2020年1月29日水曜日

29- 日米地位協定 米軍の特権を見直すべきだ

 トランプに追随するだけの安倍政権は一向に日米地位協定の改定に取り組もうとしません。
 今から約70年も前に結ばれた旧安保条約下で、「米軍の占領下にあった状況を成文化した」といわれる日米地位協定がそのまま現在まで持続されているというのに、それに全く手を付けようとしないのは余りにも不自然です。その不当性は多言を要するまでのありません。

 京都新聞の社説「日米地位協定 米軍の特権見直すべきだ
 徳島新聞の社説日米安保60年 行き過ぎた追従危うい
を紹介します。
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社説:日米地位協定 米軍の特権見直すべきだ
京都新聞 2020年1月27日
 なんともいえない違和感が募る。首都・東京のど真ん中に米軍基地があり、米軍機が自由自在に飛び交う光景に、だ。
 東京都港区南青山。六本木ヒルズなど、多くの高層ビルに囲まれた青山霊園の前に2時間ほど立っていると、ブルブルという音とともに、軍用ヘリコプターが近づいてきた。
 灰色の機体には「U・S・AIRFORCE」とある。爆音を響かせながら霊園に隣接するヘリポートに着陸していった。
 「こんな騒ぎが毎日ある。低空飛行もするし、早朝も、夜でもお構いなしだ」。近くに住むという男性(71)は嘆く。

 着陸したのは「赤坂プレスセンター」。米軍の事実上の機関紙「星条旗新聞」の極東支社があるためにそう呼ばれるが、米軍基地である。
 旧陸軍駐屯地の約2万7000平方メートルの敷地には、将校の宿舎などもある。フェンス沿いに歩くと、日本人らしい警備員が銃を携えている。
 近くには米国大使館や別の米軍関係施設がある。ヘリは横田(東京都)や厚木(神奈川県)など、首都圏の米軍基地から米大使館などに向かう米政府要人や軍人らを運ぶ。
 トランプ米大統領も2017年の初来日でこのルートを使い横田基地から都心に入った。

 都心になぜ、米軍基地があり、昼夜問わず低空で騒音を響かせることができるのか。警備員が銃を携帯できるのはなぜか。
 日米安全保障条約の運用を定めた日米地位協定がその根拠になっている。
 日米安保条約により、米軍は日本国内に自由に基地を置くことができる。地位協定は米軍に日本の国内法が適用されず、日本の行政権が基地内部や軍人に及ばないことを規定する。米軍を特別扱いする取り決めだ。

 そのための特例法もある。人口密集地での低空飛行を禁じた航空法を米軍には適用しない航空法特例法はその一つだ。米軍機は日本の法律に縛られず、思うように飛ぶことがほぼ可能になっている。
 昨年12月に高島市の陸自演習場であった日米共同訓練では、地元に輸送機オスプレイの飛行ルートが伝えられなかった。
 米軍基地がある沖縄県などでは米軍機による騒音被害が日常的に起きている。だが日本政府は米軍の責任を問えない。極めて不平等ではないか

 ところが日本政府に問題を改善する気はまったく見えない。
 東京都港区は毎年、国や東京都、米政府に基地撤去を求めている。しかし安倍晋三政権は「現時点では返還は困難」などの説明をくり返す。日米安保体制が重要としても腰が引け過ぎではないか
 沖縄県の独自調査では、ドイツやイタリアの駐留米軍には国内法が原則適用されている。
 60年前の地位協定締結交渉で、外務省が米軍の特権を見直すよう米側に求めていたことが、公開された外交文書で明らかになっている。
 当時の政府は協定の不平等な実態を直視し、行動していた。安倍政権も見習うべきだろう。


社説日米安保60年 行き過ぎた追従危うい
徳島新聞 2020年 1月28日
 日本と米国が、現在の安全保障条約に署名してから60年の節目を迎えた。
 安保体制の下、日本は「軽武装・経済重視」の路線を推し進め、高度経済成長を成し遂げた。ただ、行き過ぎた対米追従が目に付くようにもなっている日米関係の在り方を見直す機会にしたい。

 日米安保の旧条約は1951年に締結された。日本は米国の同盟国になり、米軍の駐留を認めた。60年に改定された現条約は双務性を目指し、米国に日本防衛を義務付け、日本に基地提供を課した。
 日本が再び戦禍を被らなかったのは、日米同盟が大きな役割を果たしたと言える。
 安保体制が変容していくのは冷戦が終わってからだ。
 91年の湾岸戦争で米国は日本に人的貢献を求めたが、当時の海部俊樹政権は平和憲法を盾に、130億ドルの資金拠出で応えた。だが結局、初の自衛隊の海外派遣に踏み切り、戦後にペルシャ湾で機雷掃海に当たらせた。
 それ以降、インド洋での給油活動、イラク南部サマワ駐屯へと、米国の要請によって海外派遣が拡大していく。
 憲法よりも日米同盟が優位にあると言われるのも無理はない。

 その原点は、安保条約改定1年前の砂川事件の裁判にある。1審で「駐留米軍は憲法違反」と断じたものの、最高裁はこれを破棄。安保条約など高度に政治的な問題は裁判所の違憲立法審査権の範囲外とする「統治行為論」を採用した。
 この砂川判決に関しては、米国の介入をうかがわせる資料が約10年前に見つかり、正当性を疑問視する声がある。
 ただ、判決の後、日米安保を巡る住民の訴えは、統治行為論を基に退けられてきた。騒音公害など米軍基地問題に苦しむ人たちの救済が進まない要因とされる。
 また、「必要な自衛のための措置を取り得る」との判決での指摘は、違憲性の高い集団的自衛権行使を現政権が解禁する際の論拠とされた。

 日本には憲法と安保法の二つの法体系があり、後者が前者を凌駕する構造があると唱えた、憲法学者の故長谷川正安氏の説を裏付けている。
 対米追従の姿勢は、駐留米軍の特権を認めた日米地位協定が一度も見直されていないことにも表れている。
 それはますます顕著になっている。現政権は兵器を大量購入し、自衛隊の中東海域への派遣も決めた。地元の意向を無視して普天間飛行場の辺野古移設を進めてもいる。
 さらにトランプ米大統領は、思いやり予算(本年度1974億円)の5倍増を求めているという。これが応分の負担と言えるのか。

 安倍晋三首相は「安保条約の双務性は確保していると、トランプ氏に最初に会った時に伝えている」と述べた。それならば、主張すべきは主張しなければならない。自国第一主義の強硬外交を続ける米国の言いなりでは危うい