同誌では政治評論家の平野貞夫氏も、大正デモクラシーという国民運動によって打倒された桂内閣を引き合いに、こう話していた。
<安倍政権も桂内閣と同じように長州門閥であり、身内びいきの藩閥政治を行いながら憲法違反を繰り返し、議会制民主主義を破壊しています。特に吉田茂の思いを踏みにじった集団的自衛権の容認は、桂太郎の大逆事件に匹敵する大罪です。こういう議会制民主主義の手続きが通用しない政権は、国民運動で倒すしかありません>
野党が追い込むのか、自民党内からの反発が端緒かは分からないが、安倍政権が終わりに向かっていることは確かだ。最も確実なのは、官僚の造反かもしれない。安倍4選がないのなら、もはや忖度する必要はない。側近議員の閣僚辞任、旗振り役だったIR、懐刀の首相補佐官の不倫疑惑など、菅官房長官の周辺でスキャンダルが続出していることは偶然ではないだろう。人事権を盾に、官僚組織に睨みを利かせてきた菅支配の終焉を感じさせる。それは同時に安倍政権の落日でもある。
「モリカケでは、官僚組織の命である公文書の改ざんにまで手を染め、体を張って政権を守った官僚がのちに出世した。しかし、マジメで優秀なことが取りえの官僚の中には、忸怩たる思いを抱えている人もいる。国家のモラルハザードに危機感を感じている官僚が、官邸の不正を決定づける資料を出してくることも考えられるし、そうでなければ、この国は近代国家として終わっています」(角谷浩一氏=前出)
官僚は官邸の下僕ではなく、国民全体の奉仕者である。与党の国会議員も安倍の家来ではなく、国民の代表だ。主権者たる国民も、国の根幹が崩れ落ちるのを黙って見ていていいのか。愛国者こそが、一刻も早い退陣要求を突きつけるしかない。