安倍首相が候補者一人当たり1500万円とされている選挙資金の10倍の1億5000万円もの資金を河井案里氏に投じたのは、かつて安倍首相を「過去の人」などと批判した溝手顕正前参院議員を落選させるためであったのはいまやあまねく知られるところとなりました。
首相が公金を使って政敵? を排除しようとしたのはそれに限らず、18年の総裁選では石破茂衆院議員に勝つために、あるいは同じ山口県出身の林芳正参院議員系の下関市長を蹴落とすのに働いた人たちをもてなすために、「桜を見る会」を活用したことが明らかになりました。
安倍首相は選挙地盤(山口4区)が下関市などで重なる林芳正氏に相当の敵愾心(劣等感?)を持っているようで、17年の下関市長選では林系の市長を追い落とすために随分えげつない振る舞いをしました。それを見ると、自分を少しでも批判する人は決して許さないのに、敵と考える人を排除するためには何でもありの人間であることを改めて知ることができます。
彼にとっては、東大卒業後ハーバード大学院で学位を取得し、地元の後援者たちからはいずれ首相になるべき人と嘱望されている林氏がねたましいようです。
毎日新聞が1月23日と24日に【首相の地元を歩く】の前・後編を掲載しました。
原記事は有料記事のため冒頭のごく一部しか読めませんが、記事集約サイトの「阿修羅」に全文が転載されているので読めます。以下の通りです。
【首相の地元を歩く】「安倍か林か選べ」下関で苛烈な自民の政争 「桜」前夜祭の参加者倍増を招いた市長選/前編 ⇒ http://www.asyura2.com/20/senkyo269/msg/190.html
日刊ゲンダイが「桜と河井夫妻の共通項 首相の動機は政敵を潰す異常な執念」とする記事を出しました。
それはまさに「異常な執念」であって、臨床心理士の矢幡洋氏が語った「自己愛性パーソナリティー障害」の特性が改めて思い起こされます。曰く
「自己評価が非常に高く、自分をおとしめるような事実を受け入れようとしないのが特徴です。不都合な事実を突きつけられると、自分以外の外部のせいにして責任転嫁することが多い。自分のプライドを守ることが主目的で、言い合いに負けたくない心理が先に立つ。ですから、事実に基づく議論は成立しません。自己愛型の人は政治家として危うい。折れるべきところで折れないので、周りにイエスマンしか残らなくなります」・・・ です。
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桜と河井夫妻の共通項 首相の動機は政敵を潰す異常な執念
日刊ゲンダイ 2020/01/27
通常国会は衆院予算委員会が始まる27日から本格論戦がスタート。安倍首相と全閣僚が出席して、令和元年度補正予算案の質疑が行われるが、「桜を見る会」の疑惑追及は大きなテーマだ。年が替わっても桜疑惑はとどまるところを知らない。税金を使った公的行事を安倍が私物化していた“証拠”が次から次へと出てきている。
21日に内閣府が出してきた新資料によると、2019年の招待者数は1万5420人で、15年から約1700人も増えた。そのうち「各界功績者(総理大臣等)」に区分された招待者は8894人に上る。
また、桜を見る会の開門・受け付け開始は午前8時半だが、内閣府が23日に出した新資料では、19年は開門前に8043人が入場していたことが分かった。安倍の地元支援者は開門前に手荷物検査なしで会場に入り、安倍夫妻と写真撮影していたことなどが関係者の証言で判明している。前日の「前夜祭」の参加者も、この5年間で倍増した。
「各界における功績者を招いて慰労するという会の趣旨を逸脱し、自身の支援者を特別扱いしているのは明らかで、私物化のそしりは免れません。問題は、首相の個人的な支援者接待に税金が使われていることです。マトモな神経であれば、これ見よがしに権力を振りかざし、税金で票を買うような真似はしない。公私混同以前に、この首相には常識が通用しないのです」(政治評論家・野上忠興氏)
安倍は父・晋太郎から引き継いだ選挙区の山口4区で70%以上の得票率を誇り、総選挙では常に2位の比例復活も許さない圧勝である。それほど選挙に強い現職首相が、なぜ後援会を公金接待しなければならなかったのか。不気味なのは、その動機だ。
林潰し、石破潰しで増えた招待者
26日の毎日新聞が大きく紙面を割いて、安倍が桜を見る会に招待する地元支援者を増やしてきた裏事情を解説していた。地元・下関での林芳正元農相との対立が背景にあるという。安倍と林は父親の代から続くライバル関係にあるが、17年の下関市長選は「安倍・林の代理戦争」と呼ばれる熾烈なものだった。
この選挙で安倍派を支援した人々が、18年の桜を見る会に呼ばれた。「各界功績者(総理大臣等)」が前年より約2000人も増えたのは、市長選の功労者を大量に招いたからだというのだ。「踏み絵を踏まされた」という地元市議や、「下関で安倍派に逆らうと生きていけない。ファシズムですよ」という自民党関係者の声も伝えている。
「親の代からの対立が根深いのは事実ですが、林氏は頭脳明晰と評判で、地元で“林待望論”が根強いことも面白くないのでしょう。安倍首相は、自分の存在を脅かそうとする政敵は徹底的に潰しにかかる。現職首相なのだから、正々堂々と横綱相撲を取ればいいのに、それができないのです。その異様なまでの政敵潰しの執念は、幼児性の表れだという声もある。気に食わないヤツを潰すために手段を選ばないのは独裁者の発想であり、民主主義国家の感覚では、ちょっと理解しがたいものがあります」(野上忠興氏=前出)
「各界功績者(総理大臣等)」の招待人数は、18年が9494人と突出して多い。前年から約2000人も増えている。この年の9月、石破茂元幹事長と一騎打ちになった総裁選があったことも、招待者が増えた原因とされる。総裁選に向け、地方議員や党員の“支持固め”に桜を見る会を使った疑惑だ。
コケにされても黙っているからますますツケ上がる
18年5月4日付の読売新聞は、桜を見る会について〈今年は、地方議員の姿が目立った〉と書き、「県連幹事長ら幹部に加えて、今年は一般の県議まで首相から招待状が届いた」「これは党総裁選を意識した地方の『党員票』対策の一環なんだな」という自民党関係者の声を報じていた。
同じ党の仲間であっても、自分に歯向かう者は全力で潰す。しかも、それを公金を使ってやるエゲツなさ。つくづく品性下劣で、こういう手合いに権力を持たせてはいけないのだ。
夫の河井克行前法相とともに、ウグイス嬢に法定上限の2倍の報酬を払った公職選挙法違反容疑で家宅捜索などを受けた自民党の河井案里参院議員に1億5000万円もの選挙資金を投入した異常な肩入れも、構図は同じだ。
昨年の参院選で、党本部が候補者に提供した資金は1500万円が基本だった。案里と同じ広島選挙区で公認された溝手顕正元防災担当相も1500万円だったという。
溝手は安倍との確執を抱えている。かつて溝手に「過去の人」呼ばわりされ、恨み骨髄の安倍は、相場の10倍というケタ違いの資金で案里を優遇。結果、ベテラン現職だった溝手は落選し、バッジを手にした案里は、夫の克行と2人で意気揚々と官邸を訪れていた。まるで溝手を落とした論功行賞のように、その後の内閣改造で克行は法相に任命されたのだ。
案里は1億5000万円の入金に「違法性はない」と居直り、「公認をもらったのが遅く、わずか2カ月半の間で活動していかなくてはいけないので、短い期間に資金が集中した」「陣営がどう運営されていたか私自身もなかなか分からない」とトボケていたが、普通は2カ月半の選挙戦で1億5000万円も使い切れるものではない。
組織が成り立つ前提は公平公正
昨年の参院選で、広島選挙区の法定選挙費用は約4700万円だった。その3倍ものカネを党本部は渡したのだ。不正選挙を容認するようなものではないのか。政党交付金の原資は税金だ。それが特定の候補者に集中投入され、違法選挙に使われたとしたら、納税者としてやりきれない気分になる。なぜ、新人の案里だけ特別扱いだったのか。安倍は自民党総裁として説明する責任があるだろう。党内からも疑問の声が噴出している。
自民党の中谷元元防衛相も、26日のフジテレビの番組でこう話していた。
「1億5000万円は破格を通り越している。案里さん自身も『私も知りません』ということは良くない」「党内の規律としても公平公正というのが必要で、組織が動かなくなってしまう」
安倍に目の敵にされた林と溝手は岸田派の所属議員だ。ここまでコケにされても、岸田派は安倍政権を支え続けるのか。派閥会長の岸田文雄政調会長は、お膝元の広島県に手を突っ込まれ、派閥の重鎮を落選させられて、よく黙っていられるものだ。この期に及んで、禅譲なんて生ぬるい夢を見て、屈辱に甘んじているとしたら情けない。そういう自民党議員の物言わぬ態度が安倍をツケ上がらせ、カネと権力にモノをいわせて敵を潰す薄汚い手法を助長してきたのではないか。
「これも1強長期政権の弊害と言えるでしょう。野党や北朝鮮、韓国などを敵視するのはまだ分かりますが、党内にも牙をむく。それも公金を使って相手を蹴落とすなんて、常軌を逸しています。自民党議員も、おかしいと思っているなら、声を上げるべきです。党内でもこの調子だから、安倍首相が国民を選別し、一部のオトモダチだけ優遇するのも当然という気がしてくる。残り任期が少なくなる中、自民党内からの異議申し立てが大きくなれば、官僚組織も忖度をやめて、重要資料を出してくる可能性があります」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
公平公正は行政の基本だが、安倍政権にそれを求めてもムダだとハッキリしたのが「桜」と「河井夫妻」の問題だ。これでもまだ安倍を支持する有権者がいることが信じられない。札束で仲間を潰す異常性。そんな首相で日本国民は恥ずかしくないのか。