日本は既に米軍の駐留に関する経費として年間6000億円(カウントする範囲によっては7000億円近く)を負担していますが、トランプはその一部である特別協定対象の1974億円を取り上げて、それを約4倍の8700億円に上げるように要求してくると見られています(実際は既に要求されているようなのですが政府はまだ公表していません)。
ジャーナリストの高野 孟氏が「そもそも在日米軍は日本防衛のために駐留しているのではなく、太平洋からインド洋、中東地域まで自由に展開するための拠点として日本を利用しているのだから、その経費を日本国民の血税で賄う筋合いはない」と述べている通り、米軍が撤退しても構わないと言う姿勢で強硬に断るべきです。
しかし藤原帰一・東大教授が「自分の言うことが絶対と思っているトランプと親密な関係を結ぶということは、反対せずに平伏するだけ」と述べる関係になっている安倍首相にいまさら何かを期待することは所詮無理です。
安倍政権下で日本はこんな惨めな状況に陥っています。
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永田町の裏を読む
トランプの寵愛を得るしか頭にないポチでは交渉にならない
高野 孟 日刊ゲンダイ 2020/01/23
安倍晋三首相が1月19日の日米安保条約調印60年の記念式典で、同条約を「不滅の柱」「世界の平和を守り、繁栄を保障する不動の柱」「60年、100年先まで世界を支える柱」と称えたことに、野党のベテラン議員はあきれ顔である。
「この構造変動の時代に、どんな同盟にせよ外交関係にせよ、不滅・不動の永遠性を持つなどということがあるはずがない。ましてや米国は今、超大国の座から滑り落ちて、自国第一に立てこもる自閉的な傾向を強めていて、60年、100年先に日米同盟が続いていると考える方がおかしい。もうご主人様の寵愛を得ることしか頭にないポチになりきっているんでしょう」と、手厳しい。
しかも今年は、トランプ米大統領がこだわる在日米軍の駐留経費負担の大幅増額をめぐる交渉に直面する。同負担にかかわる特別協定が2021年3月末で期限切れになるためで、それに向けて米側は現在の1974億円(19年度予算)を約4倍の8700億円に増やすよう求めてきている。そもそも在日米軍は日本防衛のために駐留してくれているのではなく、太平洋からインド洋、中東地域まで自由に展開するための拠点として日本を利用しているのだから、その経費を日本国民の血税で賄う筋合いはない。
しかも、特別協定による1974億円は実は日本が負担しているごく一部で、そのほかに基地周辺対策などに1914億円、沖縄の辺野古関連で256億円、さらに在沖海兵隊のグアム移転など米軍再編関連で1679億円があるので、総計では5823億円にも達する。
だからこの交渉に当たっては、「ふざけるな。文句があるなら日本から出て行け」と相手を脅し上げるくらいの強い姿勢で臨まなければならない。それが、どうだ、このポチぶりは。これではますますトランプの無知に基づく理不尽な要求をはねつけることなどできなくなる。
藤原帰一東大教授が言う通り、「トランプ氏のように上下関係しかない世界では、ボスの言うことは絶対だ。トランプ氏と親密な関係を結ぶということは、反対せずに平伏するだけ」(20日付朝日新聞)だというのに、安倍は尻尾を振り振りその屈辱的な関係を受け入れようとしているのである。この日米交渉の行方を厳しく監視していく必要がある。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。