2020年1月17日金曜日

安倍首相と河野防衛相 共通する「恐るべき軽さと能天気」

 日刊ゲンダイが、「安倍首相と河野防衛相 共通する『恐るべき軽さと能天気』」という記事を出しました。そこには「イランを巡る情勢が一触即発の危機にあるなか、中東海域に自衛隊を派遣しておきながら、自分たちは・・・」との含みがあるのですが、それ以前の問題としてこの二人には「軽さ」がいかにもピッタリと当てはまります。

 安倍首相の軽さについては多言を要しないので、今回の中東訪問についての元外交官の天木直人氏の批判だけを紹介します。
 天木氏は、米国とイランの危機の中で仲介外交をするという緊迫した中で、昭恵夫人を同伴するのは無神経で、女性の活動の制約が最も厳しいサウジアラビア訪問には全くそぐわないとしています。
 そして今回の訪問先のサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、イランが、米国、イスラエルと並ぶ4大敵国としている国なのに、この時期にわざわざそこを選んで友好を深めに訪問するのはイランへの外交的配慮に欠けていると述べました。
 さらに、中東出発時に重篤を伝えられていたオマーンカブース国王の死去を受けて、現地では13日まで弔問式が行われ、湾岸諸国や欧州の王族たちも次々と弔問に訪れたのに、安倍首相は1日遅れの14日にオマーンに入り、各国代表とのいわゆる弔問外交が出来なかったことも外交音痴の顕れとして、何故日程を早めて駆け付けなかったのかと批判しています。

 一方河野太郎氏は、外相時代に外務省専用のジェット機を持ちたいと発言しました。英語に堪能だったせいか頻繁に海外に出かけていました。それが予算化される直前に防衛相に移りましたが、その後も頻繁に海外に出かけ、うるさ型の人からは何でそんなに海外に行きたがるのかと批判されています。
 河野氏は、在野時代は『原発ゼロの会』の代表として執行部に楯突いたようですが、15年10月、第3次安倍改造内閣で行革担当相に抜擢されるとその活動から足を洗い、長いものには巻かれろという生き方に転じました。まことに軽い身のこなしです。
 彼も目立ちたがりのようで結構TVに登場しますが、その割には父親の洋平氏とは違って政治家としての信念を何も感じさせません。外相時代も、いわば安倍首相の言い分をオウム返しにするだけでした。
 日刊ゲンダイのいう「恐るべき軽さ」が似合います。
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安倍首相と河野防衛相 共通する「恐るべき軽さと能天気」
日刊ゲンダイ 2020/01/15
「中東に哨戒機を送るな」「イラン包囲網に参加するな」の抗議の声が防衛省前に響く中、11日、海上自衛隊のP3C哨戒機2機が沖縄県の那覇航空基地から中東に向け飛び立った。これまでの海賊対処に加え、石油資源を運ぶ船舶が往来する海域での「情報収集」という新たな任務が加わる。派遣される隊員約60人は、河野太郎防衛相の訓示を聞き、出発行事の後、家族との別れを惜しんだ。涙を流す家族の姿もあった。

 自衛隊派遣は昨年12月27日という仕事納めの日に閣議決定だけで決まった。ただでさえ、どさくさ紛れだったが、年明けに米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害。イランがミサイル攻撃で報復し、明らかにフェーズ様相が変わった。防衛省幹部も「昨年末の段階から前提条件は間違いなく変わっている」と言うほどの緊迫状態なのに、「調査・研究」という曖昧な根拠法のまま、河野は海自に派遣命令を出したのである。
 隊員や家族らの心中は察するにあまりあるが、翌12日の河野の行動にはぶったまげた。千葉県にある陸上自衛隊の習志野演習場で開かれた「降下訓練始め」を視察、自らもロープを付け、パラシュート降下訓練を体験したのである。
「河野太郎、頑張ります」と叫んで高さ11メートルの塔から飛び降り、体験後、「隊員の先頭に立つと日ごろ言っているので、ちょっと気合を入れてやりました」と満足げだった。
 いい気なものである。バンジージャンプでもやっているつもりなのか。「隊員の先頭に立つ」とはこういうことなのか。訓練は実戦のためのものである。だが、防衛相が最前線に赴き、戦うことは決してない。

 元陸自レンジャー隊員の井筒高雄氏はこう言う。
「河野防衛相のやっていることはパフォーマンス以外の何ものでもありません。政治の役割は、外交手段によって、いかに自衛隊を戦争させずに済むかということです。隊員のことを本気で考えているのなら、習志野に行くより、米国のペンタゴンにでも乗り込んでいって、『早まった行動をするな』と自制を求めるくらいのことをすべきでしょう。『調査・研究』という乱暴な派遣をしながら、あのパフォーマンスでは、現場は『なめてるのか』としか思えないでしょう」

中東を訪問するならイランへ行け
 クラクラするようなおバカぶりだが、それはこのタイミングで中東を歴訪している安倍首相も同じだ。サウジアラビアの世界遺産「マダイン・サーレハ」をサングラス姿で視察する安倍の映像を見て、のけぞった人も少なくないのではないか。脱石油依存で観光業に力を入れるサウジ側の要望があったとはいえ、自衛隊を“戦地”に送り込んだ緊張感のかけらもない。「やはり物見遊山か」のそしりは免れない

 防衛省出身で内閣官房副長官補(安全保障担当)を務めた柳澤協二氏はこう話す。
安倍首相が訪問したサウジとUAEは、米国主導の有志連合に参加する親米国です。今、安倍首相が訪問するのなら、イランに行くべきではないですか。イランとじっくり話し、米国とも話すのが本来の仲介外交です。そうした本筋の仲介外交が行われているうえで、全体の枠組みの中での自衛隊派遣ならばまだ理解はできる。しかし、今回はそうなっていないし、むしろ仲介外交を考えれば、自衛隊の中東派遣は逆行するものです。結局、中東の状況がさらに悪化したら、より派遣しにくくなるので、今出すしかない、ということなのでしょう。しかし、だからといって状況が悪化したら撤退させられるのでしょうか」
 自衛隊の最高指揮官である総理大臣と、その下で自衛隊全体を統監する防衛大臣の、恐るべき軽さと能天気ぶり。中東派遣の自衛隊員にはご愁傷さまと言うしかない。

派遣目的が不明なうえ、国会論議もなく見切り発車
「中東地域の緊張緩和で協力を確認」「自衛隊派遣は日本関係船舶の安全確保が目的だと説明し、理解を得た」――。安倍の中東歴訪では、こんな表面的な話ばかりが報じられている。だが、そもそも米国・イランが事実上の開戦下で、いったい何のために自衛隊を出すのか。

「今回の自衛隊派遣の最大の問題は、派遣目的がはっきりしないということです。過去のインド洋への派遣では、米軍がアフガニスタンに上陸し、戦闘状態であることが明確な中で、海上において給油を行いました。イラクへの派遣もサダム・フセイン政権が倒れた後の復興を担うものだった。これまでは、大枠の状況が固定した中での目的が明確な任務でした。ところが、今回はこれから状況が悪くなるかもしれないという中で、『調査・研究』という『任務』といえないような形での派遣。今までとは全く違う。米国とイランはとりあえず手打ちとなってはいますが、またいつ再燃するか分かりません」(柳澤協二氏=前出)

派遣実績を作りたいだけの悪辣
 実際、中東地域での一触即発の状況は、トランプ米大統領が「自制」を見せた8日の記者会見以降も続いている。
 ウクライナ航空機をイラン軍が誤って撃ち落としたことで、イラン国内では反政府デモが拡大し、政権が不安定化。イラクやレバノンなどには親イランの武装組織がいて血気盛んだ。レバノンのヒズボラの指導者は12日、「対抗勢力が動きだす時が来た」と演説し、各地の親イラン勢力に対米闘争を促した。火薬庫状態の中東では、偶発的衝突がいつまた起きてもおかしくないのである。
 そんな非常事態下で安倍が自衛隊派遣を強行したのは、「有志連合」への参加を米国に再三せっつかれたものの、イランへの配慮から独自派遣を決めた以上、断行せざるを得ないという、米国向けの自己保身とエエカッコシイだけだろう。

「問題は、不測の事態となった際、どこまで海自に仕事をさせるのか、ということです。今は海上警備行動という“警察権”による正当防衛にとどまる。日本の船なら守ることができるとはいっても、日本企業がチャーターしたパナマ船籍で外国人船長と邦人がいた場合、全員を助けることはできません貨客船に日本人が何人いるのかなど、現実の場面では海自が対応できない可能性も高いと思います。要は、国会での議論もないまま、すべてがなおざり。見切り発車で派遣してみて、何かあったらその時に対処しようというのが安倍政権のスタンスです。昭和29年にできた『防衛庁設置法』時代からの『調査・研究』を拡大解釈して、とにかく派遣実績を作ることに重きが置かれている。幹部を除いて現場は、『やってられない』というのが本音だと思います」(井筒高雄氏=前出)

 米国のソレイマニ殺害後は、いったん中止も検討され、覚悟のなさを見せた安倍の中東訪問だったが、本人はあくまで実現にこだわった、という報道がある。理由は、桜を見る会やカジノ汚職など政権に絡む不祥事が続く中で、「仲介外交」によって存在感を示したい意向があったからだという。
 緊迫化する中東情勢すら政権浮揚に利用するとは、悪魔のような首相である。だとすれば、自衛隊員の命が人気取りの手段にされてもおかしくない。